第3話

 ルナエルが母との会話を終えて、前に進み始めたとき皇居では役人や騎士が走り回っており、戦う力を持つ皇族までもが駆り出されようとしていた。


「陛下、本当に行かれるのですか…?」

「うむ。行かねばならない。今この国の戦力ではでは私ですら上から数えたほうが早いのだ。」


 その中には教皇もいて、自ら戦地へと赴こうとしている。


「女神様より信託を受けたのだ。女神様のかごを授かった少年ルナエルが南区にいると。その少年と合流して今起こっていることの現況である悪魔がさらったという男ニクスを助けてほしいと」


 そう、彼も女神からのコンタクトがあったのだ。ルナエルと協力してニクスを助けてくれと。


「皆のもの!出るぞ!悪魔によって活性化した魔物を斬り伏せ、民を守り、女神様に尽くすのだ!」

「オオオオオォォォォッ!」


 そう、教皇が叫ぶと雄叫びが上がり隊列を組んだ騎士が一斉に走り始めた。


 そのころルナエルは教皇へと助けを求めるために南区から皇居へと移動していた。


「オオオオオォォォォッ!」


 雄叫びが聞こえ驚いて止まってしまう。次の瞬間――


「ルナエルというものはいるか!?」


 教皇が声を張り上げ、ルナエルを探していたのだ。ルナエルからしたら、全く持って意味がわからない。

 ルナエルは叫ぶ。


「なぜ僕の名を!?」

「女神ルナから神託を受けたのだ!祝福を授かった少年ルナエルとは貴殿のことか?」

「はい。僕のことですが」

「女神ルナから貴殿に協力してニクス氏を救出してほしいと信託を賜った。協力ささてほしい」

「――わかりました」


 ルナエルは逡巡することなく答えたことで教皇がにやりと唇の端を上げる。そうしてルナエルは皇居へと教皇とともに行くことになった。


「足止めか…」

「早く助けなければならないのに…!」


 ルナエルは奥歯を噛み締めながら嘆く。まず悪魔がどこに行ったのかがわからなく、追いかけようがないのだ。

ルナエルは突然思いついたように魔法を紡ぐ。


我思う者は何処なり?サーチ――かからないか…」


 魔力のある位置から相手の場所を特定する魔法だが、この数時間で遥か彼方に移動していたようで見つけることができなかった。

 頭を抱え悩んでいると部屋のドアがノックされ、侍従長の声がする。

  

「女神様より神託が!」

「入れ!」


 教皇が入室を許し、侍従長が神託を読み上げる。


「悪魔は大陸のほぼすべての魔物を活性化させたことにより、力の大半を消耗し休眠状態に入ったそうです」

「猶予は」

「最低でも3ヶ月、長ければ半年と」


 教皇はそれを聞き指示を出す。


「騎士、及び神殿騎士は魔物の討伐に当たれ、最低でも本来より2周りは強くなっていることを踏まえ新人は規定部隊数の半分のみ連れていけ」

「かしこまりました。失礼いたします」


 侍従長が下がると、教皇は隣りに座るルナエルに話しかける。


「ルナエルよ、魔法の修練をしてくれないだろうか、神殿魔法もだ。教師は用意する」


 ルナエルは女神から祝福を授かっているのだ。魔法の実力は本来世界一と言っていいだろう。

 ただ、経験がない。誰よりも使うことができる体を持っていても使い方がわからなければ意味がないのだ。それを踏まえたうえでの教皇は提案していた。

ルナエルは一瞬悩む素振りを見せたがすぐに受け入れる。


「お願いしてもよろしいでしょうか?」

「わかった。手配する」


 そういって教皇は侍従長を呼び戻し宰相を呼び、急ぎ手配するように指示を出す。


「とりあえず今夜はゆっくり体を休ませてくれ、食事と泊まる部屋は用意させる」

「わかりました。お願いします」


 

 そうしてつかの間の休息が始まるのだった。




 皆さんこんにちは、白井黒猫です。

 一度シリアスとはお別れです。一番辛いであろう女神だって―楽しめるときに楽しんで体を休めてください―と言ってくれています。


 ――それでは、またどこかでお会いしましょう。


 p.s.

 ルナエルの新たな出会いに乾杯。――

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我は我らが女神の憂いを滅する者なり。 白井黒猫 @mahamiha0402

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