第4話 決戦
夜明け前、霧が立ち込める中、村は不穏な静けさに包まれていた。アークの指示で構築した防衛線が村の周囲に張り巡らされ、村人たちは自作の武器を手に固く息を飲んでいた。
「敵の兵力は30名以上、装備は鉄製の武器と軽装甲の鎧。正面突破されれば勝機はありません」
アークの冷静な声が僕に戦況を伝える。
「だが、この村には地形がある。奴らが有利な条件で戦えるようにはさせない」
僕は腰の剣を握りしめた。元貴族として剣術の心得はあるものの、戦場に立つのはこれが初めてだった。それでも、守るべきものがある以上、逃げるわけにはいかない。
朝霧の中、バルツ男爵の兵がゆっくりと村へ近づいてくる。
「村人ども、命が惜しければおとなしく降伏しろ!」
先頭に立つのは、豪奢な鎧をまとったバルツ自身だった。その背後には無数の武装兵が控えている。
「降伏すれば命は助けてやる。だが拒めば……この村を焼き払う!」
その宣言に村人たちは怯えた表情を浮かべるが、僕は冷静さを保ちながら大声で答えた。
「バルツ男爵! この村はお前の支配を受けるつもりはない!」
「ほう……小僧が何を偉そうに。覚悟はできているようだな!」
バルツの合図で兵士たちが前進を始めた。
「みんな、計画通りに動くんだ!」
僕の指示で、村人たちはあらかじめ設置しておいたトラップを作動させた。
ドン!
村の入り口に仕掛けられた地雷(アークの指示で作った簡易爆薬)が爆発し、突撃してきた敵兵を足止めする。
「くっ、何だこの仕掛けは!」
動揺する兵士たちに対し、次の攻撃が加えられる。木に隠れた村人たちが弓矢を放ち、一気に敵の数を削る。
「これが貴様らのやり方か!」
激怒したバルツは自ら前線に出てくる。
「アーク、次はどうする?」
『彼をおびき出すために村の中心へ誘導してください。罠を仕掛けた地点で決着をつけます』
「了解だ。行くぞ!」
僕はバルツに向かって駆け出した。
「小僧が! 貴族の端くれだった貴様に、この俺を止められると思うなよ!」
バルツは巨大な戦斧を振りかざし、圧倒的な力で攻撃を仕掛けてきた。その一撃一撃は地面を砕くほど重く、まともに受ければ即死は免れない。
「くそっ、こいつ……!」
僕は汗を拭いながらも、アークの作戦を思い出し、冷静さを保とうとする。
『落ち着いてください、レイ様。計画通り、彼を罠の地点まで誘導してください』
「わかってる……!」
僕はバルツの攻撃をかわしながら、意図的に村の中心部へと後退する。そこにはアークが提案した“決戦の罠”が仕掛けられていた。
中心広場には、いくつかの罠が複合的に設置されていた。
1.偽りの地面
村の広場の一部の地面には木の板と土を使った擬装が施されており、バルツが踏み込むと地面が崩れるようになっている。その下には深い穴が掘られ、落ちた敵を一時的に拘束する。
2.投石機構
村の周囲にある木を利用し、即席の投石機を作り上げた。バルツが穴に落ちた瞬間、遠隔で作動させる仕組みだ。投石は石や鉄くずを詰めた袋で、強力なダメージを与えることができる。
3.最終防御策:火炎瓶
村人たちが用意した油瓶に火を灯し、最後の手段として使用する。
僕はわざとバルツの攻撃を引きつけ、狭い道から広場へと誘導した。
「逃げ回るばかりか! お前の首を斬り落としてやる!」
バルツは激昂し、重々しい足音を響かせて僕を追い詰めてくる。そして――。
「ここだ!」
僕は広場の中央に立ち、バルツに向かって挑発するように剣を構えた。
「逃げ場がなくなったな、小僧!」
バルツが広場に踏み込んだその瞬間――。
ガシャン!
彼の足元が崩れ、重い鎧を着た体が罠の穴に落ち込んだ。
「ぐっ……!? これは……!」
落ちた穴はかなり深く、バルツは一瞬で動きを封じられる形となった。
『罠作動を確認。次の攻撃を準備してください』
村人たちが一斉に投石機を作動させ、バルツめがけて石の雨が降り注いだ。
ドン! ドン!
彼の豪華な鎧は次第に凹み、ダメージが蓄積されていく。
「くそっ、こんな罠に……!」
それでも彼は強靭な体力を持ち、まだ動こうとしている。
僕はアークに指示を求めた。
「アーク、どうする! まだ奴が立ち上がるぞ!」
『火炎瓶を使用してください。彼の装備は重厚ですが、火に弱いです』
「了解だ!」
村人たちが罠の周囲に火炎瓶を投げ込むと、穴の中から立ち上がろうとしていたバルツの鎧が火に包まれた。
「ぐあああっ!! 貴様ら……この俺がこんなところで……!」
バルツが最後に叫び声を上げると、静寂が広場を包んだ。
敵兵たちは指揮官を失ったことで戦意を喪失し、残った者たちは一斉に撤退を始めた。
「やった……! 勝ったぞ!」
村人たちは歓喜の声を上げ、互いに抱き合って勝利を祝った。
僕は膝をつき、安堵の息をついた。
「終わったな……」
『素晴らしい指揮でした。これで村の独立が確立されました』
アークの冷静な声が僕を励ます。
だが、その一方で僕は確信していた。この戦いは序章に過ぎない、と。
没落貴族ですが、最強のAIで王国改革します! @touzaki
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