第3話 市場を支配する者

藤原信也から預かった100万円。それは高校生の亮介にとって、ただの資金ではなかった。それは「未来を知る者」として、自分の力を証明する舞台でもあった。亮介の脳裏には、未来の市場動向が鮮明に浮かんでいる。これを使えば、自分が市場を完全に支配できることに疑いの余地はない――その自信が、彼を突き動かしていた。


亮介は自室にこもり、ノートパソコンを前にして市場の動向をチェックしていた。この時代ではまだオンライン取引が始まったばかりで、情報の流れも今ほど早くない。だが、それがむしろ亮介にとって有利だった。彼は未来の情報を駆使し、誰もが気づいていない「勝ち筋」を次々と見つけていく。


「まずは、IT関連株を集中的に攻める。だが、それだけじゃない……」


亮介は、株価の急騰が予測される新興企業に目をつけた。それらはまだ世間に知られていないが、未来では日本を代表する企業に成長することを亮介は知っている。その中には、やがて世界的なオンラインサービスを展開する企業も含まれていた。


彼は藤原信也から預かった100万円を大胆に動かしつつ、自分の資産50万円も加えて一気に投資を拡大した。彼の戦略はこうだ。


1. 急成長が確実な企業に集中投資:未来を知る亮介には、これが最も効率的な方法だった。

2. 短期のリスクを恐れず、長期的な爆発力を狙う:この時代、情報の非対称性を最大限に利用する。


亮介は瞬く間に10以上の銘柄を買い集め、その結果をじっと待った。


数週間後、亮介が仕掛けた銘柄が次々と急騰し始めた。IT関連株が次々と時価総額を倍増させ、小型企業の株はたった一晩で2倍、3倍になることもあった。この時代の市場は未成熟であり、少しのニュースでも大きく動く。その荒波を完全に読み切った亮介は、まさに「市場を操る者」と化していた。


「よし……読んだ通りだ」


最初の1ヶ月で、亮介の資産は信也の100万円を含めて500万円を超えた。このペースで増えるとは思っていなかった亮介自身も、その数字を前にして一瞬驚きを隠せなかった。


「でも、これで満足する俺じゃない」


彼はさらなる勝負に出ることを決意する。次に狙うのは、世界市場だ。まだ一般人が手を出しづらい海外市場にも目を向け、未来の「勝つ銘柄」を買い漁る準備を始めた。


その頃、亮介の成功の噂は学校内でも広がり始めていた。クラスメイトたちは、「亮介が株で大金を稼いでいる」という話題で持ち切りだった。その中には、剛志の姿もあった。


「亮介、お前……いくら稼いでるんだ?」


剛志が直接聞いてきたとき、亮介は一瞬答えを迷ったが、正直にこう言った。


「500万くらいかな」


その一言に、剛志の目が見開かれる。


「高校生がそんな大金持ってるなんて……あり得ねえだろ!」


亮介は微笑みながら言った。「未来を読むんだよ、剛志。俺は未来を見て動いてるだけだ」


その言葉に、剛志は何かを掴んだような顔をした。そして、その日の放課後、彼は亮介にこう提案した。


「俺も、お前と一緒にやらせてくれないか?」


亮介は少し驚いたが、剛志の真剣な目を見て頷いた。


「いいだろう。ただし、俺のやり方をしっかり守れるならな」


こうして亮介と剛志の二人は、投資パートナーとして動き始めた。


それからさらに3ヶ月後、亮介の資産は2000万円を突破していた。株価の急騰を的確に読み、リスク管理を徹底することで、彼は誰もが恐れる市場の荒波をものともせず利益を積み上げていった。


「俺は、まだ止まらない。この市場を完全に支配するまで」


亮介の目には、さらなる高みが見えていた。国内市場だけでなく、海外市場、さらには先物取引や不動産投資――彼の視野は広がり続けていた。


「次はもっと大きな勝負だ」


彼は自分の成長を確信しつつ、さらなる挑戦に向けて準備を始めるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

逆行トレーダー ~市場の覇者への道~ なちゅん @rikutui3

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ