地に足がついてくれない
氷雨ハレ
地に足がついてくれない
私が先輩の足が無くなっているという事実に気付いたのは、あの日から三ヶ月経った頃だった。
「いやー、期末テスト終了のお知らせ。次のテストに期待って感じかな」
「先輩、そんなにヤバいんですか?」
「まぁね。聞いてくれよー。国語の文章題さぁ。俺、全て理解したんよ。終了一分前に」
「それ、ダメじゃないですか」
「うん。詰みだよ。————あーおわたぁー」
先輩は変な人だ。周りの人は先輩のことを狂人呼ばわりしている。私も、少しそう思っている。と言うのも、先輩は常におどけていて、突拍子もなく変なことを言う。現に今、先輩はさっきのテストの失敗談を面白おかしく語っていた。
「しっかし、部活をサボるとは。きののんもなかなかの悪のよ〜」
「先輩がそれ言いますか? 同罪のような気がしますが」
「いいや違うね! きののんと違って、俺にはテスト後ゆっくり寝るという任務がある。人間の三大欲求と部活、大切なのがどっちかは言うまでもないだろう。いや、きののんも三大欲求に入るか……」
「は、はぁ」
「全く羨ましいなぁ。代わってくれないかね……」
先輩はいつもこんな調子だ。どこまでもおかしく、そして喧しい。これがずっと続くと思っていた。この日までは。
「あ、青信号。先輩、早くしないと変わっちゃいますよ」
少し急ぎ足になって信号に向かう。渡り始めると信号が点滅し始めた。「先輩、赤になっちゃいますよ」と言おうとして、体を回し、振り返ろうとする。そこで私は、今自分に迫っている車をようやく認識した。そしてその瞬間、私は横から突き飛ばされ、対向車線に転んだ。時が止まったような、そんな感じがした。
「先輩……?」
世界の時が動き始めて、音が戻る。遠くで車が何かにぶつかって、そして止まったような音がしても、私の目線はそれを見ることはなかった。私は目の前の、地面に倒れ込んだ先輩を見ていた。
「せ、先輩! 先輩!」
「……き、救急車…………しくった…………」
「救急車呼びます! えぇっと、ぁあ、先輩、あ、足ですか、怪我をしたのは」
「……ぁあ、そう……だよ…………足が……伸びて……美脚になっ……ちゃう…………八頭身も……夢じゃない…………」
「先輩! こんな時に!」
先輩はいつだってジョークを言う。自分が轢かれているのにそんなこと言うなんて凄い程の狂人だねと周りの人は言うだろうが、後になって考えてみると、先輩なりの優しさだったんじゃないかって、そう思えてきた。
程なくして救急車は到着し、先輩は運ばれていった。私はそれに同行しようとしたけれど、先輩が「事故の詳細は俺が説明できるから任せな。きののんは学校に戻って連絡をよろしく」といった感じのことを言っていたので、おとなしくそれに従うことにした。
先輩が来なくなってすぐの学校では、先輩に関する憶測が流れた。最初の方は「学校退学になった説」とか「早めのバカンス楽しんでる説」が流れ、事故に遭ったのが広まってからは「日頃からの不注意のせいだ」とか「神に嫌われてるなぁ。残念ながら当然」などと言われていた。日頃からの先輩の言動を鑑みると、当然と言えば当然であったが、だからこそ私を庇って事故に遭ったという真実を、私の口から発する機会は、永遠に失われてしまったように感じられた。
二、三日経つと、先輩はSNSで無事を報告した。「お前らより先に夏休み貰ってすまない」とか「病院食は健康的ですよねくそぼけ」などと言っている様子は、いつもの先輩の言動そのものだった。私は頃合いを見計らって、先輩のお見舞いに行きました。私が病室に入り「先輩、来ました」と言うと、奥から布の擦れる音がして、先輩がそこにいることが分かった。
「あれ、きののんじゃん。元気〜?」
先輩はいつものように見えた。胡座をかいて、笑顔で手を振っている。私は先輩の顔を見ると、何かに取り憑かれたのように、突然頭を下げて「ごめんなさい」と言った。先輩は「え、いやいや、とりま頭上げて」と言った。
「別に俺は気にしてないよ。時間が経てば何とかなるんでね。————木乃が無事でよかった」
「でも————」
そう私が言おうとした時、後ろの扉が開き、看護師さんが入ってきて、先輩の診察が少し経ったら始まることを伝えた。
「あ、じゃあ私帰りますね」
「わざわざ来てくれてありがとなー。新学期で会おうな」
「絶対ですよ! ちゃんと治してくださいね」
病室の外に出て、立ち止まり、先輩のことを考えた。先輩は強い人だ。事故の後でも元気に振る舞っていた。そして、私のことを無条件で許してくれた。
「いっそのこと、糾弾してくれた方が良かったのに」
扉の前で、先輩に聞かれないくらいに、静かにぼやいた。
夏休みの間も、新学期が始まっても、文化祭が終わっても、先輩は学校に来なかった。九月の初め、文化祭が終わった後の振替休日の日、私はもう一度お見舞いに行った。「先輩、また来ました」と言って病室に入った。先輩は窓の側で車椅子に乗って”立っていた”。
「せ、先輩! 何やってるんですか!」
すると先輩は振り向き、私のことを見ると、窓の側に置いてあった紙を手に取り、車椅子に座った。周りを見ると、以前来た時と同じような部屋の印象で、先輩の持ち物と言えば、ベッド脇のバッグ一つとカゴに入った紙袋だけであるかのように思われた。
「やぁ、来てたんだ。久しぶり」
「先輩、足は大丈夫なんですか?」
「ああ、足ね。まぁ、大体良くなってきたよ。後少し経てば学校にも行けそうかな」
「退院ですか。おめでとうございます」
「でもなぁ、もっとゆっくりしたかったなぁ〜。モラトリアム満喫したかったなぁ〜」
先輩は先輩だった。こんな時にもおどけて、私を笑わせる。先輩とはそういう人だ。
「ここの生活はいいよ。好きなだけ寝られるからね。薬も一回でいいし。ご飯が美味しくないところを除けば完璧かな。————あーあ、フルーツが食べたいよ。もうカゴの中にはこの……パロ……なんちゃらしか残ってない」
「は、はぁ。そうですか。その……パロキセチンとやらの説明は読んだんですか?」
「うーん、聞いたけどね。忘れた。ほら、俺、ゲームのチュートリアルとか飛ばす性質の人だし。まぁ、痛み止めとかじゃない?」
「それ、ダメじゃないですか。————あ、先輩」
そう言って私はバッグから新聞紙を取り出した。
「この前言いそびれてしまったんですけど、あの事故が新聞の一面を飾ったんですよ」
「なになに? こんな事故をフィーチャーするなんて、新聞社も暇なのかな?」
『高校生轢かれる 運転手死亡』
「……えぇっと、『酒気帯び運転の車が時速100kmで横断歩道に進入、その場に居合わせた高校生一人をはね、電柱と衝突し、その衝撃によって運転手が死亡』か。はぁ、羨ましい限りで」
「どうして羨ましいんですか?」
「え? まぁ……なんだ……簡単に言うと責任逃れみたいなもんだからな。残った人のことを考えない最悪の行為だ……だから、だな」
「?」
結局、先輩の言いたいことはよく分からなかった。その後も先輩とは色々なことを話した。夏休みの間にあったこと、文化祭の思い出、誰がどんなことをして、どんな事件が起きたか話をした。
「高田部長に彼女さんが出来たそうですよ」
「まじかぁ〜部長もかぁ〜」
「実在しないらしいですが……」
「んぇ? どういうこと?」
「さぁ、私もさっぱりで、詳しくは高田部長に訊かないと分からないですね……」
「そかー、後で高田に訊くか。お前も気をつけろよ。大丈夫か? お前のは実在してるよな?」
「してますよ! 文化祭も一緒に巡ったんですから」
「なら良し。大切にしろよ〜」
「分かってますよー」
私たちが談笑をしていると医者がやってきた。
「工藤君、君はもうすぐ退院になる運びだが————おっとすまない。客人が居たようだ。悪いが工藤君とサシで話したい。今日の日はここらでお開きにしてもらえないかね」
「はい。分かりました。先輩、学校で会いましょう」
「うん、ばいばーい」
私は病室を出て、少し止まった。先程までの談笑を振り返った。私の思い出は、全部先輩が体験する予定だったものだった。それを私が奪って、見せつけるように語った。私は……嫌な人ではないのかと、そう思った。思えてしまった。
「ねぇ、聞きたいことがあるんだけど。二つ」
『どうしたの若葉』
『何でも言って』
「じゃあ一つ目ね。私、嫌な人かもしれない」
『どうしたの? 何かやっちゃった?』
「うん、先輩にね、よくないこと言ったの。先輩の気持ちを考えずに」
『先輩? 先輩って?』
「工藤先輩だよ。ほら、私と同じ部活の」
『あー知ってる。噂をよく聞くよ。最近は————あんまり話を聞かないけど』
「その先輩が最近入院しているのに、私は外の楽しかったこととか話しちゃって、その、」
『あーなるほどね。先輩が外に出られないことを馬鹿にしてしまったかもしれないと思ってるんだ』
「うん。そういうこと」
『なぁに、気にしない気にしない。心配事のほとんどは起こらないんだし、それにその先輩が助けたくてやったことの結果なら本望じゃない?』
「それは……そうなのかな…………」
『そうだよ。きっとそうだ』
「……うん、ありがと。楽になった」
『……あれ? もう一つは?』
「あ、そうだった。ねぇ、ナオ君は実在するの?」
『俺? え? いや、実在するけど……先輩に毒された?』
九月の半ば、先輩は突然学校に戻ってきた。先輩はまだ足が治っていないようで、松葉杖と一緒だった。
「先輩、手伝いましょうか?」
「ん? いや、大丈夫大丈夫」
「そう、ですか」
「……何かあった?」
「いえ、何も。先輩こそ足大丈夫ですか?」
「……まぁ、大丈夫だと思うよ。あとは時間が解決するって感じかな」
「そうですか。なら良かったです」
階段を降りると広い廊下に貼られた鏡の前でオタ芸をやってる部員がいた。
「お、やってるやってる。確かきののんもやるんだったか」
「そうですね。まだまだ未熟ですが。先輩は——」
そう言いかけて止まった。「先輩は」の後に続く言葉を想像して、はっとした。
「どうかしたの?」
「いえ、何でも。練習行ってきます」
「おーいってら」
先輩はあの集まりに混ざれない。簡単な話、足を怪我した状態で運動をすることは医者に止められているだろうし、そもそも能力的に出来ないだろう。なのに私は、また同じ過ちを……
「私って、ほんとバカ」
脱力に身を任せ、ベッドの上で呟く。LINEを見るとナオ君からメッセージが来ていた。
『あんまり罪悪感を意識しすぎるとよくないよ』
『テスト後のお出掛けで行く予定だったあそこ、今度、気分転換に行かない?』
「はぁ」
ナオ君の気遣いも今だけは毒だった。私は何をしても何をしてもらっても、心のどこかにある鬱屈な気持ちを追い払うことができなかった。
十月の半ば、その日は突然訪れた。私がたまたま廊下を歩いていた時、部活の顧問の先生と先輩が話しているのを、壁越しに聞いてしまった。
「——まぁ、うだつの上がらない感じですね。実力に乏しく、大会にも出ないという状況です」
「後者は関係なくないか?」
「おっと、バレましたか。でも前者は本当のことなんですよね。同期の華麗なる成績を見てると、やっぱ凄いなーって。それだけなんですけどね」
「————学校生活はどう? よく他クラスに遊びに行ってるとか、そういう話をよく聞くけど」
「あーそれは真実ですね。まぁ、部活友達の方が付き合い長いんで、そっちの方が楽しいんですよね。それに、私は『異常者』なんで、やっぱりクラスと隔たりがあるというか……ま、問題は無いんですけどね!」
先輩はそう言うと少し笑った。先生は全く笑わなかった。私は息を潜めて話の続きを聞いていた。
「もうすぐ修学旅行だが、大丈夫なのか?」
「班編成ですか? まぁ、大丈夫だと思いますが」
「違う。足のことだ。工藤————
————義足の件、まだ言ってないだろ?」
その瞬間、私は知ってはいけないことを知ってしまった感じがして身震いした。私の、私のせいだと、頭の中で反芻する。その瞬間、立ちくらみが起こって壁にぶつかった。————バレる。そう思って、すぐにその場から離れた。見つからないように忍び足で、でも走るように。
「——先生、誰かに聞かれてしまったようです」
「なら、先生が見てこようか」
「いえ、その心配はいらないです。——確かにその件は言ってません」
「どうして言わない?」
「単純な話ですよ。みんなに余計な心配をさせたくない。それだけです」
「そのみんなってのはクラスメートのことか?」
「それもあるんですけど、やっぱり木乃ですかね」
「あーなるほど。まぁ、言いたいことはわかった。で、工藤はそれで満足なのか?」
「……そうですね…………私は」
それからというもの、私は先輩を避けるようになった。罪から逃げているだけなのは自覚していたが、それでも逃げた。逃げ続けた。そうしている内は幸せだった。————心に沈む黒い塊を考慮しなければ、であるが。
ある日、修学旅行が終わった十一月の初め、オタ芸の練習をしていた時だった。オタ芸は部員のほとんどが三年生を送る会の出し物としてやるので、本業のクイズはお休みして、ずっと鏡の前で練習していた。だから、暇だったのだろう。先輩が、工藤先輩がそこにいた。先輩は私の顔を見ると「久しぶり」と言って、手を振った。
「最近会ってなかったけど、忙しかった?」
「え、まぁ、はい。そこそこに」
「修学旅行のお土産、確かまだ渡してないよな。持ってくるよ」
そう言って先輩はゆっくりとお土産を取りに行って、ゆっくりと帰ってきた。
「はい、どうぞ」
「あ、ありがとうございます」
「修学旅行は良かったぞ~。でも、アイマスクとネックピローはあった方がいいな。バスの中が快適になる。作間は持ってなかったから修学旅行中ずっと首が痛いって喚いていた」
「あはは、参考にします」
周りが騒がしくて、お互いの声が掻き消される。それがいつもの様子で、私に安心感を与えた。だから、私の心のガードが、客観視する目が弱まってしまった。
「恨んでないんですか。あの事故が無ければ、先輩もオタ芸出来たのに、私のせいで」
「まさか。全然。————まだ気にしてたの?」
「でも」
その時、私は確認したくなった。先輩のその答えが本当に正しいのかを。一時の感情の奔走に身を任せ、口を開いた。
「先輩は私のせいで足を————足を失ったじゃないですか」
その瞬間、静寂が一帯を支配して、私が自分の感情の暴走で何をしてしまったのかを自覚して、音が戻ったのを皮切りにみんなのざわざわとした声が自分たちに後ろ指を指しているような感覚がした。先輩は立ち上がり、私の手を掴むと、私を連れて人の居ない部室へ行った。先輩が「真ん中でいっか」と言うので、私はそのまま真ん中の机の椅子に座った。先輩は隣に座った。私たちの正面には黒板があって、あまり掃除されていないからか、表面についた白いチョークの粉が夕日を反射してキラキラしていた。それを見て、私は思わず下を向いてしまった。沈黙が空間を泳ぐ。それを壊したのは先輩だった。
「隠すつもりだったのになぁ……」
そうポツリと、一言だけ言った。それが先輩の本心の様で、言葉の棘が私のこころを貫くように刺した。先輩は机の上に溶けるように上半身を乗せた。いつもの先輩だった。
「ま、仕方ないか。そんな日もあるさ」
先輩は、私を責めようとするそぶりは一切見せなかった。人がめったに来ない部室で、いくら私のことを糾弾しても、それを知るのは二人だけになるから、てっきりその為に連れてきたのだと思っていたが、違うようだった。
「……先輩は、私を責めないんですか?」
「責める? 何で?」
「私は……あの日から先輩の嫌がることばかりをして……本当にダメな後輩です。ごめんなさい。本当にごめんなさい」
自分の罪を再度想うと、その意識が強くのしかかり、私を潰してしまうようで……目の前が滲んできて、涙が出そうになった。すると先輩は何かを閃いたようで、急に体を起こし、私の方を向いた。
「分かったぞ。木乃が何を欲しているのかを」
私は「え?」と呟いて先輩の方を見た。
「木乃は『罰』を欲しているんだ。自分は悪いことをしたのだという意識があって、その為に罰を受けてチャラにしようとしている。そうしないと自分が許せないからね。で、その肝心の罰とやらを、この俺が『いーよいーよ、気にしないで』なんて言ってるから受けられずにいて、それ故いまだに自分が許せていない。そうだろう?」
先輩の言ったことは、私の思っていたことを明文化した。そうだ、確かにそうだった。私は自分が許せなかった。それゆえ常にこの罰を受けていない状況をよく思っていなかったのだった。
「木乃は優しいからね。お見舞いにちゃんと来てくれたし、退院してからも気遣ってくれる。でも、その優しさが、自分は罰を受けなければならないということへの強迫観念として作用してるんじゃないかな」
「なら……私を罰してください。先輩の思うように。私、どんな罰でも受けます。先輩がいうのなら……」
「……うーん、そういわれても。他人を罰するのって慣れてないからなぁ」
そう言って先輩は少し笑った。この重い空気を掃おうとしたのだろうか。先輩はどこまでも先輩らしい。そう思った。
「……じゃあこうしよう。目を閉じて」
そう言って先輩は立ち上がった。私は目を閉じて、何が起こるのか恐れた。先輩は私の前で立ち止まり、そして
「ぁ痛」
「どうだ、痛いだろう! これが罰だ! その痛みを噛みしめるのだなぁ! ハハハ!」
と言って部室の外に出ていった。頭に少しズキズキとした感じが残る。私はデコピンされたようだった。先輩のわざとらしい笑い声が、廊下から部室まで響く。私は部室を出て急いで先輩を追った。すぐに追いついた。
「先輩!」
「ん、なんじゃい?」
「ありがとうございます」
「……そうだね。謝るなら感謝をって先人の言う通りだね。こっちの方がいい。そう思わない? ————どういたしまして」
「その……先輩……って…………優しいんですね……その……みなさんの評価より、ずっと……」
「そりゃあ、ね! こんなんでも先輩なんだから。お手本になれるようにしないと」
「……ふふ、そうですね。お手本にします」
「うむ。いい心意気じゃ」
先輩がおどけるのはいつも面白い。でも、それはただの笑いじゃなくて、心が安定するというか、日常というか、そんなものだった。
オタ芸の練習場所に戻ると、先輩は質問攻めにされた。ある人が「義足を見せてよ」と言ったのに対し、「そんなに見たいなら見せてやるよ」と言って義足を外しその人の頭を義足で小突いたのを見ると、先輩は先輩なんだなと安心した。すると、今まで忘れていた疲労感がどっと押し寄せて来て、ソファに座るとすぐに寝てしまった。
「オタ芸の練習終わりー! 解散ー!」
「あれ、寝てる人いるよ。どーする?」
「まぁ、寝かせてやれ。きっと幸せな夢でも見てるんだろうよ」
————そうこれは幸せな夢。なぜなら
先輩は来年を待たずして自殺してしまったから。
地に足がついてくれない 氷雨ハレ @hisamehare
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