底辺の俺と最上位の彼女との成り上がり

@sink2525

第1話 これは成り上がりのラブコメである

 洒落た音楽が流れた喫茶店は、静かな雰囲気を漂わせる。

 

 喫茶店ていうのは落ち着いた雰囲気が当たり前で、勉強もできるのが当たり前だ。だから喫茶店は人気だと思っているのだが、もし、迷惑な客が居るとしたらどうするのが良いのだろうか。

 

 俺こと、立花正人は静かにラノベを読んでいたのだが邪魔をする客が居る。

 

 俺の目の前に座っている人(客)だ。俺と同じ高校に通っている、柊奏。

 

 奏は、クラスで人気者なのだ。いつもニコニコとしていて明るいキャラが定着している、そんな彼女が何故か俺の目の前でポテトを食べている。


 奏は美味しそうにポテトを食べる。

 

「なんで、俺の目の前でポテトを食べているんですか?」

 

 俺の声は届いているはずなのに、奏はポテトに夢中になっているのか、分からないが、俺の声を無視しポテトを食べる。

 

「あのー?」

 

「どうしたの?」

 

 ポテトを食べるのをやめ、水を飲み、落ち着いた様子で奏は言う。

 

「いや、なんで俺の前で食べているの?」

 

「だって、私振られたんだよ?!」

 

「なるほど、ってなると思いますか?」

 

「ならないの?!」

 

 振られた後のテンションとは思えないほど元気な声で言う。

 

「ならないと思いますけど」

 

「そんな」

 

 奏は肩を落とし、またポテトに手を伸ばす。

 

「てか、そのポテト俺のだと思うんですけど?」

 

「大丈夫!! 私が美味しく食べるから!」

 

 何も大丈夫じゃないぞ?

 

「いや、俺が頼んだやつなんで」

 

「もー、そんな考えだから嫌われるん――あ、ごめん」

 

「大丈夫だよ」

 

 そう、俺は嫌われている。

 

 人は簡単に嫌われる、理由なんて簡単だ。

 

 俺のクラスには幼馴染の斎藤真由美がいる。真由美はクラスの人気者で学年1可愛いと噂されている。そんな彼女と幼馴染の俺だが、俺は嫌われている。

 多分、幼馴染だから嫌われている。

 

「ごめん」

 

 奏は、ポテトを食べるのをやめ膝に手を置く。その仕草はなんとういうか胸が痛くなる。

 

「本当に大丈夫だよ」

 

「ごめんね、本当に」

 

「うん」

 

 奏はそっとポテトを取る。

 

 どんだけポテト好きやねん。

 

「それで、振られたのは本当なの?」


 空気を換えるために俺はわざと話題を振る。


「うん、今日告白したら無事に振られたよ」

 

 奏は誰が見てもわかるくらい、落ち込む。

 

「そっか、それはドンマイだったな」

 

「慰め下手過ぎない?」

 

「俺は慰めが下手なんだよ」

 

「ちゃんとわかってるんだ」

 

「そうだよ、自分の短所くらい分かるよ」

 

「うわー凄い」

 

 奏は、完全に棒読みで言う。

 

「それは、どうも」

 

 話を終え、本に戻ろうとすると、また、奏は話しかけてくる。

 

「じゅあ、イケメンが言うセリフ言ってみてよ!」

 

「なんだその、とんでもない無茶だな」

 

「ほら、早く!」

 

「じゃ、そうだな」

 

「俺と付き合ってみるか?」


 これが俺の考えたイケメンが言いそうなセリフランキング1位だ。多分、いや、絶対に違うと思うけど。

 

 そして、数秒程奏は固まり、満面な笑みで言った。

 

「うん!」

 

 これは、底辺の俺と最上位の彼女との成り上がりラブコメである。

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