乾いた空気と澄み切った景色が見える、良質なディストピア作品

人のほぼ死に絶えたディストピア。
そんな世界で残された機械達が、自分達を産んだ人類の遺産を再現して存在していた。
そんな世界でのある一時期を切り取ったSF作品です。

作品全編を通して絶えず流れる乾いた冬の空気。
埃と、だけど爽やかさを感じる澄んだ世界。
そこにあるけど、何もない。

そんな終末世界の心地良い虚無感が、自分の周囲を覆っているかのように、リアルに感じられます。
何と言う表現力と構成……そして発想。

天才、と言う言葉を安易に使うのも違う……とは思いますが、この作者様に対してはそう言わざるを得ない。
少なくとも私は決して敵わない。
この方の書く作品の模造品を「それらしく」書こうと思っても無理。

そんな才能に恵まれた方のイマジネーションの結晶、ぜひお楽しみください。

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