『いいな』って思える時間がここにはある
三椏咲
『いいな』って思える時間がここにはある
——今日は彼女と一緒にハンバーガーを食べる日だ。
どうしてそんな日になったかというと、私と、私の彼女が推している百合カップルVTuberさんがハンバーガーが好きでよく食べているらしく、今日もその配信があるので一緒のものを食べたいらしいのだ。
なので今日の彼女のテンションはとても高い。今日は朝から、「推しと一緒のものを食べるんだ‼」とかわいらしく宣言していた。
「早く早く‼配信始まっちゃう‼早く買いに行こ!」
「そうだね、そろそろいい時間だし買いにいこっか」
そう言って私たちは立ち上がり、出かける準備を始める。今の季節は冬真っ只中なので、外はかなり寒い。
そんな日は出かけるのが億劫になってしまうことが多いが、今の私の隣には季節関係なく、春風のように暖かな風を運んでくれる大切な存在がいてくれる。
「うん‼行こ‼」
そう言って私の彼女が手を差し出してくれたので、私はその手を取る。
彼女は私が喜びそうなことをいつも考えてくれている。そういうことを考え続けてくれる彼女の努力が何よりも愛おしいと思える。
そんな時、私は彼女に大切にされていることを実感できるし、好きだなって思える。だから私の心はいつも温かい。
私は彼女の手を繋ぎながら、この手はこれからもずーっと離さないで歩いていこうと誓うのだった。
「うぅ~、寒かった~」
私たちは両手に荷物をいっぱいにして帰ってきた。
今回販売された期間限定の商品がいっぱいあったのだが、全部買ってきてしまったのだ。
全部食べれるか怪しいところだけれど、「やらない後悔よりやる後悔」は大事だ。
なんとなく、その言葉を使う場面が違う気がするけれど……。
「準備するから、先にあったまってていいよ」
「ホントに?ありがとう~」
そう言って彼女はこたつの中に入っていった。こたつでぬくぬくしている彼女はいつ見ても飽きないのでずーっと観ていられる。
——いけない、見惚れていた……。私は自分の欲望を何とか押さえつけ、配信を観るための準備をしていく。
こたつテーブルの上に配信を観るためのタブレット、買ってきたハンバーガや飲み物を準備していく。
「よし、準備できた」
「こっちおいで!暖めておいたから!」
一通り準備し終えたところで彼女が自分の隣に私を呼んでくれたので、私は彼女の隣に磁石のようにくっつき彼女の体温を感じる。
「準備してくれてありがとね」
そう言って彼女が私の頭を撫でてくれる。少しくすぐったくて恥ずかしいけれど、いつまでも撫でていてほしいとも思う。
「ううん、全然大丈夫だよ」
むしろ彼女のふにゃふにゃ笑顔を間近で観れているので、こちらがお礼を言いたいくらいだ。
「あ!始まった!」
配信が始まる時間になり、タブレットの画面に私たちの推しである百合カップルVTuberさんが映し出される。「お帰り!!」と彼女たちが挨拶をして、ちょっとだけ彼女たちの「好き勝手いちゃりいちゃりタイム」を挟んでから、彼女たちがハンバーガーを食べ始める。
彼女たちは本当にハンバーガーが好きだな……、もしかしたら長続きの秘訣は美味しいものを食べることなのかもしれない……なんて考えながら私たちも彼女たちに倣ってハンバーガーを食べ始めることにする。
「んんー!!これ、おいっしいぃー!!!」
「うん!これは何個でもいけちゃうかもしれない……」
こうして私たちの部屋に、明るい声と共に暖かく楽しい空気が広がっていく。
何気ないことを、いいなって思えるようにしてくれる。だから私たちは彼女たちに伝えるのだ。
——あなた達のおかげで、幸せだなと思えることが多くなったんだよ。お二人の幸せのおすそ分けは、ちゃんと私たちに届いているよって。
これからも彼女たちのおかげで、たくさんの「好き」と「愛している」を二人で紡いでいける。いいなって思える時間がこれからも増えていく。それは私たちだけの宝物だ。
そんな時間が私たちがおばあちゃんになっても続いていって、ありきたりかもしれないけれど、「あなたに出会えて良かった」とか「愛してるよ」なんて言葉を毎日伝える。
私は、彼女が幸せそうに食べている横顔を見つめながら、それは素敵なことだなと想ふのだった。
———今日も彼女たちの幸せな思いが、電波の波に乗ってたくさんの人に、勇気や希望となって届いていく。
それらはきっと、私たちの頭の上で光る星たちとなって、十年、五十年、百年くらい、この広い世界の遠い未来までも届くのだと信じている。
私たちの幸せで彼女たちに恩返しできるように、そしていつの日か、みんなが笑顔で思いっきり笑い合える世界になるように、みんなで進み続けていくのだ。
『いいな』って思える時間がここにはある 三椏咲 @mitumatasaki
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