lilac(ライラック)

Natal(ナタル)

第1話


森の外れの奥に、 古びた屋敷がありました。

誰もいない屋敷にはある噂が・・・。


それは「夜更けにピアノの音色が聴こえる。」 「少女の声が聴こえる。」


というものでした。


ある日、男の子が一人屋敷の近くまで迷い込んでしまった。

男の子は怯えながらも、目の前にたたずむ屋敷の中へと・・・少しずつ歩き始めました。


中に入ると、そこは豪華な装飾品が並び、 外見とはうって変わった屋敷の姿に


思わず、手に取ろうとした時、


「・・・そこに誰かいるの?」 と少女の声がしました。


男の子はその声にびっくりしたのか、腰を抜かしてしまって動けません。

「まずい!食べられる…!!」と思って怯えていました。


そこに少女が近づいてきて、


「大丈夫・・・? 手につかまって?」と男の子に手を差し伸べたのです。


男の子は、驚きました。

目の前の少女は、幽霊ではなかったからです。


「どうしたの?」 と少女が首を傾けていました。


男の子は少女の言葉にふっと我に返り、少女の手を掴みました。


その後、二人は屋敷の中を探検したり…一緒にピアノを弾いたりしました。


そんな時、少女は男の子に言いました。


「また遊ぼうね! また一緒にピアノ弾こうね!」


男の子は大きく頷きました。


それから二人は毎日のように数の中で楽しく過ごしていました。


一緒に遊んだり、


屋敷の中の物を使って戦いごっこしたりと・・・。


そんなことしていると、男の子の腹の虫が豪快に鳴りました。


二人はさっそく食事をすることにしました。

食卓にいくと、誰かが用意したお料理が出ていました。男の子はお腹が空いて

我慢できなかったのか、頬張るように食べ始めました。


そんな男の子の子を、少女はまるで悲しそうにみていました。


男の子は首を傾げるも、食べていると・・・なにやら眠気に襲われたのです。


すると、どこからか低い男の声が聞こえてきました。


「だから言ったんだ。むやみに人を入れるなと。」


男の子の意識としている中、少女は泣いていた。


男の子はそのまま眠ってしまいました。

気が付いた時には街の中に居ました。


それから男の子は、青年になり・・・軍人になっていた。


隊に入隊した青年は、そこでひときわ目立つ女性を見つける。

燃えるように赤く背丈程の髪色に、鹿のような角を生やしている。

体格はスレンダーで、背が高かった。


青年がけていると、その女性が近づいてきた。


「…君、新入りくん?迷ったの?」


青年は我に返り、慌てた様子で「そ、そうなんです!部屋の場所がわからなくて…!」


と答えた。


女性は、微笑みながら、


「わかったわ。私が部屋まで案内するよ。」と言った。


青年はお礼を言いながら、話をした。


「ありがとうございます!俺ウル・パフティといいます!よろしくお願いします!」


女性はにこやかに、


「ウル・パフティさんね、私は、リリアン・ハーネストって言うの。リリアでいいわよ?」


と答えた。


青年・ウルは、微笑みながらもぎこちない様子で「リリア、よろしく!」と言いながら

握手を交わした。


それからは共に切磋琢磨し、共闘し合い・・・ときに友として過ごしていった。

そんな二人の関係に時間はかからなかった。


ある日、女性・リリアは一ヶ月の間・・・休暇を取ることになった。


ウルには知らせずに・・・。


一か月後にはいつも通りの彼女がいたという。

周囲の噂は絶えなかったがそれでもなお、彼女は平然としていた。


そんな時に、リリアにある任務を任された。

魔獣を殲滅せよとのことだった。


のジュリアと一緒にリリアは、とあるパーティーに潜入し、ウル率いる部隊は


目的が来るのを待った。


「ピアノ伴奏者はまだか!!」


とある主催者が怒鳴り始める。どうやら伴奏者が来ないらしい。


参加者達がざわめきだした。


すると、リリアがすっと主催者の前に行き、


「私、ピアノ弾けます。」と一言。主催者に向けて言ったのだ。


困惑顔をしていたが、時間もなかったので急遽弾くことになった。

彼女がいたピアノソナタは、騒がしかった招待客も静まり返って、まるで聞き入れる様になっていた。


そこには、招かざる客までも引き寄せていたにも知らず…


彼女が演奏を終えると、 大喝采に巻き込まれた。

その時、巨大なステンドグラスの窓から魔獣が飛び出してきたのだ!


招待客は大喝采から、悲鳴をあげて会場から逃げていく中、

待機していたウル率いる部隊が、 魔獣に向け応戦していく。


リリアとジュリアは、近距離で魔獣を攻めていく。


そんな中、部隊の一人が密かにジュリアに狙いを定めていた。


誰にもわからないように...。


応戦中に背後を取られたジュリアを鋭い爪が襲い掛かる。


もうダメかと思った時、リリアの声が聞こえた。


「・・・ジュリアッ! 危ない!!」


ジュリアがその声に聞こえた時には、リリアの部に鋭い爪っていた。


ジュリアの悲鳴が響き渡る。


「•••いや、 リリア…しっかりして!!」


泣き叫んでいるジュリアの元に、ウルが駆け寄ってくる。


優しく倒れているリリアを抱き寄せる。


「ごめん、ごめん、リリア・・・。 俺が・・・俺が悪かったんだ!」


そんなウルの声に、リリアが優しく手を頬に添えながら、

「・・・謝らないで。 私が貴方に隠してたせいだから。」


そう言いながら、 リリアは優しく微笑んだ。


その後、リリアは病棟に搬送された。 命に別条はなかったという。


リリアが戻った時には、ウルは部隊を辞めていた。

それと同時に、リリアが何かしらの濡れ衣を着せられ、強制処分された。


彼女が無実だと分かったのは、彼女の死後のあとだったという…。


数年後、彼女を称え特殊部隊を 【Liam (リアム)】 と改名した。


その部隊に彼女の娘が入隊するのは、また別のお話・・・。

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