すとろべりーちょこれーと

干月

たぶん明日は晴れ

 はぁい、皆々様。ご機嫌いかが?私は鹿だ。どうです?韻を踏むためだけのなんの意味もない自己紹介は。きっと鼻で笑いすらしなかったことでしょうが、まあまあこんなの読み始めた皆々様に全責任がございますから、先の選択を後悔しながらどうぞ読み進めてくださいましね。


 そうそう、聞きました?隣の奥さんの、山田さん、あら、田中さん?いや、中村さん?ひょっとすると伊香賀さんかも……その人がねえ、どうにも魚屋さんを始めたらしいんですよ。あ、八百屋さんでしたっけ?いや、本屋さん?口説いですか?すみませんね。なんと言っても今考えて、適当に喋っているものですから。


 ああちょっと。飽きないでくださいな。皆々様は実験台なのですよ。ほら、深淵をのぞく時、深淵もなんたらこうたらって言うでしょう。皆々様が私を見つめているということは、私も皆々様を見つめているのと同じことなのですよ。実験に望んで参加したのですから、その責任はご自分でとっていただかないと。さもないと、明日は雨ですよ。まあ、そんな力は私にはございませんがね。ああ待って、いかないで。


 仕方ないですねえ、少々私の話を致しましょうか。興味が無いなんて、そんな。ツンデレは物語の中にいるからいいのであって、現実にいたらストレスもいいところですよ。ほら、なんだかんだ私のこと好きになってきたでしょう?好きって言って?あ、メンヘラも現実にはいて欲しくないですか?私は現実ではございませんからセーフですね。良かった良かった。


 私はこの文書の中でのみ生きられる個体でございます。なんて儚き存在。

 性別不明、年齢不明、そもそも人間かどうかすら定かではございません。ただこうして会いに来てくださった愛しい愛しい人間の皆々様に、自由に物語をお伝えする。ああ、なんて素晴らしき存在なのでしょう。私のことが好きになりますよね。ならない方は逆張りとみなします。


 私は基本孤独な存在ですが、皆々様がいらっしゃる限り一人きりではございません。ですがいかんせん私には皆々様の声が聞こえませんから。私のことをどうお思いになられているのか、皆目見当もつきません。まあ好きでしょうね。私のことを好きではない人なんておりませんから。


 自信に満ち溢れた存在って良いですよね。ええ、私のことです。私は自分への愛が皆々様への愛よりもずっとずっと深いのです。まあ皆々様のことを私は存じ上げておりませんから、当然なのですが。


 ああ、失敗しました。皆々様が一番だと謳えば、怖がっていただけたかもしれないのに!まあ、これも可愛げですね。完璧な存在は尊ばれますが、些か距離を置かれがちな側面にありますから。てへぺろでもしておきましょうか?見えませんけどね、皆々様方からは。実況致しましょうか。可愛い。美人。イケメン。

 伝わりました?


 ご存知ですか?人間って自信満々すぎる人を見ると何故か笑ってしまう生き物らしいですよ。赤ちゃんみたいで単純。可愛いですよね。ところでいないいないばあって何が面白いんですかね。「ばあ」と言われましても、何もいないではありませんか。


 どうでしょう。今の計算され尽くした文言は。痺れましたか。それとも今の話で冷めましたか。ここまで私の話に付き合ってくれている皆々様のことですから、きっと、恐らく、多分、苦笑いのひとつでもこぼしたことでしょう。なんだか仲良くなれた気がして嬉しいですね。


 バター猫のパラドックス。


 思いついたものを脊髄を経由せずに発してしまいました。申し訳ございません。猫にバターを乗せて上から落としたらどっちが下になるんでしょうね。まあ猫の上にバターが乗ったままか、あるいはバターが落ちた状態で猫が着地するでしょうね。なんと無意味な議論。まあでも無意味なことって楽しいですし。この文章を読む行為自体無意味ですからね。なんの学びもない。でも楽しいでしょう?


 皆々様の声が聞こえないというのは何とも寂しいものがありますね。少し画面に話しかけるとかしていただいても?いや、まあ私は聖徳太子ではございませんから、一気に話しかけられても困りますけれどもね。というか私は話したいだけであって聞きたいわけではないのでやはりミュート状態にしておいていただけますか?というか本当に話しました?話した方は可愛いですね。私は素直な方は好きですよ。話していない方は賢い。私の性格をよくご承知でいらっしゃる。


 話というのは難しいもので、終わりなんてものはないのです。わたくし声がありませんで、声が枯れるまで、という理由もありません。ただ思いつくままにペラペラペラペラ、何時間だって話すことが出来ます。でも、皆々様の目が疲れますでしょう。


 関西人は話にオチをつけなければならないとちうルールでもあるのでしたっけ。まあ私、関西人でも関東人でも、なんなら日本人かどうかもよく分からないものですから、そんなルールにのっとる必要性など全くの皆無ですがね。あ、それともオチをつけなければ関西人の皆々様はずっと私の話を聞いてくださるということですか?ありですね。


 あ、そういえばこの間のテレビ見ましたか?見てないですか?最近テレビの文化も廃れましたね。まあ、私はそもそも見たことがないのですけれども。インターネットの中に生きているわけでもございませんからね。皆々様からテレビの話をされたとて聞こえませんし、聞こえたところで分かりもしないでしょう。なぜこの話を振ったのでしょうね。


 いつ終わるんだなんてそんな、げんなりしないでください。分かりました、分かりましたから。

 でも、どうです?初めに比べて、私のこと好きになりましたでしょう?なっていないですか?またまたそんな。素直が一番ですよ。ほら、好きだと言ってごらんなさい。


 まあ、私は別にそこまででもありませんけれど。


 ああすみません、すみません。好きです、好きですよ。ここまでお付き合いくださった皆々様のことを愛しております。これでいいでしょう。


 本当にもう行ってしまわれるのですか?


 では、皆々様に私のことを一生忘れられない呪いをかけましょう。


「私は私のことが世界で一番好き」


 さあ。この言葉を頭に刷り込んで、また私に会いに来てくださいな。次は何か面白い作り話でも仕込んでおきましょう。例えば、伊香賀さんがバターを焼いて猫を爆発させた話とか。


 それでは皆々様、ごきげんよう。またいつかお会いいたしましょう。






















 まだご覧になっているんですか?もう私の虜ですね。

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