最終章 : 未来への一歩

それから数年が経った今、俺はみゆきの形見である赤いスカジャンを羽織り、大切な人たちを守るための道を歩んでいる。


春の風が心地よいある日、親友のまつ、たけ、うめと共にバイクで走り抜けた。風を切る感覚とエンジン音が、俺たちの青春をさらに輝かせる。誰もがそれぞれの未来を歩みながら、こうして一緒に過ごせる時間は俺にとって宝物だ。


「ナナ、どこまで走るつもりや!」

うめの声が風に乗って届く。

「今日も生きてるなぁって、そう感じるとこまで!」

俺は笑いながら返事をし、さらにアクセルを回した。


仲間たちの今


俺たちの周りも、少しずつ変わり始めていた。


みゆきの親友、りこは高校教師になった。元ヤンの血は完全には隠しきれず、時々そのオーラが出るせいで、生徒たちは最初はビビっていたらしい。でも、りこの人間味と真っ直ぐな熱意が伝わり、今では生徒たちからも信頼される立派な教師だ。


ももは声優になる夢を叶えた。新人ながらその愛らしい声と存在感で、少しずつファンを増やしているらしい。アニメの放送が始まるたびに、俺たちは彼女の声を探している。


そして、みゆきの妹分のあんずは、あのイカつい元ヤン保育士のカケルと共に保育園を切り盛りしている。あんずの可愛さと、カケルの強面だが優しい性格のバランスが絶妙で、奥様方や子どもたちに大人気の保育園になった。


みゆきとの約束


そんな日常の中で、みゆきの言葉はいつも俺の心に響いている。

「喧嘩すんな。お前の手は、大切な人を守るために使え。それ、忘れんなよ。」


春のある日、街で女の子たちが不良に絡まれているのを見た俺は、自然とその場に足を向けていた。

「おい、やめとけよ。」

冷静に告げると、不良たちは渋々その場を立ち去った。


安心した女の子たちが、恐る恐る俺に向き直る。

「……あ、あの、名前、教えてくれませんか?」

俺は少し照れながら、けれどみゆきのことを思い出して自然と微笑んだ。


「俺の名前はなな。大切な人にもらった名前や。」


未来への誓い


桜が満開になると、どうしてもみゆきの笑顔を思い出す。そのたびに俺は空を見上げ、胸の中で呟く。

「ありがとう、みゆき姉。また、桜の下で会おうな。」


吹き抜ける風が赤いスカジャンを揺らし、舞い散る桜の花びらが俺の頬を撫でる。まるでみゆきがそばで微笑んでいるような感覚に包まれ、俺は一歩前に踏み出す。


俺の中には、みゆきとの思い出とその教えが確かに息づいている。彼女に恥じない自分であるために、これからも俺は歩き続ける――仲間たちと共に、未来を見据えながら。


「今日も生きてるなぁ。」


その言葉を胸に、俺は笑顔で歩み続ける。

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スカジャンと剃り込みと僕の青春 七尾 蓮翔(ななお れんと) @Nanatoyobareta7

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