『私』は何者?

黄昏 朧

『私』は何者?

翼がある。

そのことに気が付いたのはいつ頃だっただろうか?

夜に寝て、朝起きて、朝食を食べ、午前中ボーとし、昼食を食べ、午後もまたボーとして、夕食を食べ、風呂に入り寝る。そんなルーティーンがずっと続いていた。

「ずっとこんな生活つまらない。」

と何度か何かをしようとした。学校に行こうか?アルバイトに行こうか?趣味を作ろうか?いろいろなことを考え実行しようとした。

学校は居場所がない。ずっと見ているだけ。

アルバイトは面接をしてもすべて落ちた。答えがありきたりすぎたか?

趣味は何をいいのかわからずボーとすることが趣味になってしまっている。これは趣味なのだろうか?と思い読書をしてみたり、映画を見てみたりしたがつまらない。何も感じない。そして自分は何をしても無駄なのだと思った。つまらない。何かする?何をすればいい?と考えていると時間が過ぎ一日が終わる。毎日毎日同じことの繰り返し。時間が過ぎて自分に変化がないことに気付く。爪は伸びない。短くもないし長くもない。髪は地面につきそうなくらい長い。切ろうとしても切れない。染めてもいないのに長く白い髪。だが、その中で変化したものがある。それは瞳の色。はじめは普通に黒かったはずも瞳はだんだん金色になり光に反射し輝いている。

久しぶりに鏡で自分を見てみた。鏡には白い肌に白く長い髪、黄金に輝く瞳をしている無表情な顔の自分がいた。自分は鏡に映る自分を見てのたが『何も』感じなかった。そして背中の違和感に気付く。チラチラと髪から見え隠れする髪と同じ色をしている『何か』。それはバサッと広がった。目を疑ったが表情は動かない。その『何か』は背中から生えている美しい鳥のような翼だった。動かそうと思えば自在に動かせる。翼の先は足元まである。自分の背中に生えている翼はそれほど大きかった。

自分はこの世の者ではない。

そう本能的にわかった。「急いでここから離れなくては。」と思った。幸い髪も翼も床を引きずるほどではない。汚れる心配はないだろう。

声が聞こえた。

「早くこちらへおいで。」

男でも女でも若くも老いてもいない声。自分は声のする方へ無意識に向かった。気が付くとベランダの柵の上にいた。そして自分は飛んだ。いつも使っている手足のように翼が動く。雲の上を目指す。なぜかそこに行かなくてはと思ったからだ。雲の上に行くと自分が着ていた服が白い裾の長いワンピースになった。雲の上は何もない。ただ青い空が広がっている。雲の上に降りると雲は固いような柔らかいような不思議な感触が足に伝わる。

「こちらを向いて。」

先ほどと同じ声が後ろから聞こえた。声のする方へ顔を向けると、そこには自分と同じ顔、同じ髪、同じ瞳の色、翼をもった人が立っていた。違いがあるとすれば翼の色がオーロラのような光の角度によってキラキラと輝く色をしていた。だが、不思議なことにその人の翼はいろいろな色になるのになぜか白色にだけにはならなかった。

「あなたは『私』の一部。ようやく見つけた。さぁ、こちらへおいで『私』の『無の感情』」

その人、『私』に言われ『私』はすとんと心の中で納得した。『私』は『私』の『無の感情』だったのか。『私』には喜怒哀楽がない。だから『私』は同じ姿をした『私』を探していたのか。『私』は『私』の『無の感情』だから無表情しかできないのか。つらつらと考えていると『私』が手を差し伸べて『私』に言った。

「さぁ、手を合わせて、『私』の中に戻っておいで。」

『私』は言われた通り『私』が差し出した手に自分の手を重ねた。そして『私』はやっと一人の『私』になれた。

翼に白い色が入った。

空の上には『私』一人だけ。

『私』は空から人々を見守る者。

さて、今日は何が起こるかな?

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『私』は何者? 黄昏 朧 @tasogareoboro

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