こんなこと、ある!?

「「誰よこの女!!」」


 なんか、美女sのイメージが崩れる言葉を聞いた気がする。おそらく、寒さからくる幻聴だろう。


「あの、あの。この女の方はどなたですか?」


 可憐美女が俺の腕に縋り付きながら聞いてくる。なんかいろいろ当たってる。すごい。


「そなた、この女とはどのような関係じゃ?」


 そして、勝気美女が目と鼻の先に迫っている。とてもいい匂いがする。すごい。


「えっと、二人ともこの吹雪の中で遭難していて」

「「そんなわけ、ない!!」」


 息ぴったりで相手のことを否定する美女二人。


「こんな吹雪の日に外を歩くなんて馬鹿のすることじゃ!」


 いや、あなたも歩いてきていましたよね。


「そうです!きっと怪しい商品を売りつけに来たんですよ!」


 いや、あなたも歩いてきてましたけど。


「それに、こんな小娘がお主を満足させられるとは到底思えんがの」

「なっ、なにを言い出すんですか!」


 小悪魔的笑みを浮かべる勝気美女。赤面する可憐美女。どちらも、とんでもなくかわいい。そして近い。


「わ、わたしをそんじょそこらの小娘と同じだと思わないでください!」

「ほう、貴様のような小娘になにができると?」


 そう言うと可憐美女は俺から一歩離れた。離された腕が少しだけ寒い。もう少しだけくっ付いていてはくれなかったのだろうか。


「私は羽で暖められます!」


 ばさばさと白い羽が舞う。美女の手が鳥の羽になっているのは俺の幻覚だろうか。しかしその顔は完全なるドヤ顔。可憐かわいい。


「わらわは雪や氷を操れるが?」


 室内なのに吹雪き始める。歯がガチガチ鳴ってきたのは俺の気のせいだろうか。こちらも自慢げな表情だ。美貌が眩しい。


「「むむむ」」


 にらみ合う美女二人。部屋を舞う羽と氷。急激に悪くなっていく視界。


 そして次の瞬間、ゴウッと音がして家が崩れた。灰色の空がよく見える。美女たちは相変わらず両隣で言い合いを続けている。


 ──こんなこと、ある?


 おもわず、空を仰いだ。水瓶が足元に転がった。

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吹雪の日に家に籠っていたら、超絶美女が二人我が家に訪ねてきたんだが 先崎 咲 @saki_03

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