第3話 発展と敵意

村の土壌改良剤が成功を収めてから一週間。収穫は想像以上の成果を見せ、村全体が活気づいていた。


「レイ様、この村の未来はあなたのおかげで変わりました!」

村長は深々と頭を下げ、感謝の言葉を繰り返す。その様子に、僕も少し気恥ずかしさを覚えた。


「俺一人の力じゃないよ。村の人たちが頑張ったからだ」

と謙遜するが、村人たちは一様に僕を「救世主」だと持ち上げてくる。


そんな中、アークは淡々と次の指示を下した。

『収穫量の増加は素晴らしい成果です。しかし、それだけでは村が持続的に繁栄することは難しい。今度は流通網を構築し、外部との交易を開始する必要があります』


「交易か……でも、この村にそんなコネや資金はないぞ?」


『その通りです。ですので、新たな製品を開発し、他の村や町に売り込む必要があります』


「新たな製品? 例えばどんなものだ?」


アークはすぐさま答えた。

『この村に自生する薬草や鉱石を活用し、傷薬や保存食の製造を提案します。また、改良済みの農作物を干し野菜として加工すれば、需要が高まるでしょう』


「なるほど、それなら村人たちにもできそうだな」


翌日、僕は村人たちを集め、アークから提案された新たな計画を説明した。


「これからは、この村をただの農村じゃなくて、交易拠点にするのはどうでしょう。お互いに助け合って、新しい製品を作れば、もっとこの村が活気に満ちると思います!」


最初は戸惑っていた村人たちも、僕の熱意に次第に心を動かされ、一致団結して取り組むことを決めた。


しかし、その動きは外部の敵意を呼び起こすことになった。


村が順調に新製品を作り出し、それを近隣の町で売り始めると、噂が広まった。そして、その噂を聞きつけたのは――。


「アルトレイド家の坊主が、こんな山奥で何かやってるらしいな」


その声の主は、近隣の領主であるバルツ・エリオット男爵だった。彼はこの地域一帯を牛耳っており、貧しい村から税を搾り取ることで成り立つ悪名高い支配者だ。


「奴が勝手に交易なんて始めているなら、見過ごすわけにはいかん。俺の許可なくそんな真似をした罰を、しっかり教えてやる!」


バルツは手下を率い、村への襲撃を計画し始めた。


村への警告


数日後、村の入り口にバルツの手下が現れた。

「お前たちに告げる! この村での交易活動はすべて男爵様の許可を得たものではない。不法行為を今すぐやめろ!」


その言葉に村人たちは怯え、ざわめきが広がった。


「どうするんだ、レイ様……」

村長が不安そうに僕を見る。


僕は深呼吸をし、アークに尋ねた。

「アーク、どうする? この状況を打破する方法は?」


『解決策は三つあります。一つ、直接交渉して支配下に入る。二つ、完全に隠れて交易を続ける。三つ、男爵に立ち向かい、自立を勝ち取る』


「……三つ目だな」


『その場合、彼らの兵力に対抗するための準備が必要です。まず、この村の守備を強化し、住民を戦える状態に訓練する必要があります』


「わかった。やるしかないな」


僕は村人たちを集め、徹底的に訓練を始めた。アークの知識を活用し、簡易的な防衛設備や、村の地形を活かしたゲリラ戦術を構築する。


「絶対にこの村を守る!」

僕の言葉に、村人たちの士気は徐々に高まっていった。そして――バルツ男爵との対決の日が近づいていた。


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