不完全故に

第3話

そうここは廃棄場。

そして私は、お金で雇われた世話係。

だけど私はここが好きだった。






ここに来るといつも思うのだ。


人類は、これから更に優秀な人材ばかりになるだろう。

そうして少しの間は、成長していくと思う。

だけどそれだけだ。


皆同じ様に優秀で、失敗しないから。

偶然の失敗から生まれた、数々の発明品や科学知識が生まれなくなってしまうから。

あの日偶然生まれた食べ物も、薬も、装置も、全てがなかったことになってしまう。


今でさえ完璧な美を求めた人々が、結果、同じような容姿になってしまったというのに。



完璧とは個性がない、ということではないだろうか。

欠陥がある自分を、許せなかったのだろうか…………そして愛せなかったのだろうか。




子供のためと言いながら、自らの理想を押し付ける親も。

他人に認められるために完璧になりたくて、でも量産品みたいな無個性の存在になれないことにホッとしている自分も。

全てが矛盾ばかりで嫌になった時にここに来る。


出来ない自分を許せる気がするから。


私は、たまにしか起きない彼が自分を見て、仕方ないなぁと、安堵したように小さく笑うのを見るのが好きだ。

私は、完璧じゃない彼を、完璧になれなかった彼を、話したことも無いのに愛していた。




ーーーーここは会話のない、彼と私の憩いの場。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

カスタマイズ フィアナ @pandora18

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ