ヒューマレッド計画

三分堂 旅人(さんぶんどう たびと)

ヒューマレッド計画

 21××年。

 「もうダメだ……」

 人類は止まらない人口増加に頭を抱えていた。

 食糧はどんどん底を尽き、飢餓に苦しむ人々の悲鳴があちこちで響く。加えて、衛生環境の悪化から伝染病までが広がり、街は荒れ放題だった。


 「このままじゃ滅びるぞ!」

 政府や科学者たちは緊急会議を開いた。名案がないかと頭をひねりにひねる日々。

 するとある日、ポツリと一人の科学者が呟いた。

 「……“ヒューマレッド計画”を実行するしかない」


 静寂を破るように、ざわざわと室内がざわめき始めた。

 「ヒューマレッド計画だと?」

 「あれか……あの、危険なやつ……?」

 まるで嵐の前触れのような緊張感が走る。


 その計画とは、一部の優秀な人類だけを残し、他の人類を去勢してクローン化し、強制的に人口増加を抑え込むという、とんでもない内容だったのだ。


 「でも、誰を残すんだ?」

 「そうだな……足の速い人類、ってのはどうだ?」

 またしても、ざわっ、と会議室に波が広がる。

 「足の速さ?」

 「うん。足が速い奴ってのは健康的だろ?健康なら、知恵も働きやすい。可能性が高いと思う」


 議論は1ヶ月続いた。どたばたと意見が飛び交い、机をバンバン叩く音が絶えない。

 そして、ついに決まった。「足の速い人類だけを残す」。


 世界中で選ばれたのは、足が速い男女10組だけ。他の人類は全員、去勢されてしまうことになった。選ばれた10組は、サラブレッドにちなみ「ヒューマレッド族」と名付けられた。


 「これで未来は明るい!」

 科学者たちの声が弾む。


 最初はその期待通りだった。

 ヒューマレッド族が築く新たな地球は、活気に満ち、これまでの時代とはまるで違う豊かな生活が営まれた。


 だが——。

 「おい、最近ヒューマレッドの記録が落ちてるって話、聞いたか?」

 「落ちてるどころじゃないぞ。もう前の世代より遅い」

 掛け合わせを繰り返すうちに、遺伝子が劣化し、足の速さが失われていったのだ。


 「やばいって!これじゃ……!」

 「足の遅い人類を混ぜれば……いや、それも無理か」

 ヒューマレッド族以外の人類は、すでに去勢されており、繁殖能力を失っている。


 「どうする、どうするんだ!」

 人々の焦りは募る。

 やがて地球に残ったのは、足が速いけれど繁殖力のないヒューマレッド族と、足が遅く繁殖力のある、かつての人類のクローンだった。


 「なんとかして、新しい答えを見つけないと……!」

 未来を切り開く鍵は、どこにあるのか。


終わり

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ヒューマレッド計画 三分堂 旅人(さんぶんどう たびと) @Sanbundou

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