夕焼けの向こうへ
「……彼方!!……彼方!!」
朝方になっても、彼方の姿は見えない。
あれから何時間走り続けただろう。もう疲れてしまった。
「おっ、大地じゃねぇか。こんな朝早くにどうしたんだ。」
ジョギング中の友介に会った。
「……ぁあ、ちょっとな、」
「遙から聞いたぞ。様子がおかしかったって。何があったんだ?」
「いや、お前に話しても無駄だから。」
「はぁ?俺と大地の仲だろ?話せよ。」
「お前だって、彼方のこと忘れてるんだろ?」
「彼方?確かに知らないな。すまん。」
「だよな。いいんだ。これは俺が1人で解決するから。」
「俺らも手伝うぞ?できることがあれば言ってくれよ。」
「いや、大丈夫。ありがとな。じゃあ俺そろそろ探しに戻るから。」
「お、おう。じゃあな。」
俺は一日中、彼方と出かけた場所を巡った。
そこに行っても、彼方はどこにもいなかった。
「……彼方。最後に言いたいことがあったのに。」
大学の屋上。ここから彼方との思い出が始まったんだっけ。
「大地くん?」
「彼方っ!!」
「わわっ、急に抱きついて何?!」
「彼方。いきなりいなくなるなんて、聞いてないぞ。」
「あはは。ごめんね。」
彼方は背中を向ける。
「ねぇ、大地くん。」
「なんだ?なんでも言っていいぞ。」
「あのね、私、大地くんの彼女だったの。でも、長くは生きられなかった。だから時を戻してやりたかったことをしようって思ったの。だけど、戻ったのは子供の姿で。そりゃ分からないよね。」
「そうだったのか。実は俺も彼方のことがよくわからないけど、なぜか忘れられなくて、毎日頭でずっと彼方のことを考えて、お前のことなんて、鬱陶しくて嫌いなのに、なぜだか忘れられなくて。」
「あはは。私と一緒だね。じゃあ両思いだ。本望だなぁ。」
「彼方。」
俺は、彼方を強く抱きしめた。
すると、彼方は大粒の涙を流した。
「もう、大地くんってば、…やめてよ。」
「俺はもう離さない。彼方のことを忘れもしないし、ずっと一緒にいる。」
「大地くん。もういいの。もう十分。今までありがとう。楽しかったよ。」
彼方はそう言うと、笑顔で消えてしまった。
「そ、そんな……。彼方っ!!」
次の瞬間にはもう彼方の記憶は無くなっていた。
残っていたのは綺麗な夕焼けだけだった。
夕焼け空の彼方 @aoikun45439643
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