左近寺レイラの社交辞令不要論
加賀倉 創作【書く精】
左近寺レイラの社交辞令不要論
——新卒入社から半年で早くも限界OL、
ある休日。
待ち合わせの、お世辞にもオシャレとは言えないカフェにて。
シュッとした後ろ姿で椅子に座る男に、レイラが声をかける。
レイラ「あの……デマ太郎(ユーザネームがそうらしい)さんですか?」
男が振り返る。
イケメン。黒髪短髪デコ全開。程よい地黒の肌。オフィスカジュアル的ジャケパンスタイル。おそらくシャツの下は細マッチョマン。いかにもコンサルタントらしき
イケコン「あ、そうです!
レイラ「はい! あ、もしかして、お待たせしちゃいましたかね?」
イケコン「いえ、僕もさっき来たところですよ」
とは言いつつもローテーブル上イケコン側には、既にブラックコーヒーの一杯。カップの底の白色が
レイラは、イケコンの向かいの椅子に座る。
レイラ「あ、予約、ありがとうございます」
イケコン「いえ、全然それくらい、気にしないでください」
それから……
会話はそこそこ弾んだ。
終始、レイラもイケコンも笑顔が絶えなかった。
マルチ商法まがいの話もなかった。
二時間経過し……
出間太郎「レイラ
二人は打ち解けているように見えた。
解散後、まっすぐ帰宅したレイラ。
お風呂へ直行。
ほどほどに上機嫌で、鼻歌混じりにシャワーを浴びる。
泡と桶にはった冷水とで、仮面が剥がされる。
全身さっぱりしたところでちょうど、イケメンコンサル出間太郎の顔が脳内にちらつく。
帰り際の、「近いうちに連絡しますね」という彼の言葉を思い出す。
お風呂を出て、せかせかと体を拭いて、ドライヤーもせずに全身に水滴をつけたまま洗面所をあとにする。
SNS依存で小指が変形した手が、スマホへ伸びる。
画面上、マッチングアプリ"シャベック"のアイコンがタップされるが……
レイラ「はぁあああああ!? ブロックされてるし!!!」
レイラは激怒した。
勢い余ってSNSに愚痴った。
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👩限界OLれいら@orzol0la・1分前
マジ最悪。今日マチアプでコンサルキザ男に会ったんだけど、会ったあと即ブロックされました! 何が「また会いたい」だよ! 何が「連絡します」だよ! あのさ、世の中には社交辞令っていうのがあるのは知ってるけど、「また会いましょう」とか「また連絡します」とか言うやつ……
↓続く
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👩限界OLれいら@orzol0la・50秒前
言うからには相手に
↓続く
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👩限界OLれいら@orzol0la・30秒前
こっちは「あいつ嘘つきやったんか!」とか、「嫌われたんかな、自信失うわ」とか思うし、そっちも悪い印象持たれるわけでしょ? 社交辞令言うメリットお互いになくない? 別れ際も適当に、「楽しかったですありがとうございました」でいいやん?
↓続く
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👩限界OLれいら@orzol0la・10秒前
さも次会うかのような思わせぶりなセリフいらんやん? まぁでもいいや、終わった話だし。てか最後の方「れいら
キッッッッショ!
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***
上司が、レイラに向かって、無言で直進。
上司は腕を組んで立ち止まる。
呆れた上司「左近寺さんあなた……SNSで他人の暴言吐いてたでしょ?」
冷や汗レイラ「えっ?」
呆れた上司「人事部長、新入社員のSNSは一年間は監視してるの、知らなかった? せめて
落ち込みレイラ「はい……すみません……」
***
再び休日。
左近寺レイラは、相変わらず"シャベック"に明け暮れていた。
左近
ともくん(くんづけである)「あ……はい、こちらこそ!」
左
ともくん(勘ちGUY)「あ……はい、ぜひ!」
解散。
レイラは、ともくんが見えなくなったところでボソリ。
「あー、ナシナシ。こいつはブロックだわ。話つまらんかったし。SNSに書くまでもないわ」
こうして……
宇宙にまた一人、
社交辞令モンスターが爆誕した。
〈〈〈社交辞令、要らん説〉〉〉
〈完〉
左近寺レイラの社交辞令不要論 加賀倉 創作【書く精】 @sousakukagakura
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