存在証明

 27日。

 しっかり戻ってるな。

 この日を繰り返すのはもう何回目だろうか。

 数えるのをいつからかやめてしまった。

 今日も彼方を探すとこからだな。

「彼方。」

「あっ…。だ、大地くん。」

「今日俺の家に泊まりに来ないか?」

「えっ?今日はちょっと用事があって無理かも。ごめんね。」

「そうか。その用事が終わってからでもいいから、家に来ないか?」

「もー。大地くん?しつこい男は嫌われるよー。」

「なっ、どこでそんな言葉覚えてくるんだ。全く。俺はだな、お前に助けろって言われたから泊めようとしているわけでな?」

「とりあえず、今日は無理なの。乙女の用事なの。じゃあね。」

「ちょ、おい!」

 ったく、自由だな。

 まぁ、1日くらい見張っていなくたって大丈夫か。


「おー。大地ー。あれ、彼方と一緒じゃないのか?今日はお前の当番だろ?」

「友介か。いや、なんか乙女の用事とかで断られちゃってさ。」

「乙女の用事ってなんだよそれ。大地お前、彼方ちゃんに嫌われたんじゃないか?」

「そんなことはないはずだ。」

「まぁ、今まで何にも起こらなかったんだし、今回も何にも起こらないだろうな。」

「そうだよな。1日くらい見てなくたって大丈夫だよな。」


 何度繰り返しただろうか。それすらも忘れてしまったのが間違いだった。

 当たり前のように来ていたはずの27日。

 それがいつの間にか終わっていたことに気づいたのは、日付が30日に回った時だった。


「…30日……?!!」

 嘘だろ。いつの間に27日が終わっていたんだ?

 そういえば、彼方の存在さえも忘れていた気がする。

 あんなに大切に思っていたのに、忘れるなんて俺は、馬鹿野郎だ。

 とりあえず、誰かに電話して確認してみよう。

「なぁ、遙。彼方ってやつ知ってるよな。いつから姿見てない?」

『あっ、大地さん。こんな夜中にどうされたんですか?』

「彼方のこといつから姿見てない?」

『彼方さん?どなたんことですか?』

「おい、この間話しただろ。みんなで泊め合おうって。」

『そんなこと話しましたっけ?記憶にないです。』

「…嘘だろ。なんでもない。夜遅くにすまなかった。」


 そんな。彼方。いつから姿が見えないんだ。

 いつから27日は終わっていた?

 空白の3日間俺らは何をしていたんだ。

 いつも通りに過ごしてたはずなのに、彼方の存在だけが消えていた。

 彼方……。

 くっそ!!


 俺は家を飛び出した。

 行くあてもないのに。彼方のいる場所の手がかりなんてないのに。


 あぁ、彼方がいない世界の夜空はこんなにも冷たいものだったのか。

 昨日と同じはずの夜空が全く違く見える。

 早く彼方を見つけなければ、

 …………夏が終わる。

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