初めてのケリーちゃん

うさ田ケリー

第1話 どういう感情?

私とダンナは結婚して17年になる

付き合っていた頃から含めると25年の付き合いだ


ラブラブ期なんかは思い返せないくらい遥か昔の話で、なんなら付き合っていた期間が長すぎたのか、結婚当初から新婚さんの雰囲気は皆無だった


ダンナは付き合い出した当初から、私が15歳年下と言う事や元々のプライドの高さもあってか、あまり私にベタベタした態度は取らない

私は私で甘え下手で、男性が可愛いと思うような女性にはなれなかった

本音でぶつかり合うような事はなく、何と言うか薄い壁が常にある夫婦なのだ(何故結婚したのだろうかと今でも不思議に思うことがある)


数年前は些細な事から1年くらい口をきかない期間があって、いよいよ離婚も考えたりした時期もあった

が、特段真剣に話し合いをした訳でもないが、お互い自分の中で無理矢理納得させる形で今も夫婦関係は続いている

ただそれがきっかけで、私は何か吹っ切れたというか相手には何も求めず自分の心地良い過ごし方を重視して生活するようになった

すると不思議なことに何となくダンナも柔和になってきて、今も壁はあるものの穏やかに生活している


ある日、ダンナが友人たちと久しぶりに飲みに行った

普段仕事の時間帯が夜なので友人たちとは飲みに行く時間が合わせられず、今回久しぶりの参加になった

私はその間思う存分にお酒を飲み、スマホを見たり漫画を読んだり1人時間を堪能していた


あっという間に夜中1時を過ぎ、ダンナが帰宅した

とても楽しかったようで、ご機嫌でリビングに入ってきて私の顔を見ると

『ただいま、ケリー!』

と言った


私は固まった

『ちゃん』・・!?

普段私を『ケリー』、もしくは『お前』と呼ぶダンナが『ちゃん』呼び!

たぶん大多数の方が、それが何?って感じだと思うのだが(ダンナもそんな深く考えず発している)、私にとってはビックリ仰天の出来事だった


は、初めてそんな呼ばれ方したぞ!?


ただ『ちゃん』呼びされただけなのに、妙に心がザワついた

この感情は一体なんですのん?

嬉しい!とか気持ち悪い!とかそんな感情じゃない

ただただザワザワしたのだ


25年も付き合っていればだいたい考えていることもわかるし、このシチュエーションならこう言うだろうとか、ダンナが少し目線を動かせば何を探しているのかだいたいわかる

何となくもう全てわかっているような気が勝手にしていたが、まだ『初めて』のことってあるんだ・・という驚き


付き合いの長い夫婦であっても、探せば新たな一面というのは実はものすごくたくさん隠れているのかもしれない

勝手にダンナはこんな人!と決めつけているが、薄い壁に穴を開けて覗いてみれば、私の知らないダンナがそこにいてるのかも・・


ただの『ちゃん』呼びから予想外に深く考えてしまったが、結局あのザワつきはどういう感情なのかやっぱりわからない


                《完》




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初めてのケリーちゃん うさ田ケリー @shan-naka

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