ダンス・ダンス・デッドダンス
我那覇キヨ
ダンス・ダンス・デッドダンス
デッドダンスがSwitchOnlineで遊べると聞いた時は驚いた。何かの間違いじゃないかとさえ思った。
要するにニンテンドーSwitchを持ってる大多数の人が、あのデッドダンスで遊べるということだからだ。
デッドダンスは1993年の3月にスーパーファミコンで発売された格闘ゲームだ。参考までに他のゲームの発売日を書くと、格闘ゲームのブームを作り出したストリートファイターⅡのスーパーファミコン版は1992年4月発売、ストリートファイターⅡTURBOは1993年7月発売となっている。
要するにストⅡのブーム以降、TURBOの発売までの間に、ストⅡに飽きてちょっと違う格闘ゲームやってみようかなって考えたガキが掴んじまったゲームが、このデッドダンスだ。
掴んじまった、って表現でわかる通り、デッドダンスはあんまりいいゲームじゃない。選べるキャラクターはたった4人。ストⅡの8人よりずっと少ない。
そしてこの4人のうち、翔(よくある主人公顔)とザジ(黒人のハゲ)はまったく同じ性能なのだ。ストⅡだってリュウとケンが同じ性能だったが、それは8人のうち2人が同じってだけだ。4人しかいないキャラクターで、うち2人が同じ性能って……
他にもまだまだ不満点はいっぱいある。
選べるキャラクターのヴォルツはプロレスラーらしく投げ技が豊富だ。豊富すぎて弱攻撃にも投げ技が割り振ってある。まだ格闘ゲームの歴史が浅かった頃、投げ技は近距離で十字キーを相手方向に入れながら大攻撃を押すことで発動する。相手がジャンプで空中に逃げたりと投げられない状況だったら、ボタンに合わせた打撃が出る。
これがその頃の格闘ゲームの投げのルールだ。
ヴォルツは弱攻撃にも投げが割り当ててあるため、近距離に入ったら十字キーを相手方向に入れながら弱キックを押すと、相手が投げられる状況なら投げ、ジャンプしてたら弱キックが出て空中の相手に当たる。
とまぁ要するに弱キックボタン押してるだけで相手に勝てるキャラなのだ、ヴォルツは。
当然、やられた相手は次の試合で同じことをやり返そうと、ヴォルツを選ぼうとする。ここでコントローラーが1Pならよいが、2Pだと1Pがキャラを選んでから自分のキャラを選ぶことになる。無情にも同じキャラを選ぶことはシステム的にできないため、1Pに先にヴォルツを選ばれていたらもうヴォルツを選ぶことはできない。
もうこの時点で小学生の頃の我々はケンカ寸前である。なんとか交渉でヴォルツを譲ってもらい、やり返すと相手もヴォルツの投げはどうしようもない。ギャハハとひとしきり遊んだところでめでたくヴォルツは使用禁止キャラとなる。
遊ぶのにもルールが必要なのだ。
昔のゲームの悪口ばかりで紙面を埋めるのも心苦しいのでこのゲーム最大の特徴について語っておこう。
デッドダンスには後の格闘ゲームにも搭載されなかった唯一無二の特徴的な機能がある。
このゲームでは勝敗が決した時、決着の瞬間のリプレイ機能がある。
最後の攻撃がヒットする少し前の時間から、Lボタンで巻き戻し、Rボタンでリプレイ再生、ABXYボタンでコマ送りといった具合に決着の瞬間を振り返ることができるのだ。リプレイ操作は勝者側コントローラ。
自由にリプレイをいじれる&小学生がいじるため、極端な編集が行われる。
実際の試合では、相手が繰り出したキックを紙一重でかわし、右ストレートで一撃! といったリプレイなのだが、これが以下のようになる。
相手が繰り出したキックを紙一重でかわし
(巻き戻して再生)かわし
(巻き戻して再生)かわし
(巻き戻して再生)かわし
右ストレートで一撃
(巻き戻して再生)一撃
(巻き戻して再生)一撃
(巻き戻して再生)一撃
(巻き戻してコマ送り連打でスロー再生)一撃イィィ! のような映像を強制的に敗者に見せるという所業が行われるのだ。
しかも横に座る小学生の煽り実況付きで。
なお、リプレイを終えることができるのは勝者側コントローラのみ。
敗者は己れのデッドダンスをご覧くださいというわけだ。
後の格闘ゲームで、この操作できるリプレイ機能が搭載されなかったのはおそらくデッドダンスの功績(功罪?)によるところが多いのだろうと思っている。
こういう、わざわざ人に語るまでもない思い出がソフトの数、遊んだ数だけあって、それがふとしたきっかけで蘇って、俺はちょっとハッピーになる。
この話を読んだ人がSwitchを持ってたらスーパーファミコンNintendo Switch Onlineでデッドダンス遊んでくれたらもっと嬉しい。
ひでぇゲームだよ。
でも、一回でいいから勝者になってリプレイを体験してみて欲しい。
ちょっとハッピーになると思うから。
大人になった今なら、負ける側だって楽しいしな。
ダンス・ダンス・デッドダンス 我那覇キヨ @waganahakiyo
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