TRADE ~勇者召喚の度に無理難題押し付けてくるので、神様と取引しました~

月杜円香

第1話  神様と取引した俺

 俺の名前は、門田零かどたれい。花ヶ咲高校の二年、普通の何処にでもいる高校生だ。――――地球世界では――――


 何故か、良く異世界転移をする俺。

 そこは、母さんの持ってたライトノベルの【光の国から愛をこめて】の世界なんだな。


 普通の恋愛ファンタジーの世界に、何故か、勇者召喚なんて物があって、俺はたびたび、喚ばれてしまうんだ。


 今回で、三回目か……。

 ここでは、何年たってるか知らないが、俺には二日しか経ってない。


 いつも寝込みを襲われるんだ!! 一応、夢みたいで異世界に行っても俺が死ぬことはないし、何故か、魔法の力が凄いらしい。


 向こうでの俺の名前は、勇者のレイモンド・ラミレス。いくら俺の名前は、零だ!! と言っても向こうの奴らは、レイモンドだと返してくる。

 耳が悪いんじゃないか……?


 ――――で、今回二日前に魔族退治で呼ばれたのに、再びこの世界で目が覚めた。


 そこは、銀色の葉っぱが付いてる樹がたくさんある不思議な森で、俺は、今までみたいに郊外の石舞台のような大岩で目覚めた訳でなく、室内のベッドで目覚めたんだ。


 初めは、何処かに旅行したんだっけ? と思ったけど……俺にのぞき込んでくる顔が、銀髪銀の瞳の奴らと分かって、また、喚ばれてしまったのかと、理解したね。


「お目覚めですか? レイモンド殿」


「今度は、何!!? なんか、神々しいところみたいだけど?」


 俺は、身体を起こしながら言った。毎度、毎度パジャマで移動だ。


「さすがに、お分かりになる!! さすがレイモンド殿」


「俺は、零だっていうのに!! あんたは誰? どの時代なんだ?」


「星歴の千三百八十年です」


「まだ、魔族がうようよしてる時期じゃん!! 二日前に、アルゲイ族の小さな巣を潰したのによ!!」


 俺は、二日前の奮闘がおじゃんになったことを嘆いた。


「アルゲイ族の巣の討伐の話は、聞いておりませんが……?」


 だろうな。二日前の戦いは、星暦千五百年頃、未来の話だよ。

 まただ……。この世界は、手強い敵に対して勇者召喚ということをすんだ。

 それに、俺が良く引っ掛かる訳で――――でも、時代はバラバラ。どの時代に転移するのかは俺の意思じゃ決められないんだ。

 過去だったり、未来だったりする。


「……で、今度は何? 俺は機嫌が悪いから、変な頼み事だったら、キレちゃうよ!!」


「キレる……? 自分で自分を斬るのですか? レイモンド様は、丸腰でおいでと聞いてますが」


 銀髪の青年は、ルーシャスと名乗り、光りの神殿の若き三賢人だという。

 この時代、神殿の力が、ものすごく強くて、神の系譜を名乗る一族が世界を動かしてるんだ。その頂点にいるのが三人の賢人。


 見た限り、平和そうな時代になんで召喚されたんだ? それもいつもの荒れ地ではなく、神殿のような建物の中で……?


「それは、ワタシに召喚の術が出来たことでです。ワタシたちは、今とても困っています」


「見たとこ、あんたはいつもの冒険者じゃないもんな。ここもいつも大岩じゃないし」


「神官ですよ。我らは今困ってます」


「だから、?」


 ルーシャスは、俺に申し訳なさそうに言うんだ。


「最後のもうひとりの三賢人を決めて下さい」


「はぁ?」


 俺は、聞き直したね。そんな用件でラノベの世界に転移させる訳!?


 そりゃ、俺は、この世界の歴史を知っている。この春に足を骨折した時に、入院して間に母さんが持って来たラノベの世界だったもんな。

 光の神を崇める世界。そして、光の眷属や闇の眷族の魔族なんかがうようよいる魔法の世界。俺は、その世界の何故か伝説の勇者になってるんだ。


「知るかよ!! ああ、ルーシャスって、ルーシャス・リッヒ!? 君は将来、大賢人と呼ばれるようになるよ。分かるのはこれくらい」


「あの……それよりも……」


「うるさい!! こんな間抜けなことで寝込みを襲うなよ!! 俺は怒ってるんだぞ!! もう我慢の限界だ!! この世界の神と話をつけさせてもらう」


「神でしたら、神剣の間です」


「案内しろ」


 俺は、命令口調でどう見ても年上のルーシャスに神剣の間まで案内させた。


 頑丈な扉の向こうに、この世界の神に別の姿である【神剣】があった。


「ちょと~~!! 光りの神様起きてよ!!」


 神剣は、銀色の光を発して、人型になった。


 ルーシャスと同じ銀髪と銀色の瞳だ。

 何処となしか、彼に似ている部分もあった。


『何用か? 異世界の者よ』


「俺は、もう何度もここに来てるけど、面倒臭いし、朝に疲れが残るんだよ!! しかも俺が呼ばれるときは、何故か強い相手ばっかでよぉ!!」


『フム……だが、そなたは、この世界と繋がりが強いのだ。なにせこの世界の創造主は、そなたの母親故、息子のそなたは、ここの住人の願いが届きやすいのだろうな』


「え~~!? 母さんが作者!? 読者だと思ってたのに~~」


『それ故、そなたは選ばれし者なのだ。魔法の力は無双だし、光魔法も使えるぞ。後、われ使ことも許可しよう。そなたは、我の主ぞ』


 ルーシャスが、ひっくり返ってしまった。

 神剣が使えるってことかな? 俺は、構わずに言った。


「それから、どの時代に飛んでく分からないのも止めて欲しいものだな」


『これ以降は、そうしよう』


「間隔も空けてくれよ!!」


『50年に一度でどうだ?』


 俺は、満足して大きく頷いた。光の神と約束が取りつけたのだ。

 安心したら、急に眠くなってきた。

 あれ!? 今回の召喚はこれでおしまい? これじゃあ、俺が神様と取引するためだけに来たみたいじゃないか。




(完) 

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