雑貨屋無駄話 1日目 事実はドラマよりもドラマチック

繍 nuitori

第1話 事実はドラマよりもドラマチック

商店街の端っこで小さな雑貨屋をしております。好きな物を並べて、たまのお客様とのんびり、ゆっくりする日々を過ごしております。


いつも元気な佐藤さん。今日は何やらお疲れのようです。

顔色があまりに酷いので

「お疲れですか?」と訪ねてみると

「なんだか色々あり過ぎて、今日は気分転換に来たのよ」とふぅっと小さくため息を漏らしました。


鏡に向かってアクセサリーを合わせる様子を見ながら、昨日のお客様のお話を思い出していました。


「不倫のドラマなんだけどね、今は凄い道具が簡単に手に入るのね。」

旦那の不倫の証拠を奥さんがスパイさながら集めて行く様子にハラハラして、最後はそれを突きつけて行くのが痛快だったとお話されていました。。

「最後はホントスッキリしたわ!」

かなり話題のドラマらしく、ご覧の方も多いそうです。そういえば、誰かも言ってたなぁって思いつつ


「何やら話題のドラマがあるらしいですね。最後の慰謝料請求され・・・」

「そう!それ!」


食い気味に反応されました。

やはりご覧になっていたのですね。


「次の日の午前中に振り込まれたわよ!女の分も午前中!私の通帳に名前並んでんの!馬鹿にしてる!まぁ旦那が払ったのかもしれないけどね」


あらら?なんか違う・・・


「オマケに退職届は前に受け取ったことになってて、私達が乗り込んだ翌日から有給消化って!ありえなく無い?」


いや、あの、どうしましょ、これはドラマの話じゃあ無いです。


え?「私達って?」

つい口から出ちゃいました。


「娘がね心配して一緒にいてくれたのよ。私だと顔知られてるって。駐車場の車確認して、女の家に行ってピンポーンって」

「娘さん凄・・・」

「そうなのよ、ドア空いたら『父がお邪魔してますよね』って土足で入って行って『何やってんの!!』って一喝よ!カッコよかったわ!後は土下座の2人に仁王立ちの娘が弁護士さんに言われた通りの流れを説明してくれて、私は何もしないうちに『お母さん!帰るわよ』って」


ドラマの話をしただけなのに申し訳ない気持ちでいっぱいな私は、凄い展開に興味はあれど、これ以上のプライバシーを聞いてはいけないと思い

「あの・・・嫌な話をさせてごめんなさい。私が話してたのは最近話題のドラマの話だったのだけど」

「ドラマ?あぁ〜ごめんなさい。なんで知ってるのかなぁ?って思ってたんだけど・・・アハハ」


佐藤さんは合わせていたアクセサリーを棚に戻すとぽつりぽつりと話し始めました。


「まぁ色々ってのはそう言う話なのよ。初めてじゃ無いから弁護士さんとも相談しながら証拠固めしてたの。今は凄い道具が簡単に手に入るのね。おかげで色々詳しくなったからもしもの時は言ってね。」


うふふと微笑む彼女は先程よりも少し明るくなった気が致します。


「それはそれは、心強いですね。その時は頼らせていただきますね」


話しながら私は『いくら人気のドラマでも人に振ってはいけない話題』として心のページに赤ペンで書き込んだというお話でした。

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