第2話

半年後、男は出て行った。

一人住むと、もう事故物件ではなくなる。

賃料は通常通り、告知の義務もない。

すると若い女が入居した。

しばらく住むと言っていたが、二か月後に急に故郷に帰ってしまった。

「母さんが倒れたんだと」

社長は忌々しそうにいった。


しばらく借り手がつかなかったが、三月になってようやく若い男が入居した。

「まあ、借り手がついてよかったかな」

社長が、なんだか歯切れの悪い言い回しで言った。


四月一日。

401号室の男が死んだ。

死因はこれまたまったく不明。

――まてよ。

前に若い女が死んだのも、四月一日ではなかったのか。

社長に聞いてみた。

「ああ、言ってなかったか。四月一日にあの部屋で人が死ぬのは毎年のことだ。もう六人目、いや七人目になるかな」

「えっ! それって入居者に言わないんですか」

「なんだって。なんでそんなことを言わなきゃいけないんだ」

おまえはいったいなにを言っているんだという顔と口調で、社長が言った。



       終

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401号室 ツヨシ @kunkunkonkon

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