第6話 夢のつづき(最終話)
急に目が覚めると、俺と七瀬さんは二人で教室の床に並んで寝ていた。
——え、何これ、本当に夢?
ぼんやりとした頭のまま隣を見ると、彼女はすでに目を覚ましていた。メガネをかけ、髪型もいつもの三つ編みに戻っている。
「起きたの?」
「うん……」
「覚えてる?」
俺が問いかけると、七瀬さんは俯いたまま答えない。
「ここから出ようか」
「……うん」
俺たちが扉を開けると、驚くほど簡単に廊下へ出られた。何事もなかったかのように、学校中は静まり返っている。校門も普通に開き、すぐに外に出られた。
——夢だったんだろうか?
時計を見ると7時30分。あの一連の出来事を考えると時間の辻褄が全然合わない。校内はいつも通りの様子で、キャンプファイヤーやカラオケの痕跡なんてどこにもなかった。
でも、隣で何も言わずに歩く七瀬さんの表情を見ていると、やっぱりあれは現実だったような気がしてならない。キスの感触がまだ生々しく残っている。
「あの、大丈夫?」
俺の問いかけに、七瀬さんはかすかにうなずいた。
しばらく歩いていると、七瀬さんの家との分かれ道に着いた。彼女はずっと黙っていたが、最後に振り返り、かすかに微笑んだ。
「じゃあ」
「うん」
七瀬さんが自分の家の方向へと歩き始める。その背中をぼんやり見送っていると、彼女はふと立ち止まり、こっちを振り返った。
「私は…… 絶対に忘れないから」
——やっぱり、二人で同じものを見ていたんだ。
「でももう、魔法は消えちゃったから……」
そう言い残して、七瀬さんは家の方へ駆け出していく。その姿を見た瞬間、俺は心の中で叫んだ。
——追いかけなきゃ。
急いで七瀬さんに追いつき、腕を掴んだ。彼女は驚いて振り向く。その目には、涙が光っていた。
「あの、今すぐ返事はできないけど……もう少し、もう少しだけ、待ってくれないかな」
七瀬さんは一瞬驚いたようだったが、すぐに微笑んだ。そして、柔らかい声で答えた。
「はい」
七瀬さんは少し距離をとって後ろに下がると、ゆっくりと三つ編みの髪をほどき、メガネを外した。
再び目の前にはあの美少女が現れ、その姿は月明かりに照らされて、美しく輝いて見えた。
「私、いけない娘になっちゃいました。責任、ちゃんと取ってくださいね♡」
七瀬さんは少しイタズラっぽい表情を浮かべて笑っている。
魔法を使っていたのは…… 実は彼女なのかもしれない。
🚫校則違反をしないと出られない学校〜よりにもよって、堅物学級委員長と一緒に閉じ込められてしまったなんて…… 苟且(仮ペンネーム) @bone_to_be_wild
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