とあるギルド長の試験
めいき~
恥力試験(ちりょくしけん)
「上等だ!」そう叫び声をあげる、強面のギルド長。
ちなみに、仁王立ちでギルド長の前に立っているのは影長(かげおさ)と呼ばれる姫の御付きの密偵。
冒険者をまとめるギルド長に対し、なんちゃって城より知力等の試験をせよと影長に命じられ。腕っぷし共々、王都ギルドマスターである葉藤(はどう)がその試験に挑んだ訳だがこの影長という男。姫様の信頼厚い側近にして、密偵に割には戦闘力もアホみたいに高い。基本的に「性癖を除けば」優秀極まるイケメンのハイスペックを体現するような存在。
自分にだってギルドを引っ張って来た矜持はあるが、それでも上記の態度が朝で今現在は瞬殺されて地面に転がっている有様。
(つぇぇぇぇぇぇ)
「どうした、ギルド長」そういってずっと仁王立ちのまま見下ろしていた。葉藤は仁王立ちの影長を土まみれになって見上げる。レベルは四百を超えており、元Sランク冒険者の葉藤は控えめに言っても全冒険者の憧れ。それが、一分も立たず地面に転がされているのだ。
「俺はオッサンに見られて喜ぶ趣味はない」僅かに指先や足に黒雷が走ったのが見えただけだ。手にはアイスの棒が一本だけ。曰く、貴様相手ならこれで十分だと。
(こいつ、アイスの棒で俺の魔法を構成ごとぶっ壊して。体術で俺の剣とアバラを右半分三秒で砕きやがった)
レベル四百の自分が、姿も影も全く見えなかった。「何故、この様な弱い男を姫様は気にかけるのか……」仁王立ちしながら、指をとんとんやりながら考え込むがどうみても隙だらけ。
「隙アリ!!」「そんなものは無い」折れた剣をなげると、アイスの棒を持っていない方の手で裏拳ではたき落として。また姿を消した。「何処へ」きょろきょろと左右や下を見るも影長は何処にも居ない。
「おやっさん、後ろだ!!」バッと音がするぐらいの勢いで振り返ると黒雷だけを残して残像だけがあり、腕を振りぬいた葉藤が眼を見開く。残像が、蜃気楼のように溶け。「本当に、この程度がSランクだとすれば。冒険者等というものはクソの役にも立たんな」と空気中から声が聞こえ内部から嫌な肉の匂いをさせながら葉藤がその場で蹲る。
「俺がよぇぇんじゃねぇ、おめぇが強すぎるんだ」それだけ言うと、葉藤が倒れる。影長は無言で肩を竦めると、「戦闘、四十三点。姫様にはそう報告しろ」
後ろについてきた影集は、「四十点以上取れたって事は、少なくともこの国で影長様を除けば誇れる位には強いと認めたって事だな」とひそひそ報告していた。
そして、翌日堂々とギルド長に「今日は筆記だ、姫様が作った問題を解いてもらう」といい。中身は俺も知らないが、必ず答案を持って帰るように言われていると壁に寄りかかった。
無言でギルド長は机に座ると、さっそく問題を広げ眼を限界まで広げて一言「ちょおまっこれは……」
問一、ギルド長葉藤の引き出しには裏帳簿が入っている。〇か×か。
「バツに決まってんだろ……」
問二、ギルド長葉藤の引き出しには四日前に遊んだ遊郭のお姉さんのぶらじゃ~が入っている。〇か×か……。(オレのぷらいばしぃぃぃぃぃぃぃ!!)「答えは……〇だ、黒い奴が入ってる」
問三、ギルド長葉藤が指名した遊郭のお姉さんは貧乳である。〇か×か。
「答えは×だ! 俺は巨乳派、貧乳を指名するなどありえるか!」
等と解答を書き込んでいく、ちなみにその声は影長の黒雷の力によって一階の冒険者と受付嬢全員に聞かれている。二階で囁き声程度で発したその声は、選挙カー程度の大きさに拡張されて聞こえているのだ。その事実を葉藤はしらない。
「かき終わったぞ」精神的にすり減ったゲッソリとした表情でそれを影長に渡す。「ご苦労、姫様に渡しておく」それを受け取ると、「試験は終わった」と言って姿を消す。ほっと胸を撫でおろす葉藤に、姿を消したまま声だけで。
「お前の呟きは全て心の中の声も含め、一階の冒険者や受付嬢に伝えてある」その一言を残して、葉藤の返事をまたず消えた。そして、葉藤がやっと終わっていつもの様に降りていくと。冒険者や受付嬢がまるでゴミを見る様な眼で、海を割った様にさけていく。
「何処が試験だバカ野郎! ただの公開処刑じゃねぇか!!」
ちなみに、冒険者ギルド長だけではなく。様々な貴族やギルド長に実施され、違う意味でお偉方を絶望に叩き落としたという。
<おしまい>
とあるギルド長の試験 めいき~ @meikjy
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