第7話 得体の知らない何か

神社の鳥居がうっすら視野に入ってきたのに、体が悲鳴を上げている。

息も上がり過ぎてて酸素をうまく吸えない。

 

「もう・・・だめかも・・」

そう呟き、私は地面に倒れ込んだ。


すぐそこまで得体の知れない何かが来ているはずなのに、足に乳酸が溜まり過ぎてて立ち上がることができない。


一度止まったら動かない時計のように・・・


もし、このまま私が死んでしまってもそれはそれでいいかも知れない。


彼を覚えているうちにあの世に行けるから。


夢の内容なんてずっと覚えてられる訳じゃない。

たまに父の顔を忘れるくらいだし・・・

きっと時間と共に彼の顔を忘れるに決まってる。 

こんなにもあの夢のことを覚えているのは、見た夢を忘れる私にとって奇跡だ。

だからこのまま逝けたらある意味幸せなのかなって。


        ・・・・


いやだめだ。私はここでくたばるわけにはいかない。

彼の顔を忘れてもいい。

でも、私の中に彼がいたという存在は絶対に忘れちゃだめだ。


その原動力が私自身を奮い立たせ、

体を再び立ち上がらさせた。 


その瞬間・・・


生温かい感触が私の肩を触ってきた。


「ひぃ・・・」

と声を漏らしながら私の顔が一気に青ざめる


「おい、お前こんなところで何してんだ。」

と中年男性の声が聞こえてきた。


その声を聞き、私は振り返った。

声の正体の主は父だった。


「え、あ、おと、うさん、?」

一気に身体から緊張感が抜ける。

意識が朦朧として、目の前が暗く・・・


その後のことは覚えていない。


再び意識が戻ったときには家のベットの上だった。


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明日、死んだはずの君に会いに行こう 奏かなで @yk7ll

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