仮面をかぶった操り人形は恋してしまった

藍無

第1話 操り人形

「おい、朱希あき。」

「なんでしょうか。」

「このままでは、我が家は没落してしまう、と占い師が言っていたのだが。」

そんなものを信じるのだろうか。

「それは信じられるのですか?」

「ああ。そこでだ、お前に頼みたいことがある。」

「何でしょうか?」

「この国の第一王子をたぶらかして婚約者になってこい。」

「へっ?」

どういうことだろうか。

「今度、仮面舞踏会がある。その時に、たぶらかして婚約者になってこい。」

「お父様、そんなことをいっているのがばれたら不敬罪で捕まりますよ?」

「ああ、お前も私も胴と首が泣き別れになるだろう。だから他には言ってくれるな。お前は私の頼みを今まで断ったことはあるまい。引き受けてくれるな?」

そんなことを聞いているけど、私が断ったら殺すつもりでしょうね、っていうか、今まで断ったことがないのは、断ったら暴力を振るわれるからよ。

わたしだって痛いのは嫌だし、年々断ろうとするとやってくる罰が重くなっているのよね。いわば運命共同体ってやつですか。

まあいいや、私に心なんてないし。

心があったとしても尊重してもらえる環境ではない。

もしもこのことがばれて、不敬罪で捕まって殺されそうになっても、その時に何かを感じることができればそれでいいのだ。いや、むしろつかまって、殺されそうになれば、何か、心を感じることができるかもしれない。それなら、お父様の案に乗るのがいいだろう。

「はい。わかりました。」

私はそう言って、お辞儀をした。

それをみて、お父様は満足そうにに微笑んだ。

さて、第一王子をどうやって、たぶらかしましょうか―――辺境伯爵の娘の身分で。

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