色廻世界

@mudaai

第1話師匠のバカヤロー!

―――ボッッッゴォォォン!!!


・・・どうしよう

後ろから先ほどわたしが飛び越えた大岩が壊れる音がする。


どうにかして逃げようにもそもそもこの乗り物は私が動かしているわけではない。

速度は拮抗してるので、このまま相手が諦めてくれるとばいいのだが、あんなことがあって簡単に諦めるとは思えない。


となるとかなりまずい・・・主に私の命が。


ふぅ、とりあえず、落ち着こう。うん。まず、なぜ私がこんな目にあっているのかを思い出そう。




―――

――――――

―――――――――



私こと、イリシア・ブリスドムライブは師匠によると、孤児だそうだ。


ある日、森の中で捨てられていた私のことを師匠が拾って育てたという・・・まぁ、師匠の言うことなので、一切信用してないが。


個人的には師匠が怒って、どっかの組織かなにかを潰して、その時そこにいた私を攫ったとかそういう感じの秘密があると予想している。


師匠は黒い瞳に黒い髪を持った男性で、基本的には怠惰で嘘つき、その上気分屋で自分勝手な人だ。ただ、ある程度の責任はあるようで、私のことは、放置などをせずにしっかりと面倒を見ていてくれたそうだ。


実際、物心がつく前から弟子としての育成を始めたり(本人談。実際実感があったので信じている。)、私が熱を出したとき薬を調合したりとしてくれたりした。


その他にも、この世界のことを教えるために、師匠が大切にしている書斎に入るための鍵や、書斎には少ない童話や英雄譚などの本、かわいいクマやネコの人形などをわざわざ私のために作ったり、買ったりしてくれた。


書斎に関しては、私が教えてもらえる程度のものですら、「自分以外が入ったら計89の呪いと毒を与えたうえで、異空間に飛ばし、師匠が作った魔法生物とトラップの実験台になる」とかいう、悍ましい内容の罠が、幾重にも仕掛けられているほど大切にしているにも関わらずだ。


今あげたこと以外にもいろんな事をしてくれているし、育ててもらった事は確かなので師匠のことは嫌いではない。というかなれない。


だけれども、先ほど上げたように、師匠は基本的に(本によると)一般的に「くず」と言われる人種だ。


家事などは魔法で疑似的に不老不死だからと一切しない。おなかとかは普通にすく癖に。

・・・以後は私が師匠の身の回りの世話をすることになった。


それだけでない。この人は弟子として扱う割には「魔力を鍛えている」としか説明せず、簡単な魔法すら、いや、魔法の知識すら教えない。基本的に言うことは6割が嘘。本を探してくるのはいいが、事前に何も言わない。せっかく作ったご飯を食べている途中で何か思いつきどこかへ消える(文字通り)。などなど上げれば限がないほどだ。


そして、今朝、師匠は思い出したかのように突然言う。


「あ、そうだ。シア、今日から君には魔法学校に通ってもらう。喜ぶといい、ここで学べば君念願の魔法が使えるようになるだろう。」


、、、と。


私が何かを言う前に師匠は、


「荷物とか、移動手段とかはこっちで用意しておいたから。」

「あ、やべ。そういえば、■■に『あなたの弟子と入学前に話したい』って言われていたな。」

「ふむ、仕方あるまい本来転移門ゲートまで3日間の予定だったが今日中に着くようにしよう。」


と立て続けに言い、「選別だ」と言いながら師匠の杖となにか白いローブ?らしきもと共に私を師匠が作ったであろう魔法生物の騎乗部分に投げ入れた。


そしてそのまま、「元気でな」と一方的に別れの挨拶をし、そして私は目の前が真っ暗になった。


―――ドゴッッッ!バキィッ!

という音とともに目を覚ます。おそらくあまりの急加速に気を失ったのかとはじめは考えたりしていたのだが、それよりもと、この音は何だと探ると



・・・そこには


「待てやァアアアアア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!こぉうんの!くそ魔獣!!!」


、と怒鳴りながら光る鳥に乗ったらしき男が追いかけてきていた

―――――その手に、恐らく大切にしていただろう、折れた綺麗な剣を持って。


せめてもの救いはこれが魔獣だと勘違いされ、魔法使い(の弟子)が乗っているとばれていないことだ。


この世界には魔法、魔術で栄えた国と契約術で栄えた国があった。詳しいことは省くが、魔法、魔術で栄えた国――通称魔導国は亡びた。


そして、魔法使い達と契約者たちとの勢力差が開き、その力を契約術で栄えた国――獣王国テイミシアは欲した。もう数千年も前のことで、多くの人は眉唾な噂のような扱いで気にしないが、国の上層部などは違う。


そのため、それっぽい人や物を連れてくるだけで報酬を出す依頼が常に何でも屋と開拓、探索の役割を果たす故に見つけやすい冒険者に出ているのだ。


私が魔法関係だとばれたら、あの冒険者に私はとらえられるだろう。


―――なぜかというと今も攻撃されているからだ。


師匠が作ったこの魔法生物が死ぬことはないだろうが契約獣であろうあの光る鳥から出てくる攻撃事態は届いているのだ。


師匠がはたから見てばれない様にしているだろうから今は大丈夫だがばれたらおしまいなわけだ。


例えばれなかったとしたも今機動力を削ぐため足に向かっている攻撃があの冒険者の狙いがずれて私にあたっても即死だ。


魔法生物はそんなことは気にするはずもなく、ただ愚直に役割を全うすべく目的地へ向けて進んでいく。


要約すると、冒険者に追われている。見つかる、もしくは攻撃が私に当たったら終わり。今はという状況なわけだ。


―――――――――

――――――

―――

はい、回想は終わり。

・・・これ、全部師匠のせいだよね?


ふと、目の前を見ると何かの裂け目のようなものがあった。というか突然できた。

・・・そういえば、師匠、とか言ってたよね?


この先ってどうなってるんだろう?


――――決まってる、何らかの建物か部屋だ。そこにこの速度で突っ込むと?


ーーーーーーーーーーーっすぅ


「師匠の!!!ばかぁぁぁぁぁぁああぁぁあぁぁぁああああ!!!!!!!!!!」






――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

師匠side


いつも通り書斎で本を読みながらシアについて考える。


反応が面白くてなんの説明もなしに送り出したが、せめてシアに防御魔法をかけたことくらいは教えておくべきだっただろう。


あの子は、俺がとある施設から連れ出した子だ。当時のシアは4歳。丁度物心がつき始めるころだ。あの子が魔力をあんな年で認知できたのは、才能があったのもそうだが、施設での実験のせいだ。


今はシアに記憶の封印がかかっているが、その記憶を乗り越える土台ができたら少しづつ緩んでいくようになっている。


ヴィラ■■――学長がいるから、大丈夫だろうが少し心配だ。何せ、魔法使いや魔法司、魔術師のやつらは大抵の場合最低な奴だ。まぁ、祖先が国を置いて逃げ出したやつらという時点でお察しだろう。


シアは昔街に連れて行った時に気付いたが、恐らく施設での経験のせいだろう。俺以外のやつ――というより、信頼できないやつに対して、無意識に「仮面」を作っている。


これもある種の才能だ意図的に別人格を作りだし、その人格に喋らせている。なぜ演じるという形にならなかったのかは恐らく嘘だとばれないようにするためだろう。


何せ、その別人格仮面にとっては本当のことだからな。


まぁ、少なくとも"シア"に友達はしばらくできないだろうな。


――――あぁ、本当に自分が嫌になるシアが苦しむことよりずっとが大事なのだなと痛感する。今あがった問題、すべて俺なら片手間でなんとかできる。


でも、使と思う


俺がそうしようと思えば、のに、何もしない。

取り返しのつかないことなんてのにもう遅いと、いつだって嘘をつく自分に、嫌気がさす。

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