第4話 修復完了!
「しかし、この場にはもう1人"星の加護"を持つものがいる。息子である王子に冷酷な方法を採る前に、可能性にかけてみたいので1つ依頼をしたい」
国王の言葉にこの場にいる多くの王族・貴族の視線が私に向きました。
えぇ……。
「恥を承知で頼む。既に婚約は破棄され、違約金はリーベル王子の金庫から支払ったので、きれいさっぱり関係ないことではあるが、残念ながら魔道具の修復は先ほども述べたように国の重要事項だ。国王としてシェリル嬢に命じる。ヘリオット高原に向かい、魔道具の点検・修理を行うのだ。当然支援はするし、希望があれば言うがいい」
国王陛下が私に向けて頭を下げ、ゆっくりと丁寧にお話しくださいます。
悩ましいですね。横で期待する目で見てくる王妃様と王子様に無性にイライラしますが……。
それに、希望ですか……リーベル王子を国外追放にでもしてもらいましょうか。
「1つ、よろしいだろうか? この場で僭越ながら……」
そう言って歩み出てこられたのはライル王子……第1王子です。
「発言を許そう」
「なっ、陛下!」
国王陛下はライル王子をしっかりと見つめられ、許可を出しますが、王妃は焦っています。
どうされたのでしょうか?
「今回リーベルが"星神の守護結界"の魔道具の修理に失敗し、国内に魔物が増えたことによって、私の隣国の王女との婚姻は白紙に戻っている。もしシェリル嬢のお許しがいただけるのであれば、私との結婚をお願いしたい」
「なっ……」
ライル王子による突然の私への婚約申し込みにリーベル王子が絶句しています。
「お前に文句を言われる筋合いはないよ? なにせ出発式で手ひどく婚約破棄をしたのだからな。そのことについて、私すらシェリル嬢に申し訳ないと感じるほどだ。しかし、そんな状況の中で無理を言っている自覚はあるのだが、どうか一度気持ちを整理したうえで考えてくれないだろうか。私はキミが王宮で頑張ってきたことを知っている。キミならきっと成功すると確信しているが、それを餌に使うようなことをしたくないし、結婚を褒美のように言うこともしたくない。だからこそ、今申し込む。私はキミと結婚したい。そして護衛騎士としてヘリオット高原に同行し、キミを守る」
ライル王子の申し出はとても真摯なものに感じました。
穏やかな目をしたこの金髪碧眼の青年は、なにを隠そう私の初恋の相手です。
王宮に出入りしながら魔道具の勉強と王族の教育を施される私のことを気にかけてくださって、不在のリーベル王子に怒りながらも励ましてくださったのはライル王子です。
こんな私のことを見ていてくださる方がいると感じれたおかげで頑張ってこれたのは間違いありません。
「どうだろうか、シェリル嬢? ライル王子の申し出を考えてみてもらえないだろうか? さらに他に希望があれば。なに、失敗したらリーベルに洗脳魔法をかけて勉強させて実行するだけだ。気は楽にしてもらって構わない」
国王陛下もライル王子の申し出を否定されません。つまり、私が"はい"と言うだけで成立する婚約……そして結婚。これは断れませんね。
「なにを仰るのですか、父上! それはあまりにも酷いのではありませんか? しかも、シェリルが持っているのは"星の加護"であって、"星神の加護"ではないのです。1人で行ってもムダです!」
この期に及んでリーベル王子が何かを言っていますが、もう誰も彼の言うことを聞いていません。聞く必要もありません。
「私の方こそ……私でよろしいのでしょうか? ライル王子なら手を挙げる方は多数……」
本当によいのでしょうか? 夢見る少女のような気分で受け入れて幸せになりたいと思う一方で、本当にいいのかという疑問もあります。
「キミがいいんだ。いや、キミじゃなくてはならないのだ。政略結婚が決まっていたから励ますことしかできなかったが、本当は頑張っているキミの隣で抱きしめ、頭を撫でて、褒めてあげたかったのだ。そしてキスを……キミを支えたかったのだ」
少し頬を染めながらそんなことを言ってくれます。
夢のようです。
ちらっと見たお父様も、好きにすればいいと言う目をしています。
「喜んでお受けしますわ!」
「シェリル嬢! ありがとう!!!」
私が答えると、ライル王子は私を抱きしめ、キスをしてくださいました。
それはとても暖かい、安心感のあるものでした。
生まれてこの方感じたことがない……いえ、思い返せばずっとライル王子は暖かかったです。
今までは間接的な表現でしたが、今後は直接的な愛情表現をくれると信じれます。
魔道具修復ですか?
えぇ、さっさと行って、さっさと見て、さっさと直しておきました。
"星の加護"の所有者でも頑張れば対応できる方法を詳細な記録として残してくださった先人に感謝です。
もちろん私の行った対応の記録も負けず劣らずしっかりと書き記しました。
いつかまた"星神の加護"を持った方がバカなことをしないように、記録の表紙として"加護を持っているからと言って知識も身につけず、修練もせずに行ってはリーベル王子のように失敗します"としっかり書いておきました。
めでたしめでたし。
なお、リーベル王子は廃嫡され、大ケガをして"星の加護"を失ったイリーナとともに地方領主として田舎に送られました。
***
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"星神の守護結界"の魔道具を治す使命~王子様は私と婚約破棄して役立たずな愛人を連れて行きましたが失敗されました……えぇ、私が代わりに?わかりました大切な方のため王命には従います~ 蒼井星空 @lordwind777
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