第33話 鍛冶師は最強に至る
「「「は?」」」
喜んでもらえると思って話したら、何故だかイヴとヘレナ、エミリアからは気の抜けた言葉が返ってきた。
「ん? よく聞こえなかったか?」
「そ、そうじゃないよ。だけど……わ、わたしの聞き違いかな? もう一度、言ってくれるかな?」
「うむ!」
今度はヘレナとエミリアにも視線を合わせ、再度こう説明する。
「Eランクに昇格したんだ! 今までなかなか、『実績を上層部になかなか認めてもらえず……』とか言われて、昇格出来なかったんだろ? Aランクのみんなに比べたらまだまだだけど……ようやく前に進めたんだ!」
ぐっと拳を握る。
しかし一方でイヴたちは戸惑いの表情を作り、
「な、なんでEランクなの……? だって、上級魔族を十体も倒したんだよ?」
「本来なら、もっと上がってもおかしくない」
「ロイクさん、SSSランクに昇格しなかったんですか……? そうじゃなくても、せめてSランクくらいには……」
と口にした。
ふむ……。
確かに、ギルドマスターからはSSSランク昇格について言及された。
しかし。
「俺なんて、まだまだだよ。SSSランクなんて程遠い!」
「だーかーらー!」
イヴがぐいっと顔を近付ける。
「ロイクって、めちゃくちゃ強いんだってば! SSSランクでもおかしくないくらいにね。もしかしてまだ、自分のことを弱いって思っているの!?」
「さすがにもう、ただの鍛冶師だって言い張るつもりはないさ。ただ……」
イヴたちに説明する。
──今回の戦いにおいて、俺はまだまだ成長出来ると実感した。
そもそも、上級魔族を前にして、俺は一瞬勝負を諦めたんだぞ? このままじゃ勝てないって。
だが、そんな俺を奮い立たせてくれたのはカサンドラ師匠──そして『不滅の翼』のみんなだ。
彼女たちがいなかったら、俺はあそこで魔族に殺されていただろう。
それだけではない。
カサンドラ師匠が時間を稼いでくれなければ、イヴたちが俺が集中出来るように護衛してくれなければ、聖剣をパワーアップしレア度11の武器を作ることすら出来なかった。
だから思う。
俺はまだまだだ──って。
「そもそも、SSSランクって言ったら、師匠たちと一緒だろ? とてもじゃないが、師匠と同じ実力だと言うつもりはないよ。師匠たちの実力は、俺が一番知っているから」
と肩をすくめた。
それに対して、今度はヘレナが。
「じゃ、じゃあ……Eランクというのは本当なのだな?」
「何度も言ってる。ギルドマスターにはSSSランク昇格と言われたが、固辞したよ。俺は少しずつ、ランクを上げていきたいんだ」
「だったら、私たちのパーティーから抜けるということは……」
「はあ? なんで、俺が『不滅の翼』を抜けなくちゃならない。も、もしかして、俺に愛想を尽かしたのか!? 巷で流行っているパーティー追放っていうやつか!?」
それならまずい!
「頼む! このまま俺を『不滅の翼』にいさせてくれ! なんでもしますから……」
手を合わせて、懇願する。
……せっかくEランクに昇格したっていうのに、ここで
なにせ俺はまだ、常識を知らない。
みんながいなかったら、どこかでトラブルを起こして詰みだ!
「ふっ、そんな顔をしないでくださいよ。なんなら、私たちの方からお願いしたいくらいです。ロイクさんとずっと一緒にいさせてください……って」
とエミリアは、慈母のごとき優しい笑顔を浮かべて、そう言った。
「だったら……」
「うん! ロイクがパーティーから抜けるなんて、とんでもない! これからもよろしくね!」
イヴは目にうっすらと涙を浮かべて、俺に抱きついてきた。
彼女のような美少女に抱きつかれて、決して不快ではないが、さっきから……なんだ。柔らかいところがぷにぷにと当たってな。不用意に体を動かしたら、変な感情が生まれてしまいそうだ。
「規格外の力をもってなお、Eランク冒険者……か。ふふふ、そんな例は今まで一度もなかっただろう」
「ですが、ロイクさんらしいです。それにたとえEランク冒険者でも、ロイクさんはSSSランクの鍛冶師です。それだけは間違いありませんから」
そんな俺とイヴを、ヘレナとエミリアは嬉しそうに眺めていた。
──パワハラオーナーに武具を全て捨てられ、武具屋を解雇された俺。
どうなることかと思ったが、俺は居心地のいい場所を見つけた。
いつまでもこの光景を守っていきたい──そう切に願うのであった。
SSSランク鍛冶師、解雇されてから世界最強に至る 〜パワハラオーナーにゴミだと捨てられたもの、全て超チート級の武具でした〜 鬱沢色素 @utuda
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