第2話 囲碁の約束

 深夜、街の片隅にある小さな公園。月明かりが薄く照らすベンチの上で、一人の男がじっと動かずに座っていた。彼の名前は佐藤。普段はただのサラリーマンだが、今夜ばかりは違った。


 数分後、背後から足音が近づく。佐藤は何も言わずに、手に持ったプーアル茶の入った小さなカップを静かに口に運んだ。目の前に立つのは、かつて彼の部下であった松本だった。松本は慎重に近づくと、ポケットから小さな黒い袋を取り出し、佐藤に差し出す。


「それが……」佐藤は袋を受け取ると、中身を確かめるように軽く振った。


「はい。指示通り、デッドドロップを使いました」松本は静かに答える。「でも、佐藤さん、これが最後です。もう後戻りはできません」


 佐藤は袋を開け、中から囲碁の石が出てきたのを見つけた。それはただの石ではない。暗号のような意味が込められている。佐藤はその石を手に取り、考え込む。


「これで、全てが終わるのか?」佐藤は呟いた。


 松本は黙って頷いた。



その瞬間、佐藤の携帯が鳴った。警察署からの連絡だった。何か大きな事件が発生したらしく、彼の名前が取り上げられていた。松本が言った通り、この一連の取引が、彼を警察に追い込むことになるのかもしれない。


---


 数時間後、佐藤は警察署に出向いた。犯行が行われた現場で、彼は障害者の証言を受け取っていた。障害を持った証人が証言をしており、事件の真相を明かすためにはその証言を無視できなかった。


 その証人が、実は松本と関わりが深いことを佐藤は知っていた。松本は、障害者を使って自分の犯罪を隠蔽しようとしていたのだ。佐藤は、その証言を警察署に届けるべきか、それとも松本との約束を守るべきか、悩み始めた。


 数時間後、佐藤は松本と再び会った。松本の表情は硬かった。


「佐藤さん、謝っておくべきです。あなたが関わっている事件は、私だけでなく、あなたの将来をも危険に晒している」


 佐藤は深いため息をつきながら、松本に向き直った。


「でも、もう後戻りできない。囲碁の石が示す通り、最後に勝つのは誰だろうか」


 佐藤はその言葉を最後に、松本の前から立ち去った。彼が選んだのは、謝罪ではなく、新たな戦いだった。


 佐藤はその後、警察署に出頭し、全てを告白した。松本との関係も明かし、過去の過ちを償うことを決意した。囲碁の石が示していたのは、勝者ではなく、最終的に選ぶべき道だったのだ。


 街の片隅では、佐藤が持っていたプーアル茶のカップが、まだ温かいまま残されていた。



---


以上が、指定された要素を組み合わせた短編の一例です。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

デッド🔫ドロップス 鷹山トシキ @1982

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る