第4話 母親からの手紙、そして怪盗訪問

「…………マジか」


 学校から帰宅した俺は色々と疲れが溜まっていたのか、気付いたらソファーで寝落ちしていた。

 そして起きて時計に目を向ければーーー時刻は午後二十時二十五分。完全にやらかしていた。


「………」


 夕飯、宿題、その他諸々やることがあるのに、寝起きのせいか何一つやる気が起きない。


「とりあえず、テレビでも付けるか」


 気分を変えるためにテレビを付けると、学食で話題になっていた怪盗の特集が組まれていた。

 その中で生中継が行われており、あと五分ほどで怪盗の予告状の時間になると告げられた。


(また学食や教室での話題が尽きないな)


 そう思いつつ、俺は机の上にある手紙に視線を向けた。この手紙は現在どこにいるのか分からない母親からの手紙で、大抵母親から手紙にいい思い出がない。てか、両親が仕事一筋すぎて育ち盛りの息子を一人暮らしさせるのがおかしいだろ。


「さてと…鬼が出るか蛇が出るか」


 唾をゴクリと飲み込み、俺は手紙を開けた。


 中には一枚の手紙が入っていた。


『咲夜へ。突然ですが、貴方の恋人候補を掛けてとある二人に勝負してもらうことになりました』


(………っは? 恋人候補ってどうゆうこと!?)


『そして勝負の行方は私が仕掛けたお宝を盗んできて、咲夜にあげた開かずの箱を開けた者を恋人とすることにします。あっ、これは決定事項だから咲夜の反対は受け取らないからね!』


(本人の意思を無視するのかよ!!!!)


『p.s.お父さんとこれから仕事で世界に行ってくるから元気に過ごしてね!』


(………勝手にしろ)


 それで手紙の内容を整理するとーーー俺の恋人候補を掛けて勝負することになり、その勝負方法が母親が仕掛けたお宝を盗んで開かず箱を開けること。


「色々とツッコミたくなるな。 まず本人の意思を無視して勝手に恋人候補を作らないでくれよ。てか、こんな俺なんかに立候補するやついないだろ。それにお宝を盗むってどうゆうことだよ!!」


 マジで鬼も蛇も出た感じだわ。


「んで、開かずの箱だっけ、か」


 これは小さい頃に母親から貰った物だ。

 当日は開けることができなかったから何度も捨てたくなったけど、母親から絶対に将来必要になると言われて部屋のどこかにしまってある。


 まさかに高校生になるまで必要にならないとは思わなかったし、そんな幼少期から何を仕込んでいるんだよ。中に入っている物は大丈夫なのか…?


 そんな心配をしていると、テレビの画面から盛り上がった声が聞こえてきた。


『たった今、怪盗が現れました!! いつも勝負しているはずの二人が何と今回は共同での盗みをすると宣言しました!!』


 アナウンサーの台詞と共に周囲にいる見物人たちの歓声も聞こえてくる。


『それは一体どうゆうことなのか。私たちには分かりませんが、とても興味深いですね』


 実況と共にどんどん歓声が大きくなり、見物人に手を振った怪盗たちは建物内へと侵入した。


「これは明日の話題も怪盗で持ちきりだろうな」

 

 特に怪盗信者(学食でよく話している人たち)たちは共同作業についての考察が捗りそうだ。

 てか、毎回考察やっているけど、あの人たちはちゃんと勉強はしているのだろうか。


(もはや留年の一歩手前なのでは…? なーんて、そんなことはないか。一応、あの学校は進学校であってかなりレベルが高いもんな)


 一人でツッコミをしていると、いつの間にか怪盗たちが宝を盗んで立ち去る瞬間になっていた。


「さてと、開かずの箱を探しに行きますか」


 テレビを消し、自室へと向かう。


(他にもやらないといけないことがあるのに探し物を探しに行くなんて、完全に現実逃避だな)


 自室に着くなり、俺は記憶を辿りにどこかにしまってあるはずの開かずの箱を探しているとーーー


 ピーンポーン。


 とインターホンが鳴る音がした。探し物を一旦中断してリビングにある画面を確認しに行くと、そこには見覚えがある服を着た女性二人が立っていた。そして【応答】ボタンを押した俺は画面に映る二人に向けて話し掛けた。


「はい」

『あっ、尾田川咲夜くんの家であっていますか?』


 黒と紫の衣装を着た女性が聞いてきた。

 

「あっていますけど…どちら様ですか?」

『尾田川くんの知っている人物だから警戒心を解いて早く玄関を開けてほしいのだけど』


 ゴシックドレスを着た女性が言った。


 そして物凄く聞き覚えのある声だった。


「分かり…ました。 少々お待ちください」


 さて、ここでの選択肢は二つある。


 一つ目は素直に玄関を開けて、二人を部屋に入れること。二つ目はインターホンは出たけど、玄関を開けることなく無視すること。


 ………。


 うん。後者はどう考えても無理だな。

 というよりも、目の前に映る人たちは何が何でも玄関の鍵を開けて入ってくるに違いない。絶対にピッキングとか得意そうだし。


(時には諦めも大事だよな)


 俺は玄関に向かい、そしてドアを開けた。


「初めまして! 怪盗アリマーズこと火野宮アリスです! 以後お見知り置きを!」

「数時間ぶりね。怪盗シャインナイトで尾田川くんにとっては生徒会長でもある月乃森輝夜よ」


 そして玄関を開けて目の前に現れたのは、巷で話題の二人の怪盗だった。


 

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美少女怪盗と始める半同棲生活 夕霧蒼 @TTasuki

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