第2話 くもになりたくて
「よし、準備万端!さっそくレッツゴー!」
「行ってきまーす!」
「いってらっしゃい!気をつけてね!」
今日もよく晴れた夏だった。白くてふわふわしてそうな雲がたくさん空に見える。
「もしかしたら雲になれるかもしれない!」
──決してあのうさんくさい記事を信じていたわけではない。ただ確かめるために行くんだ。そう思いながらも、もしかしたら雲になれるかも知れないと思うと無意識の内に気分が上がっていた。
「到着!」──こんな近場に転生させてくれる神様がいるわけないと思いつつ山を登り始めた。
山自体はそこまで急な斜面や登りにくいポイントはないが標高が高く、頂上まで行くとなるとかなり厳しい。
「ふぅ...疲れたなあ、あの川の近くで少し休憩しよう」
そうして川の近くで軽い昼食を食べた。
とても綺麗な川で
周りには小さな石がたくさん転がっている。これを見てゆうかは1つやりたいことが浮かんだ──
「...水切りしよう!」
近くにあった石を投げ水切りをする。
「やった!3回跳ねた!」
そうして何度か水切りで遊んでいると──
「あっ」投げた石が全く違う方向に飛んでいってしまった。
その石の飛んでいく方向を見ると蜘蛛の巣が張っており、丁度獲物を捕らえ捕食中の蜘蛛に当たってしまった。
──グシャッ
──恐らく蜘蛛が潰れた音が響く。
「ゲッ...やっちゃった...」
なんだか申し訳なくなり、また山頂へと歩き始めた
そうして歩き続けて約1時間後──
「ふぅ...やっと山頂...!!」
山頂から見る景色は格別だった。それに雲がとても近い。
「綺麗...!でもやっぱり神様なんていないや.....
ん?あれは何?」
そこには小さなお寺があった。
「お寺だ...もしかして本当に神様がいるの?」
お寺に近づき小さな賽銭箱と鐘がある。
「せっかく来たんだし雲になりたいってお願いでもしよっかな!」
そうして10円玉を入れ、鐘を鳴らし心の中で雲になりたいと願う。
──目を開け振り返るとそこには老人がいた。
「え!?だ、誰!?」
「誰って...お主が呼んだんじゃろうが」
「呼んだ...?」
「今そこで願い事したじゃろう?」
「は、はい.....え、もしかして!?」
「そう──わしが神じゃ」
ぱっと見はただの痩せた老人だった。だがよく見てみると、どこか威厳のある服を着ておりいかにも神って感じの見た目だ。
「まさか本当にいるなんて...」
「そしてお主、くもになりたいと?」
「...はい!本当に転生できるんですか!?」
「まあまあ焦るな...くもになりたいと思った理由かくもになって何をするか言ってもらおう」
「私は今中学3年生で、いつも勉強ばかりで全く面白くない毎日なんです。そして、いつも部屋から見える雲を見ていると思うんです。あんな感じに自由に生きていたいって。白くてふわふわしているものに身を包んでゆっくりと移動していく...私もそんなふうに暮らしていきたいって。」
「ふむ...よかろう」
「本当ですか!?」
「うむ、お主の願いはとても素晴らしいものじゃ」
「...ありがとうございます!!!」
「それじゃあ早速転生させても構わないかな?」「はい!お願いします!」
──この時のゆうかは家族や友人などは一切考えていなかった。目の前の願い以外何も考えていなかったのだ。──その先のことも。
「それでは目を閉じて3つ数えてから目を開けるんじゃそうすればお主はくもになっておる」
「...はい」
「3...2...1...」
目を開けた先には、白くてふわふわしていて大きな街を一気に見渡せるような高い雲
──ではなかった。
実際に見た景色は全く見たことのない森にいた。
「え...?どこ?私は雲になったんじゃないの?しかもなんかネバネバする...」
──そして自分の足が8本あることに気づいた。足といっても人間の足ではない。
────これは蜘蛛だ。
「なんで蜘蛛なの!?私は雲になりたかったの!ちゃんと説明もしたのに!!」
思い返してみると、神様に言った説明はどちらの
「くも」に当てはめてもそこまで違和感はなかった。神様は雲ではなく蜘蛛を選んでしまったようだ。
「神様!私を人間に戻してください!蜘蛛になりたいんじゃないんです...」
声になっていたのかもわからないが必死に神様に訴えかけた。
──それに答えるかのように遠くから石が飛んできた。
────人間の記憶を引き継いでいるゆうかにとって自分がどうなるかは容易に想像することができた。
「いやだ!!いやだ!!!死にたくな────」
──グシャッ
「それにしてもあの子、蜘蛛になりたいなど変わった願いを持っているのぉ...それじゃあ、わしは雲に乗って少し旅でもしようかの...」
雲になりたくて @KTdesu
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