ワイガロン星系人

 その昔、鳥羽院に玉藻前というそれはそれは美しい女性がいたという。

 彼女は後に、とある陰陽師によってその正体を見破られるのだが、その切っ掛けとなったのは、ある一人の怪人退治だったという。

 その怪人は時の天皇に奇怪なる術を見せて取り入っていたのだが、玉藻前と陰陽師が協力し合って正体をあぶり出し、退治したという。

 その正体は狐だの、物の怪だのと諸説あるが、その怪人との戦いで、玉藻前が金毛白面九尾の狐とバレてしまい…………


(後略)


『玉藻前の伝承より引用』


◇◇◇

 泰親様。あの者は危険です。

 あの者が操る術は、陰陽師のそれとは理が全く異なります。

 一体、どのような術を使えば、手をかざしただけで物を浮かばせ、手を鳴らして物を出現させられましょう。

 私にはわかりません。私にすらわからないのです。

 あの者の理を超えた力は、きっとこの国に、いえ、もっと広い世界に良く無い影響をもたらします。

 その前に、我らであの者を打ち取るのです。

 あなたが私の事を好いていないことは知っています。それは私も同じです。ですが、そんな事を言っている場合ではないことはお判りでしょう。

 あの者。「わいがろんせいけいじん」を共に打ち取るのです。


『安倍泰親に宛てた何者かからの手紙より引用』


◇◇◇

 あれは、まさに神話のごとき戦いであった。

 ある日の事、安倍泰親様と、玉藻前様が共にわいがろんと呼ばれていたあの御仁と戦い始めた。

 物は吹き荒れ、炎や氷、水や使い魔が荒れ狂うようにわいがろんに襲い掛かっていた。

 そして、わいがろんはその正体、醜い7つ目の蝉のような姿を現したのだ。

 まるで夏の蝉の鳴声を発し、その鳴声で泰親様の放った術を吹き飛ばし、玉藻前様の術を返していった。

 呆気に取られていた兵や公家たちは逃げまどい、まさに大きな混乱の中にあった。

 そして、わいがろんの手から妙な術が放たれ、玉藻前様も……ああ、信じたくはなかったが、あのお方も、人ではない姿を現した。

 玉藻前とわいがろんは悍ましい力を向け合って……(のちの文章は焼けていて読めない)


『鳥羽院に封印されていた文章より引用』


◇◇◇

怪獣絵巻


ワイガロン星系人

身長 150㎝

体重 50キロ

出身 ワイガロン星系

特徴 蝉のような、大きな音を発する。


 かつて、鳥羽院で天皇に取り入っていた7つ目の宇宙人。

 ワイガロン星系人は、彼らで言う古代文明に入り込み、ゲーム感覚で文明を興隆させる存在である。

 この固体もまた、そのゲームとして古代日本に入り込んだが、九尾の狐である玉藻前と、安倍泰親によって正体を暴かれた。

 そして玉藻前とワイガロン星系人は、お互いの正体をむき出しにして戦い、ワイガロン星系人は破れた。

 だが、この戦いの結果玉藻前も正体を暴かれ、後に討伐されたのだが。

 これはある意味、侵略者と侵略者の、己のプライドをかけた戦いだったのかもしれない。

 ちなみに、この星の蝉に強い共感性を持っていて、このまま侵略が完了していれば、蝉の世が来ていたかもしれない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

怪獣絵巻 バルバルさん @balbalsan

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画