第2話 この世で解けない問題は恋である

 恋っていうのは難しくて簡単じゃない、好きな人と付き合えるのはほんの一部の人だけだ。だから、恋は難しい。


 それなら、俺のこの恋っていうのは難しいに該当するのだろうか?

 俺は、何度も鳴っているスマホを見つめる。


(奏)「今日で付き合って一週間だよ?!」


 朝の憂鬱さなんて簡単に飛んでいく。


 そう、俺はあの日から奏と付き合った。いや、付き合うことになったのだ。一カ月だけ彼氏役をしてほしいとお願いされた。


 もっと、『恋』について知りたいらしく、その手伝いをさせられている。

 なんで、俺なんだよ。


(正人)「そうだな」


(奏) 「冷たくない?!」


(正人)「別に、普通だよ?」


(奏)「はぁーせっかく私が彼女なんだよ?」


(正人)「わー、嬉しい!!!!!!」


(奏)「絶対に喜んでないじゃん!」


 幸せな時間と感じる一方で、俺なんかが楽しむ資格がないと思ってしまう。

 俺は嫌われている。俺なんかと絡んでいると奏まで嫌われてしまいそうで怖い、だから、もう辞めにしたいと思っている。だけど、この幸せな時間が続いて欲しいとも思ってしまう。


(正人)「朝から、こんな美人と話せて嬉しいよ」


(奏)「何? 褒めたって何もないよ!」


(正人)「はいはい」


(奏)「冷たい! ;:」


 スマホをポケットに入れ、バスを降りる。

 バスから降りると、ちょうど幼馴染の真由美が居た。真由美は友達とワイワイ話ながら歩いていた。


 真由美は俺の方に顔を向けると、優しい笑みで手を振る。

 手を振ってるだけなのに、破壊力があった。


 そんな、優しい手を振っている真由美に比べて他の連中は、嫌味を言う。

 俺は、手を振っている真由美を無視して、校門に向かって歩く。





 教室に入るといつもやることは決まっている。自分の席に座り、イヤホンをつけ音楽を聴く。これが俺のやることだ。


 なんせ、俺には友達がいない、だから音楽を聴くことでしか時間を潰せない。

 けど、最近は変わりつつある。


 「南おはよう!!」


 奏が教室に入ってきてすぐに友達を挨拶を交わす。

 奏はクラスで友達も多く、人気者だ。


 そして、奏は必ず教室に入ると俺に連絡をしてくる。


(奏)「今日はイケメンじゃん」


 友達と挨拶を交わした、奏はスマホをポチポチ触りながら自分の席に座る。


 (正人)「そっちも可愛いね!!」


(奏)「うわー、ないわ」


(正人)「何がだよ」


(奏)「多分、正人って結婚できないね」


(正人)「振られた人が何を言ってるんだ?」


(奏)「私は別にモテるし、大丈夫!」


(正人)「それは、よかったな」


 送信ボタンを押したとき、不意に声が聞こえてくる。


「みんな、おっは~」


 いかにも陽キャのような挨拶をするのは、塔崎裕也。


 塔崎裕也も、クラスで人気者だ。持ち前の明るさがクラスを明るくする存在だ。まぁ、俺はそんな裕也に嫌われてるがな。


 裕也はみんなに挨拶をした後、奏のもとに向かって歩く。


「奏、おはよう」


「おはよう、裕也」


 二人の挨拶はまるで、住む世界が違う人の挨拶だった。自分でも言っている意味が分からないが、そんな感じするんだ。


 あんな、楽しそうに話しているになんで俺が彼氏役なんだよ。


 一応俺は、『彼氏役』だ、彼氏役なのに何を期待しているんだが。


 スマホをポケットに入れ、授業の準備をする。




 昼食の時間はボッチにとっては苦痛の時間だ。教室では知らない人たちが騒いで食べているし、いろんな場所に人はいるし、どこも安全な場所なんてない。だから、昼食時間は苦痛だ。


 と思っていたけど、最近は違う。


 ドアの部を握り、軽く開ける。


 開いたドアから見える景色は、なんというか光が広がった景色だった。


「お、こっちだよ~」


 そう、俺たちは屋上で昼食食べている。これも彼氏役の務めだというらしい。

 奏の短い髪は風によって乱れる。


「うわーー」


 奏のわざとらしい声に正人は笑う。


「ちょっと、笑ってないで早く来てよ」


「はいはい」


 そう言い、正人は奏のもとに歩き、座る。


「はい、この愛妻弁当をどうぞ!」


 照れている様子なんてこれっぽちもなく言う。


 愛妻弁当ってなんだよ。


「ありがとう」


「いえいえ! 作る楽しいから大丈夫だよ」


 奏は自分の弁当膝に置き、「頂きます」と言い手を合わせる。


 その時、だった。


 奏のスマホが鳴り響く。どうやら電話のようだ。


「もしもし?」


「あー、うん」


「それで?」


「あはは」


「うん」


「じゃあ、今から行くね」


 電話を終えた奏はどこか寂しそうな顔をしていた。


「ごめん、行かなきゃ」


「うん」


 電話の内容からだいたい予想できた。一緒にお昼食べないか? とかの電話だったんだろう。


「ほんとうにごめんね」


「大丈夫だよ」


 奏は自分の弁当まとめ手に持ち立ちあがる。


「放課後待っといてよ!」


 奏は思い出したかのように言う。今日は付き合って一週間記念でデートの行くのだ。


「はいはい」


「じゃあね」


 奏は手を振りながら屋上をでる。


 奏が出て数分、雨が降ってくる。その雨はまるで俺を雨男を表しているようだった。


 箸を手に取り、弁当から唐揚げを取る。


「美味しい」


 屋上に響く声は決して届くことはなかった。

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底辺の俺と最上位の彼女との成り上がり @sink2525

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