ずるずると、恐怖に引きずり込まれて行くような作品でした。
ある日から、家のお母さんが始めた一つの儀式。
死んでしまった『お父さん』のために食事を用意し、まるで一緒に食卓を囲んでいるかのように話し始める。
そんな姿を見て、次第に不穏なものを感じ始める。
始まりの部分だったら、お母さんの気持ちがとてもよくわかります。
ずっと一緒に暮らしてきた人ならば、「自分がこう話しかければ、きっとこんな答えを返してくれる」と頭の中にイメージが出来るものです。だからきっと、食卓で『お父さん』に話かけているお母さんの頭の中では、鮮明にお父さんの声が響いていたことでしょう。
そして実際に、『何か』がいるように感じられたとしても、それは歓迎すべきことのように思えたかもしれません。
こういう優しい形で始まって行くために、読者も中々『判断』がつかない状態が続きます。
これは、止めた方がいいものなのか。それとも、あたたかく見守ってあげるべきなのか。
あなただったら、どうしますか?
気づけば、自分に置き換えて「どっち」の判断をするべきか考えていることでしょう。
その先で何が待っているか。これからご自身の目で確かめてみてください。