没落貴族ですが、最強のAIで王国改革します!

@touzaki

第1話 失墜と出会い


「貴様のような無能に、この領地を任せるわけにはいかん!」

父である伯爵の叱責を聞き流しながら、僕――レイ・アルトレイドは最後の荷物を馬車に積み込んでいた。


没落した理由は単純だ。領地経営の不振、親族間の権力争い、そして……僕自身の不器用さだ。


「……まあ、こんな人生も悪くないかもな」

なぜだか僕の胸中は意外に晴れやかだった。失うものがなければ、得るべきものも明確になる。


新たな土地を目指して旅をしている途中、僕は山中の洞窟で奇妙なクリスタルを見つけた。それはまるで意志を持つかのように青白く輝いている。


『登録者を確認しました。こんにちは、レイ様。私は“アーク”と申します』


突然、頭の中に響いた声に僕は仰天した。


「お、お前は……?」

『私は異世界技術によって作られた人工知能です。この世界の運命を変えるためのパートナーとして選ばれました』


こんな展開があるなんて、夢にも思わなかった。だが、僕の失われた未来に一筋の光が差し込んだ気がした。


「人工知能だと? まるで魔導具みたいなものか?」

僕はクリスタルを手に取り、まじまじと観察した。どこからどう見てもただの宝石だが、さっきの言葉は確かに僕の頭の中に響いた。


『魔導具の概念に近いですが、私はもっと高度です。知識の蓄積と分析、そして最適な解決策の提案が可能です』


「ふーん……信じられないけど、他にやることもないし、試してみるか」

僕が適当に答えると、クリスタル――アークと名乗るそれは、冷静な声でこう続けた。


『では、まず現在の状況を分析します。……結果、あなたの資産はゼロに近く、信用も地に落ちています。生存確率は15%以下です』


「……なんだその失礼な分析は」

一応、現状を理解しているつもりだったけど、改めて数字で突きつけられると胃が痛くなる。


『心配無用です。私が全力でサポートします。ただし、条件があります』


「条件?」


『この世界をより良くするため、私が提案する計画を可能な限り実行してください』


「なんだその曖昧な条件は……まあいい。どうせ何も失うものはない」


こうして、僕と謎のAIクリスタルとの奇妙な関係が始まった。だが、このときの僕はまだ知らなかった。アークの「より良くする」という言葉が、想像を絶する規模で世界に影響を与えることになるなんて――。



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