降臨

女ノ神


「此処は……何処? 今……私は警官に頭を撃たれ……」


 七重は辺り一面まっ白な不思議な空間で、仰向けで目を覚ました。


 直ぐさまその手で額に触れる。

 

 其処にはあるはずの穴が無い、手に血の一滴も付いていない。


「おかしい……痛くない……」


 上体を起こすと同時に自分の身体が視界に入る。


「な!? は……裸!? 何故!?」


「霊体なのだから当然でしょう。目覚めましたか? 愚かな大罪人よ……」


 見知らぬ声に後ろへ振り返ると、其処には色白のたわわに実った二房の乳房を、露出の多い白いドレスで寄せて上げた、金髪で尻のデカい、態度もデカい美女が、床から数段高い位置に置かれた背の高い椅子に、足を組んで座っていた。


「なっ!? あなた! 何者!?」


「見て分からない? あなた確か……小説家じゃなくって? 地上ではこの場所や我々の事を、異世界転生ラノベとかいう幼稚で低俗なテンプレ、コピペの娯楽作品群の中で何度も創造で描いているでしょうに……」


「ラノベ? 此処は天界……的な? もしかしてあなた……女神……様?」


「あらっ! 正解よ! 此処は地上で特に良き行いをした後に召された者に、前世の魂そのままに、新たな肉体、特別な能力、異世界での幸せな人生を与え、大罪を犯した者には、魂を浄化し、人間以下の畜生としての新たな生を与える場所……」

 

 女神は立ち上がり七重の方へと歩み寄る。


「小梅七重、あなたは何人もの人間をその手にかけて殺した。それも……とてつもなくおぞましい方法で……」


 七重の目の前で立ち止まった女神は、床に座った状態で怖ず怖ずと彼女を見上げる七重の頭上に、蔑む様な目で見下ろしながら両手を伸ばす。


「なっ!? 何ですか……? 女神様……」


「今、言ったでしょ? あなたの魂を浄化し新たな生命へと転生させるのです」


「い……嫌よ! あなたみたいなテンプレ、コピペのゴミ同然な異世界転生ラノベの象徴みたいな存在に消されたくない! どうして!? 最期までこんな屈辱的な! 悔しい……!」


 七重は消えそうな小さな声で呟き、拳を握りしめ、怒りに全身を震わせながら女神を睨みつけた。


「あらっ、そんなに身体を震わせて、怯えなくても宜しくてよ? 何か言い残した事、弁明する事はありますか? あれば一応、最後に意見を述べる権利が与えられております。まぁ……今迄ただ一人として、それで裁きを逃れられた者はおりませんが……。私としては、さっさと仕事を済ませたいのですが、今日はあなたが最後ですので……」


「ふぁ〜……眠い……。むにゃむにゃ……」


 女神は両手を前に伸ばしたまま、上を向いて欠伸をし目を閉じた……。


「……………………ょっ! ………………がっ…………!!」


「はい……? 声が小さくて何を言っているのか聞こえませんでしたよ……?」


 そう言いながら、女神がウトウトと目を開くと、鼻と鼻が触れ合う程の距離に、七重の悪魔の様な怖ろしい顔があった!


「キャッ!!」


「隙だらけなんだよっ! このクソ野郎がっ!!」


 そう叫んだと同時に、七重は女神の喉笛に向かって目一杯に顎を開き飛びかかった!


 すぐさま、後ろに避けようとした女神だったが身体が動かない!


「動かない!! 何故っ?!」


 女神が目一杯に伸ばした両腕の間、懐に静かに入り込んだ七重は逃げようとする女神のその両腕を既に捕んでいた。


「しまっ……! た! ……ガフッ! ……ゴフッ!」


 女神の口の端からコボコボと血泡が立ち、七重の口内にピューピューと血が噴き出す。


「ヒューッ……ヒューッ……」


 空気が漏れるような音が鳴り、女神の美しい青い瞳から徐々に光が失われていく。


 徐々に顔から生気が失われ、最期には全身から力が抜けて、後ろ向きに倒れそうになる。

 

 七重は噛み付いたまま、一旦、両手を離し女神を抱き締めるように抱え直した。


 両腕に女神の全体重がのしかかり、重たい。


 もう既に、女神はこと切れているだろう。


 だが、相手は神を名乗った者である。


 念には念を入れて、七重はその後も血を飲み干すまで、喉笛を咥えて離さなかった。


「ゴキュッ……ゴキュッ……ゴキュッ……ゴキュッ……ゴキュッ……ゴキュッ……ゴキュッ……ゴキュッ……ゴキュッ……」


「ゴクン」


「…………」





(ボキッ……)


「硬っ……」


(グチッ……)


「そういえば……」


(クッチャ……)


「同性は……」


(メリッ……)


「初めてね……」


(ングッ……ハグッ……)


「やっぱり……」


(ムニッ……)


男性オスの……」


(ギチッ……)


「肉とは違って……」


(ミチッ……)


「柔らかいのね……」


(モッチャ……モッチャ……)


(スンスンッ……)


「それにしても……」


(クンクンッ……)


「いい匂い……」


(スーッ……ハーッ……)


「編集の……クソの肉は……」


(ガリッ……)


(ムチッ……)


「臭くて……」


(メリッ……)


「全て食べきるまでに……」


(ビチュッ……)


「においを消す為、調理しても、何日もかかった……」


(ジュルッ……ジュルルッ……)


(ンッ……ングッ…………ゴクンッ…………フーッ…………)


「いや……でも……これは人と呼べるのかしら……?」


(ペロッ……)


「神様……ね……」


(ツンツン……)


「胸……大きい……柔らかい……美味しそう……コレはデザート……」


(チラリ……)


「竿……付いてない……鮑……臭くない……此処もデザート……」


「女……神……」


(ブチッ……)


おんな……だから……やっぱり……同性……?」


(レロッ……)


オスよりも好きかも……初めてだけど……メスも有りね……」


(チュルッ……)


「神様も意外と……」


(ヌリュッ……)


「人間と変わらないのね……」


(ガリッ……)


「……骨が刺さった……」


「……」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る