第15話 リーナ捜索 後日談

その後、ミカはリーナを起こし、泣きじゃくるリーナの涙を拭いながら手を引いて村に戻った。二人の姿は泥だらけで、リーナはまだ泣きじゃくっていた。その様子に村人たちは驚き、大慌てで駆け寄ってきた。


「ミカ!リーナ!」村の大人たちは心配そうに声をかけてくる。


ミカはまずアルヴァに見つかり、盛大に怒られた。アルヴァはいつもより強い調子で言った。「ミカ!何があったの?リーナがこんなにボロボロになって!」


「う、うん…ちょっと、森に行ってただけだよ。」ミカは少し困ったように答えたが、アルヴァの心配そうな表情には少しだけ安堵した様子もあった。母親として、やっぱり子供の安全が一番心配だったのだろう。


一方で、カルッソ夫妻には深く感謝された。リーナの両親は、ミカに何度も「ありがとう」と言い、リーナを抱きしめながら涙を浮かべていた。ミカも心の中で安堵し、少しばかり照れくさかった。リーナが無事で何よりだ。


「リーナは、しばらく休ませてあげて。まだ何も話せないよね。」ミカはそう言って、リーナの手を離した。


リーナはひきつった顔で泣いていた。何があったのか、まだ理解していないようだ。ミカはそのことを心配しつつも、何も話さないことに決めた。バスタルのことや、あの出来事を大人たちに説明するのは無理だと感じたからだ。


「リーナはきっと何が起きたか理解してないだろうな…」ミカは心の中でそう呟きながら、リーナが寝ている横でひと息ついた。


その夜、アルヴァがリーナの寝室を見守っている間、ミカはアルヴァと軽く話をした。アルヴァは少し警戒心を持ちながらも、やはり心配していた。


「ミカ、あなた普段あの森に行かないのに、どうして急に?」アルヴァは少し不安そうに言う。彼女はミカのことをよく知っているからこそ、その行動に違和感を感じたのだろう。


「うーん、ちょっとリーナを探してたんだよ。」ミカは適当に言いながらも、できるだけ自然に振る舞った。アルヴァの心配はもっともだが、今はとてもそのことを話す気になれなかった。


アルヴァは少し考えてから、「そう。あんまり無理しないでね。」と言って、微笑んだ。普段と変わらない温かい母親らしい言葉だった。


ミカはそれを聞いて安心しつつも、どこかホッとした気持ちがあった。今はまだ、この話を大人たちにする時ではない。リーナが少しでも元気を取り戻してから、必要なことを話すつもりだった。


その夜、ミカは寝床で静かに考え込んでいた。バスタルとの会話、命のやりとり、自分が無力なただの子供という事実。


もし次にこんな事があれば、こんな上手くいくなんて限らない、自分はこの世界の事をもっと知らないといけない。生きていく術を身につけないと…。




余談だがこの日以降、リーナはミカに絶大な信頼を寄せるようになった。両親がいかにミカに感謝すべきかを過剰にリーナに吹き込んだのか、まだ子供のリーナはその言葉を正面から受け止めてしまった。


ミカが外を歩いているのを見つけると、リーナは必ず笑顔で駆け寄ってくる。まるで兄妹のように幼少期を過ごすことになる。

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