真ノ女神転生

「ごちそうさまでした……」


「さて、これからどうしようかしら? まさかの憎きラノベ展開にムカついて、衝動的に女神を喰い殺しちゃったけど……」


「ここって、天界的な所なのよね……展開的に……」


「……」


「女神って、これ一匹だけなのかしら? 仲間とかいるのかしら? 逃げた方が良いかしら? でも……」


 七重は周囲を歩き回ってみた。


「精神と時の部屋……? 此処って、出口は無いのかしら? もしかして、私……ずっと此処に一人?」


「そういえば……女神が今の私は霊体だって言っていたわよね……」


「食べる事が出来たけど、霊体なら食べなくても生きていけるのかしら? もう死んでる訳だし……」


「なら……ずっと此処に一人でいても大丈夫かしら? でも……退屈そうね……」


「それに……霊体って、食べたら排泄はするのかしら?  もしそうなら……たくさん食べちゃったし、それは困るわね」


「此処にはトイレがない……野糞になるじゃない!」


「霊体はもう死なない……じゃあ、そのウンコもずっと新鮮なまま? きっと、ずっと臭いわね……」


「何処までも広がってはいるようだけど……この空間に……永遠に……産まれたてのウンコと二人っきり……」


「あらま! どうしましょ……」


「……」


 そんなくだらない事を考えていると突然! 七重の頭に強烈な痛みが走った。


「うっ……痛っ! 何っ!? ……これは! ……女神の……記憶……?」


『女神候補生666よ! 女神666は先日、永きに渡った役目を終えた……。彼女の記憶と力を引き継ぎ新たな女神として職務を遂行するのだ……』


 その瞬間、七重は脳裏を駆け巡った映像から、前任の女神の命が尽きた時、次なる女神候補者が、その死した肉体の一部を自らの身体に取り込むことによって、知識と力を吸収し、新たな女神となる事を知った。


「フフフッ……ハハハッ……アッハッハッハッハッ! これは……この力! そうなのね……こうすれば……」


 七重が、目の前に果てしなく広がる何も無い空間に手を伸ばすと、頭上にいくつもの異世界の映像とその下に其処へと続く真っ黒に渦巻くゲートが現れる。


「凄い! この力……私は……女神の力を手に入れたのね!」


「異世界……転生……どれもが生前の私が最も憎んだもの……女神の力=チート能力……それを今、私が手に入れた……」


「……このままここで退屈することになるかと思っていたけれど、そんな事はなさそうね」


「良いわ! 私の夢を……彼の夢を……邪魔し続けた異世界転生……」


「あなた達の大好きなチート能力で復讐してあげるわ!」


「異世界、エルフ……獣人……ドワーフ……ドラゴン……etc……勿論……人間も……」


「何だか……また……お腹が空いてきちゃった……」


「この力は新たな肉体を好きに創り出すことが出来るみたいね……」


「私は勿論……あの頃の……」


 そして七重は、十代の、彼と過ごした頃の美しい前世の肉体を取り戻し、異世界へと転生し降りたつ……。


「始めまして異世界……」


「そして、さようなら……」


「私が全てを喰い殺してあげる……」


「毒者の皆々様、お楽しみに……」





「あらっ……ゲートを潜ったらまさか誰もいない街道に出るなんて……」


 七重は女神の力を使い、脳内で現在地を中心に世界を天上の視点で見渡す。


「街は……? あら……結構……遠いのね……」


「転移も……空を飛ぶこともできるけれど……まぁ……この世界の隅々まで……ゆっくり旅を楽しみましょう……」


「少しお腹が空いてきたわ……」


「街まで数日はかかりそうだし……。まず食事と……歩いて旅するなら……常備食が欲しい所ね……」


「あらっ? あれは獣人?」


「犬の……メス……」


「テンプレコピペの異世界転生ラノベ中毒の低能で馬鹿な毒者共が求めてやまない、フワフワで可愛いらしいケモミミの美少女ちゃんね!」 


「フフフッ……あの子、良いわね……」


「七重、何だかあの子を見てると胸がムカムカする……アハッ!」


「それにお腹ペコペコ……メス……有りね……」





「もしもし、こんにちは、綺麗な犬のお嬢さん」


「あら、こんにちは……人間の……お嬢……さん?」


「犬のお嬢さんはどうして街から離れた、こんな誰もいない場所を一人で?」


「私はこの先の森の中で……理由ワケあって……街から離れて一人で暮らしているんです」


「あら……それは素敵ね……。それならば、犬のお嬢さん、一緒にお食事はどうかしら?」 


「えっ……?」


「スリープ……」

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KILL BY EATING LIGHT NOVELS〜異世界食葬〜 小桜八重 @kozakura-yae

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