夏村さんは最強です ヤンキーが彼女だったら地獄をみるかとおもったら人生好転して最高だった件（最終版）

第1話 プロローグ

　今は昔……。

　ふと、目を覚ますとそこは今から数十年前に通っていた高校の教室の風景であった。

　教室内を一瞥すると、どうやら高校入学数日後のようだ。

　窓側の席に陣取っているヤンキーたちの机がまだキレイだったからだ。

　うちの高校は俺が高校一年生の時、校舎の建築が終わり新しい教室で授業が開始されたからだ。

　俺は通勤時間の道路の混雑を避けるため自転車を飛ばし高校に一番乗りしていた。

　そして、日直が来る前に教室を掃除し、新たな雰囲気の中でひとりダラダラと予習をするのが日課であった。

　家で机に向かって勉強するよりも、広い教室を一人で独占して予習する方が身持ちが良かった。

　というか、家ではいつも誰かの視線を感じていた。

　俺は高校受験に失敗した……。

　原因は自分にあるとは言え、もっと深い闇に捕らわれており簡単にそこから抜け出せない状況にあったためだ。

　この高校はラッキーなことに同じ中学出身の同級生がいない事から、心機一転、勉強一色の高校生活を送り、あわよくば大学合格を目指して考えていた。

　後ろから誰かが俺の肩をたたく。

　俺が振り返るとそこにはメガネをかけた小柄な女子生徒が立っていた。

「かずくん、おはよう！　今日も一番で勉強ですか？　すごい頑張ってますね」

「いやいや、学校にいる方が落ち着くんでね」

　これが彼女とのいつもの挨拶であった。

　同じクラスに『勉強仲間』と呼んでいるメンバーがいる。

　クラスメイトの中にも俺と同じように大学に進みたいと思う奴らがおり、自然と集まるようになっていたのだ。

　彼女もその一人であった。

　このように仲が良い人もいれば、近づき難い人もいる。

　クラスというものは社会を小さくまとめたようなものだと言われるが的を得ていると思う。

　ここで社会性を身につけ子供は大人となっていくのだ。

　とは言え、面倒な人達とは関わりを持ちたくない。

　特に窓側に集まっているヤンキーたちだ。

　俺の高校時代といえば髪はリーゼントで、薄い鞄を持ち、廊下の真ん中を肩で風を切って歩いて行く光景は当たり前だった。

　変に関わりを持ってパシリとかカツアゲを食らったらこの先の高校生活は真っ暗になってしまう。

　変に目立たず、当たり障りのない高校生活……これが目標だった。

　以上の様な情景がサッと目の前から消えた。

　黒板の上に設置された時計を見るとそろそろ8時である。

　今までお話したことがこの後繰り返されるのであろう。

　しかし、人生というものはそう単純にはいかないものである。

　縁というものは絡み合い、ぶつかり合い、人と人とを新たな方向に導く。

　そんな縁に導かれ、俺と俺に関わった人達との物語について話していくとしよう。