第15話
―――――――――半年後。
この日は最初から三人で寝てた。
なぜかずっと僕が落ち着かなくて、無言でミリヤの手を引いて千紗の部屋へ行った。
―――――――――23時半。
「ママが呼んでる。」
僕は急に起き上がって部屋を出ようとすると、千紗が気付いた。
「流、トイレ?」
「…ママが呼んでる。」
「え?」
「流星…あたしも行く。」
ミリヤは眠たい目を擦りながら起きてきた。
「流星、鍵は?」
僕はズボンのポケットに手を入れて見せた。
「うん、行こ。」
「待って、あたしも行く。」
若さもあるのか、経験値なのか、千紗よりミリヤの方が動きが早い。というか、感覚で動く。
まるで…昔の千紗みたいだ。
――――――――――――。
「ママ…来たよ。」
ベットに行くと、ママが息絶え絶えになっていた。
「流…。」
「ママ…みんな来てくれたよ。」
「うん…。」
「ママ…」
「千紗、ありがとう。」
「あたしはしたいことをしてただけだよ。流星が可愛いくてお姉ちゃんから盗っただけだよ。」
「…ごめんね。」
「…もういいよ。」
「ごめんね…」
「いいの、あれはアイツも悪いの。でもいいの。あたしにはこの宝物があるから。アイツにそっくりになってきて腹が立つ時もあるけど、でも根っこは小さい時と変わらないから。いいの。もう自分責めないで。あたしともお姉ちゃんともやったあいつが悪いんだから。」
「…ありがとう。……流星。」
「なに?」
「ごめんね。辛い思い一杯させて。」
「大丈夫だよ。小さすぎて覚えてないから。キラキラ笑ってるママしか覚えてないから。あとは大人になってからの綺麗なママしか知らない。」
「…ごめんね…ごめんね…。」
「大丈夫…。千紗が来てくれたから。それにね…俺ね…」
母の呼吸が浅くなっているのがわかった。
「ママ、俺、ママが大好きだったよ。どんなんでもよかった。ママが好きだった…ママ…」
母は笑って呼吸をしなくなった。
「ママ…?…」
ミリヤは僕をその場から離して抱きしめてくれた。
「ちゃんと言えたね。えらかったよ。」
「千紗!!…千紗!!…」
「なに?」
「お前は死ぬな!絶対死ぬな!!死んだら許さないから!俺が死ぬまで死ぬな!!千紗にはその責任がある!!俺を連れ出した責任が千紗にはある!!」
「そうだね…。できるだけ長生きするわ。あんたにもういいよって言われるまで長生きしてあげるから。」
「ちた!!…」
「大丈夫…あたしもあんたのママだから。」
純心 海星 @Kaisei123
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