第1話 一獲千金!目標はグラアビダンジョン攻略!(1)


「でさ、あたしに金貸して~ってお願いするために呼び出したってわけ?」



 体を半分机にうつぶせになって不満そうな顔でそう言ったのは一瞬で視線を奪う華やかさと親しみやすさを併せ持つ女性だった。長く艶やかな金髪は、光に反射して柔らかく輝き、毛先にゆるいウェーブがかかっている。その肌は陶器のように滑らかでありながら、健康的な生命感に満ちていた。不満そうな顔をしていても誰ども美人だというはずの猫顔の彼女 はアニー、 私の初めての依頼を解決してくれたことをきっかけに仲良くなった、このルカ特別地区を拠点として活動している冒険者だ。いい腕前ときれいな外見のおかげで大人気になった女だ。



「まさか私がそんなことを頼むと思うか?」



 私はそう言ったが彼女の表情はさっきと同じだった。頭の上の猫耳を後ろに寝かせて尻尾をフラフラしながら信用度ゼロの男を見るような目で。

 ま、さっきの話を聞いたらそうなるのだろうな



「私は依頼をしたくて呼んだんだ。」



 フラフラと動いている先っちょをピンク色に染めていない白い尻尾を見ながらそう言って私はビールジョッキに入ってる水を飲んだ。ようやく彼女の片耳がぴくっと動き顔の表情が変わった。何言いおうとするのだこいつ、って顔に。

 私は持って来た袋を見せた。中には今の全財産がほとんどが入っていたから結構な金額なはずだ。これを見てからまた彼女の顔が変わった。いつものプロの顔に。ピンと張り外に寝た耳を見ながら半分成功だな、と思った。



「へぇ、いいじゃん。それでどんな話?もしかして、新しいダンジョンの噂でも聞いた?で、誰と行くの?ヒューバート?エミリー?」

「行く人は今は私と君だけだ。もう一人、10レベルぐらいのレンジャー系の冒険者を連れて行く気だがな。」

「マジで?!それ、めっちゃ美味しい話じゃん!どこどこ?教えてよ!」



 そう言いながら私に体を近づけてきた彼女のせいでちょっと慌ててしまった。胸の谷間が一瞬目に入ったがそんなことは彼女に失礼だと思い顔を見ながら言いたかったことを早く口にした。



「新しいダンジョンではない。行くのは君も知っているあの「グランド・アビゲール・ダンジョンズ」だよ。」

「はぁ?グラアビ?あのデカいだけで全然稼げないダンジョンのこと?それで儲けるとかムリでしょ~?」



 彼女がそう言うのも無理ではない。そこはそういう仕組みで出来ているところだから



「確実に儲ける方法がある。」

「え、ホントに?…うーん……」



 彼女は悩み始めたがこれは私の思い通り受け入れてくれるはずだ。

 そう思った私は水を一気に飲…



「よし!決めた!断る!」



 もうとしたが予想出来なかった返事が来てしまい水を吹いてしまった。



「って、なによいきなり!」

「ご、ごめん。いや、それよりどう見ても今のはOKの流れだったろ!!!」

「いや、そうなんだけどさ~、ちゃんとその必ず儲かる方法ってやつが分からないとさ、納得できないじゃん?」



 それはそうだ。彼女はプロ、それも結構な腕前の冒険者だ。確実じゃない話には乗らない。



「言ってあげられるけどこれ聞いたら必ず仕事してもらうからな。」

「それが本当に絶対儲けられる方法なら、な!」

「....わかった。実はな....」



 周りに聞こえないように気を付けて言った後彼女の顔を見たらすごく驚いた顔になって耳を前にピンと立てていった。



「えぇーー!?それってマジでヤバいやつじゃん!!!」

「声が大きいよ!事実だから必ずだ!わかったな!」

「わかったわかった!でもさ、ホントにヤバイじゃんそれ!」



 がちを連発しているけどまぁ、彼女は信用できる人だ。誰かに言うことはしないだろう。一旦一人は完了したがまだもう一人が早くこればいいが、レンジャー系の冒険者を一人…



「貴方が依頼主か?」

「うん???」



 後ろを振り向いて見たらそこにはマントをかぶった小さい少女がいた。身長は150センチをちょっと超えるぐらいで小さく整った顔立ちは、彫像のような均整の取れた美しさを持ちながらも幼い感じが残っていた。マントから出ている銀髪は、月光をそのまま形にしたかのようで今まで手入れをうけてきたのがよく見えてきた。一方でちゃんと結んでいない靴の紐や最近汚れが付いたようなたびに似合わない服から旅に慣れていないのが目に見えていた。その手に持っているのは確かに私の出した依頼書だ。



「そうだ、ではこれでメンバーはそろったな。」

「はぁ!?ちょっとまてって!」



彼女を見て立ち上がろうとしていた私を見てセリーが叫んだ。その後は受付嬢のに行って何かを話して‘ついてこい‘というような身振りをしながらギルドの121番待合室に歩いて入った。私は後ろの少女に一回うなずいた。そうしたら彼女も一回うなずいて歩き始めた。なんともない表情を頑張って維持して。待合室の中ではセリーが尻尾をぶら下げて左右に振りながら待っていた。



「あたし、アンナ・ボネット。みんなからはアニーって呼ばれてる。よろしくね。」



私たちが入ったのを見てアニーは少女に挨拶した。私のことはガン無視して。



「私はセレナ。よろしく。」

「ありがとう。じゃあその依頼書をちょっと確認してもいい?」



セレナ、という名前の少女とアニーはあいさつした後握手をした後依頼書をもらって読んだ後私をにらみつけた。



「って、何よこの依頼書!内容もあやふや、条件もあやふや、確実なのは報酬だけでしょ!」

「い、いや。ギルドの依頼書の条件は全部満たしている。問題ないと確認ももらったんだぞ。」

「そんな問題じゃないでしょ!内容はグランド・アビゲール・ダンジョンズのルカ特別地区店を攻略。条件は総合レベル15以下で器用さ20,素早さ15以上のレンジャーって、戦略もルートも、ダンジョン攻略の経験や冒険者歴、何もないじゃん!」

「さ、作戦があるからそこはそこまで大事では…」

「大事に決まってるんでしょ!」

「いや、まずは話を聞いてくれ!!!」



私の言葉に一旦落ち着いたアニーは一歩下がって腕を組んた。



「セレナ、説明が足りなかったのを謝る。私はエイブ、今回のパーティーのリーダーだ。私たちはこれからグランド・アビゲール・ダンジョンズのルカ特別地区店を攻略する。そのために君は中で強敵の足を止めさせてもらう。」

「足止め?」

「ああ、正確に言えば膝や足に矢を打って止めさせたり目を当ててもらう。」

「わかった、その強敵とは?」

「ミノタウロスだ。レベルは30以上の」

「30…可能だ。殺すのはできないが」

「え、がち?即答できるぐらい」



アニーはびっくりして声を出してしまった。そして彼女が言わなかったら私だってそうだったんだろう



「疑っているようですまないがステータスを見せてもらえるか。」

「もちろんだ。」



軽々くそういった彼女は懐から金属カードを取り出して渡した。ギルドの冒険者カードで間違えない。書いている名前はセレナ・ルナリス・エバーハート。レベルは11。ステータスはHP107、MP38、力7,魔力5,体力9、器用さ24、素早さ19で相当いステータスだった。スキル認定のマークはついていなかったがこのカードの発行日は今日、きっと認定を受けていないだけでスキルの面でも優れているだろう。




「ありがとう。アニー、能力に関しては大丈夫だと確認できただろう?」

「そうだけどさぁ…」



アニーの心配していることは予想がつく。そこも話しておかなきゃアニーはOKを出してくれないみたいだ。



「セレナって、この町に来たばっかなんでしょ?」

「そうだが戦闘に関しても探索に関しても仕事はできると思う。」

「そうだけどさ…、ダンジョンってそんなに甘くないんだよ?てか、エルフ村ってダンジョンとかほとんど無いんじゃないの?」

「そうだけど…いや、私はわからないことだ」

「…」



まさかまだばれていないと思うのか、と一瞬思ったが初めて外の世界に出たエルフってこんなものかと思い説明しなきゃ、と思った。



「別に隠さないでいいと思う。この村ではエルフって見当たる。そんな隠している方が怪しいと思われるよ。」

「そう、なのか…」

「そしてギルドの冒険者カードに本名全部書いているよ。」

「なっ?!」



私の話を聞いた途端セレナは自分のカードを確認した。



「ま、冒険者カードの再編ってさ、お金払えば何回でもできるし!しかもさ、お金なくてもスキルの認定とか受ければやってくれるんだよね!」

「そ、そう!大丈夫だよ!」

「あ、ありがとう…」



最初の頑張って大人ぶっていた態度がはがれるぐらい大事なことだったのか、と思いながらも本当に大丈夫なのか、このパーティーと一瞬思ったがきっと大丈夫だ。攻略できる。たぶん。そう思いながらもちょっとだけ不安になっていた。

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金稼ぎはダンジョン・レーシング! 金築・ヨハン @atlach1225

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