誰もが傷ついている

白川津 中々

◾️

朝目覚めてスマートフォンをいじっていると個人の服装を巡って有名だか有名じゃないんだかよく分からない人達が議論というか悪口を言い合っていた。


デニムがどうだのパーカーがどうだのミニスカートや短パンはどうだのと、ある程度の実績を積み上げてきた人間がしょうもない事に脳のリソース使っているなぁと思いつつ、表現の自由や尊厳、自意識など多角的な面で見ようとするとこういったやり取りも必要なのだろうなと納得してディスプレイオフ。ベッドから起き上がり食事の準備をする。鍋に水を張り、出汁、味醂、酒、醤油を加えて絹豆腐を投入し火にかけ、温まってきたら米と卵を追加。できあがったのは粥なのか雑炊なのかよく分からないもの。半熟の卵や崩れた豆腐が出汁の香りと一体となり美味い。寒い朝はこれに限る。


再びスマートフォンを取り出しニュースのライブ配信を観ると外国の内戦について報じられていた。日常に暴力、破壊、略奪、言論封殺、自由と尊厳の侵害が行われ、食事もままならない様子が映し出されている。ファッションについての議論も朝食の味も忘れてしまって、俺の心には悲しい気持ちだけが残っていた。


誰も彼もが争い傷つく。それを見ている人間でさえも。

人類は、おしなべて不幸だ。

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