第2話 ゴブゴブ

「――ッ!」


 もう数えるのも面倒くさくなるくらいにはウサギを倒したて、僕は飽きてきたから狩りをやめて一旦街に戻ることにした。

 後周りに人が沢山増えてきたっていうのもある。気配察知の邪魔になってモンスターの気配か人の気配かが分かりにくくなるからね。


 レベルアップの際に手に入ったステータスポイントはまだ保留にしておいて、マップを見ながら全速力で街の方まで駆け抜けていった。



「よし到着」


 察知できた気配を全て避けながら出来る限り速く王都の門の前まで移動した僕は、狩りの後に街中を探索するとかいう普通逆じゃない?と言われるに違いない行動をとった。

 しょうがないじゃん。剣を振ったり魔法使ってみたかったんだし!


 んん!気を取り直して、まず最初は武器や防具等を作って販売している職人街からだね。

 ウィンドウショッピングってやつ。

 ミスリルダガー…25万Gかぁ〜欲しいけど高いなあ…ていうかこんな序盤に来れるお店にミスリルでできたアイテムとか売ってるんだね。ビックリするよ。


 短剣で二刀流したい欲求があるから武器屋を巡って耐久力が高くて使いやすそうな短剣を探して購入する。


――――――――――――――――――――

武器:見習いの魔光短剣

効果:STR+3 

耐久力:600

説明:耐久力が高くなるよう魔石と鉄で鍛造された短剣。見習い鍛冶師の練習作

――――――――――――――――――――


 見習いの練習作だったとしても、良さげなものが買えて良かったよ。予算内だったしね。

 他に防具も見て回ったけど、欲しいと思う物は特に無かったかな。今のところ敵の攻撃は全部避けれているから、現状で満足です。


 そういえばこの世界、冒険者ギルドみたいな建物は無いんだよね。傭兵ギルドとか、商人連合とか似たようなのは街中で結構見かけるんだけどね。不思議だなぁ〜


 閑話休題。

 さて、回復アイテム買ったらまた外で狩りしようかな。レベルも上がったし、どうせなら次の場所は〝掃き溜めの森〟にでも行こうかな。



◇◇◇




 〝掃き溜めの森〟

 公式サイトでの情報と掲示板での僅かに共有された情報を元にすると、王都の西側に位置する、出てくるモンスターはゴブリンを中心に、草原にも出てきた角ウサギ(ウサギの正式名称)、風狼や軍隊蜂なんかが出る薄暗いフィールドだ。

 更に奥に進むと辺りが明るくなり強力なモンスターが出現する様になり、ヘルフレイムグリズリーなるモンスターも出てくるらしい。

 でも森に炎って相性悪そう…


 まぁ、そんな風にある程度は情報が出てき始めた頃の掃き溜めの森に僕は気配遮断を使いながら来たってわけだ。

 狙うはゴブリン。人型のモンスターだから対人戦の特訓になりそうだなと思って。

 よーし行くぞ!




 掃き溜めの森に入って早くも数時間が経過した。ゴブリン相手の戦闘で人型モンスター相手に躊躇なく攻撃できるってことが分かった。これなら対人戦出来そうだ。

 それでだんだん調子に乗ってきた僕は森の奥に進んでしまった。



「―――ッッッ!!」


 目の前に迫った蜘蛛の糸・・・・を辛うじて感じ取れたから回避して相手に短剣の刃先を向けて警戒する。


 相手は大きな蜘蛛型のモンスター。全身が黒と黄色と赤の警戒色だらけな変わった見た目だ。けれども、全身に毒属性が付与されていて毒耐性が無かったら危なかった。

 後、蜘蛛らしく糸を出すことができるみたいだ。粘着性は今のところはないけど油断を誘っているのかな?多分粘着性の糸も出せるはずだ。

 この大蜘蛛の相手、どうしようか…

 現実的に考えればまだレベル10程度の僕が相手ではこの大蜘蛛から逃げるのが定石というか当然の事だと思う。

 でも、戦ったほうが面白そうだ。良し!そうしよう。


 まずは一旦遮蔽物に隠れる。幸いここは森だから隠れる場所はいくらでもある。

 [HPポーション]をインベントリから取り出して一気に飲み干す。


 回復できたら、大蜘蛛に対する対策を立てる。

 相手の詳しい実力は分からないけど、AGIに関しては相手よりも上回っているのが確定している。後は遠距離からチクチク攻撃したいんだけど…僕の手札だと出来そうもない。


 〈毒魔法〉って毒属性の攻撃だからね。相手は大蜘蛛。絶対に毒耐性を持っていることだろう。

 魔毒のダガーの追加効果にも期待できないね。残念だ。


 ならば全力でインファイトに持ち込むしかないか。



 覚悟を決めた僕は、〈気配遮断〉を発動してから全速力で大蜘蛛の直ぐ側にに移動して足の一つを斬りつけた。


「ギシャアあぁ!!」


「うーん…カスダメだぁ。これ本当に倒せるかな?」


 今さら浮かび上がった疑問はかなぐり捨てて即座にバックステップで距離を取る。

 大蜘蛛は足を僕目掛けて振り回してくるけど問題無く回避できた。


 攻撃後の隙を突いて更に攻撃を畳み掛ける。あんまりダメージ通ってなさそう…


「ギイぃぃィィ!!ジャァ!」


「えっ!!うわっ!」


 大蜘蛛が溶解液をバシャっと口から噴射した。驚いたけど漫画で見たことあるよ、こういう攻撃手段。ギリギリ想定内だからこれもバックステップで避ける。


 避けた後にすぐさま攻撃に転じて足や胴体を攻撃して斬る。


 大蜘蛛が足を振り回して攻撃する。


 僕が避けてその隙に攻撃する。




 後はひたすらその繰り返しだった。よく考えればコイツそこまで賢くなかったんだ。パターンができたらダメージが蓄積していって時間が物凄くかかったけどまあ、倒すことに成功した。

 ちなみに溶解液は使うと大蜘蛛自身の体力を削るようであの一回以来全く使ってこなかった。


 しばらく戦闘したくないくらいには精神的に疲れたよ。

 でも大蜘蛛の経験値が多くて良かった。そうじゃなかったら発狂しそうなくらいつまらない戦いだったよ。


 もうちょっとくらい徹夜で遊ぶ予定だったけど街まで戻ったらログアウトして寝よう。疲れた…




 街に帰還する道中、掃き溜めの森の少し奥の方を僕が〈気配遮断〉を使いながら通った時にゴブリンの集落らしき場所を発見した。それもとにかくデカい。

 大体数千、いや数万単位でゴブリンが生活している。最早国と言っていいのではないかと思うレベルでゴブリンが生活している。


 これ最初のイベントとかで戦うことになりそうなゴブリンだよな。絶対そうだ。

 こう言うのは報告したほうがいいんだろうけどさ…無視を決め込んで取り返しつかないところまで行ったらどうなるか気になるんだよね。

 よーし見て見ぬふりしよっと。

 バイバイゴブリンの王国。時期が来たら戦争だね。






▽▽▽


■Side.???(三人称)


 その少年は、偶然にも今世間を騒がせている話題のフルダイブ型VRMMO【Virtual chaos world】を購入することができたのだ。


 喜び勇んでゲームの世界に入った少年は、公式サイトで見つけ出した隠しコマンド――イースターエッグを用いて種族RACE職業JOBをランダム選択という博打要素で決めた。


 その博打は勝ったと言っていい。

 選ばれた種族は〝竜人〟、竜の尻尾と体の何処かに小さめな鱗を持つ特定の場所に住んでいる極めて珍しい万能で強力な種族だ。

 そして職業は〝秘術師〟特定の条件を満たすことで、普通の魔法スキルよりも強力な効果を発揮できるピーキーな職業である。


 少年は、この2つを引っさげて仮想世界に足を踏み入れたのだった。


 この少年は、このゲームの数ある主人公の一人である。この世界で最も強くなる事が既定路線のよくあるラノベや漫画のプレイヤー主人公みたいなものだ。


 そんな少年と、ナコトが初めて出会うまで……未だ時間は有る。



――――――――――――――――――――

これで前日譚的なのは終わりです。そして手持ちのネタも終わりです


やばい最悪エタりそう…

無限にかける化け…天才の方々の才能が羨ま…眩しいです。

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―Virtual chaos world― 黒薙神楽 @kuronagikagura

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