第3話
「何をお探しですか?」
鼠と対面した翌日。
仕事帰りにドラッグストアーで殺鼠剤を探していたら店員に声をかけられた。
さっきからずっと防虫コーナーで商品を睨む私は不審な客だったのかもしれない。
「実は、ね……」
言いかけて止めた。
「″ね″?」
「い、いえ」
そして直ぐにその場を立ち去った。
Gならまだいい。
でも、流石に家に鼠が居るって恥ずかしくないか? それに、チラッと見た防鼠剤、値段がお安くなかった。
――九百八十円。
カツカツの生活をする私には高価な品だ。
給料日まで後四日。
財布の中には千五百円しかない。
「またカレー? 俺、昼間も食ったんだけど」
それなのにアタルは平気で文句を言う。
「私だって弁当カレーでしたけど」
「結依の事務所、電子レンジないって言ってなかった?」
「無いよ。だから冷たいまま食べたけど」
「わっびしいーねぇ」
誰のせいだよ。
ムカつきながら鍋を温めていると、シバが再び流しの下に向かって吠え出した。
「……やだ、まだ鼠いるの?」
そりゃ駆除しなきゃいるよね。
こんなボロボロな家、鼠にとっちゃ巣作るのに最適なはず。
―…ん?
巣? となると、私が見た鼠以外にも沢山居るって事よね? あれが集団で現れたら……――
ゾクっした私は、アタルに家主へ駆除の手配を頼んで貰えないか聞いてみたのだが。
「そのうちシバが爪で鼠を殺すさ。その為に伸ばしてんだから」
頼む気なし。
「爪はその為じゃないでしょ、単なる世話の怠慢じゃない。いくら散歩で削れるからって」
「そんなん言うなら結依が爪切れよ」
アタルが台所警備中のシバを顎で指した。
「無理よ。暴れて嫌がるもん。元々、動物は苦手なのに」
「じゃ、散歩で磨ぐしかねーやん、頑張れー」
やっぱり丸投げ。
何が頑張れだ、お前が頑張れ。
「シバ、散歩行くよ」
しかも、この柴犬。
躾がなってないし、私に懐いてないから全然可愛気がない。
散歩も好きなように歩いて回って言う事きかないから、時間がかかって仕方ないのよ。
こいつ、顔だけ。(お金がない!) こうつきみあ(光月海愛) @kakuyume251
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