個性豊かな仲間たち。
あれから、シオンが歓迎会だよ!って言う事で宿の食堂で俺、シオン、シエスタの3人で食事をしていた。
途中で部屋から出てきたエレオノーラとベロベロに酔っぱらったノアスが合流したんだけどさ。
シエスタがノアスの介抱をしてるのかと思って見れば、色んなドリンクを混ぜたやべー色した奴を飲ませていたし。
俺の隣では、「私が酒に弱いだと!?よし!勝負だ!シオン!」と煽られたエレオノーラが勝負を挑み、1杯目でダメになり「くっ殺せっ!」と意味わかんない事を床にへたり込みながら言っていたり。
その様を見ていたシオンがお酒の入っためっちゃデカいジョッキを片手に「またそれ~?エレオノーラって負けるとすぐそれ言うよね!口癖?レパートリーを増やそうよ!」って何が面白のかわからないけど、めっちゃ笑ったりと五月蠅くしていたら。
白い獣人、名をカロリーナに「もう!うるさいだべ!部屋に戻ってもう眠るだべ!」とそのモフモフの手で、5人(俺含む)を2階の部屋に次々と放り投げられてから一夜経った朝。
「あれ?フレイが同じ部屋にいる!……えへへ~。これはもうあれだねあれ!」
備え付けのソファで寝ていた俺を背もたれ側から覗く、紅髪を爆発させたシオンがにへらと笑いながら、「あれ」を連呼する。あれってなんだよ。
「ほらほら!みんな起きて!朝だよ!」
結局、あれの意味がわからないまま、シオンは他のメンバーを起こしに離れて行った。
あの髪色と相まって太陽の化身って感じがするな。
そして、さっきから重たいなぁって思ってたし、起きてから視界の端に銀色の頭がチラ見えしてたんだけどさ?
「むにゃ……」
シエスタが俺の上で丸まって寝ている。
「おい。起きろ」
シエスタの肩を軽く揺らすと、寝起きは良いのかパチリと目を覚ます。
「……ん。おはよ」
そのまま、起き上がると俺に、起伏のない声で朝の挨拶を律儀にしてくる。
「……あぁ、おはよう」
シエスタは、何処から取り出したのかわからない櫛で、綺麗で長い銀髪をブラッシングし始める。
そう、俺の腹の上に座ったまま。
「なぁ」
「なに」
「退いてほしいんだけど」
「……」
「……」
華麗に無視をされた俺は、そのままブラッシング姿を見続けていると、シエスタの顔が少し赤くなってる気ような?
「照れる」
「照れてないで降りろよ……」
「仕方ない。でも、いいベッドだった。またよろしく」
俺から降りると、そのまま部屋の外へと出て行った。
「次はないって。……よっと!」
腹の上の重りが無くなり、やっと起き上がれた俺の視界には、鼻歌を歌いながら、その綺麗な金髪で見事にドリルを作っているエレオノーラと。
「ノアス!いつまで寝てるの!起きて!朝だよ!」
「やめてくれぇ……。体をゆすらないでぇ……」
二日酔いで死にかけているノアスの体を、容赦なく揺すって起こすシオンの姿だった。
俺が起き上がった事に気づいたエレオノーラが、スッとベッドから立ち上がると綺麗なドリルを揺らしながら近づいて来る。
「やっと起きたのか」
「まぁ、少し前には起きていたけど、起き上がれなかったっと言ったほうが正しいな」
「?……何を訳の分からないことを言っている?謎かけか?」
「いや、気にしないでくれ。それより、挨拶がまだだったな。おはようエレオノーラ」
「む。おはよう。……お前って奴は意外に律儀な奴だな。いや、お前も失礼だな。すまない。これからはフレイと呼ぼう」
俺の挨拶が意外だったのか、軽く目を開くエレオノーラ。
でも、挨拶をした事が良かったのか、挨拶の前と今じゃ態度が若干柔らかくなったような感じ。
しかも、名前呼びにまで一気に昇格したらしい。
まぁ、コミュニケーションの第一歩はまずは挨拶からだしな。
「さて、フレイ。朝食を食べに行くぞ」
「あの二人はどうするんだ?」
未だに部屋の奥の方で、ノアスにとっては地獄の時間が続いていた。
「いつもの事だ。気にするな。いずれ降りてくる」
この光景は日常茶飯事らしい。
「シオン、ノアス。先に食堂へ行ってる。……ほら行くぞ。フレイ」
エレオノーラは二人へ声を掛けると、ソファに居る俺の手首を掴み、そのまま部屋を出て行く。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
エレオノーラと一緒に下へ降り食堂へと向かう。
途中、焼き立てのパンの匂いが香り、腹が鳴る。
「いい匂いだな」
「匂いだけではないぞ。ここの宿のパンは味も絶品だ!ふわふわで柔らかくほんのり甘い。シチューと合わせても良い、味の濃い肉と合わせても良い!ただ、朝しか食べられないのが残念なところだ」
パンについて、語るエレオノーラの瞳は子供のように、キラキラしていた。
「そこまで言わせるパンか楽しみだな」
期待を胸に食堂の扉を開ける。
既にそこは、他の客でざわざわと賑わっていた。
「来るのが遅かったか?」
パッと見ただけでは、既にテーブルは埋まっていそうだった。
「泊り客以外にも、パン目当てで食べにくる者を居るからな」
「ごくり。マジかよ。余計食いたくなった」
「ふふん。そうだろう?食べなきゃ損だと言っておこう」
まるで自分の事のように、勝ち誇った顔で腰に手を当て胸を張るエレオノーラ。
「でも、この様子だと食べられないんじゃないか?」
「そこは大丈夫だ。既にシエスタが席を確保してくれている。……居たな」
中を見渡し、シエスタを見つけたエレオノーラは綺麗に整えた金髪を優雅に揺らしながら、食堂の奥の方へと進んでいく。
「シエスタ。いつも助かる」
「ん」
1つのテーブルに着くと人数分の座席が確保されていた。
物静かに読書をしていたシエスタにお礼を伝えると、エレオノーラは空いてる場所に座る。
俺も空いている場所、エレオノーラの隣に座ろうとした時。
トントン。
「フレイは、ここ」
自分の隣を叩くシエスタ。
まぁ、どこでもいいんだけどさ。
それよりも気になるのは、シエスタはなんで俺にここまでなついているのかってことだよな。
折角、隣に座る事だし聞いてみるか。
「なぁ。シエスタ」
「なに?」
「1つ気になってたんだけどさ」
パタンと本を閉じ、前髪で隠れた顔を向けるシエスタに俺は。
「俺に一目ぼれした?」
キメ顔を作る。
「……?」
俺の言葉にシエスタは、首を傾げる。
「フレイ。いきなり何を言ってる」
俺とシエスタの様子を頬杖を付きながら見ていたエレオノーラの目がジト目だった。
「こほん。エレオノーラは気にならないの?俺に対するこの娘の距離感バグってね?」
「確かに。普段のシエスタとは少し違う気がするが。……どうなんだ?シエスタ」
エレオノーラに、そう言われたシエスタは、俺の首に顔を近づけ匂いを嗅ぐ。
その際に、前髪の隙間から見えた綺麗な蒼い瞳にドキッとした。
「ん。フレイから何処か懐かしい匂いがする。なんで?」
元の位置に戻ったシエスタは、エレオノーラに首を傾げる。
「私に聞かれてもわからんぞ。フレイに心当たりはないのか?昔に会っているとか」
「心当たりって言われてもなぁ」
いきなり、そんな事聞かれても、多い時には3桁の謁見とかするからなぁ。
頭の引き出しを片っ端から引っ張り出して思い出そうとするけど、まったく心当たりがない事しかわからなかった。
「いや~、俺にもわからん」
そのまま2人で「う~ん?」と頭を悩まして居た。
シエスタは、我関せずと読書を再開している。
「あれ?どうしたの?」
食堂に来たシオンが俺たちの様子を気にする。
「シオン。遅いぞ」
エレオノーラが横に座ろうとするシオンへ軽く文句を言う。
「ノアスが中々起きなかったんだよー!それより、ご飯だよ!ご飯!」
「私は、いつものヤツだ」
「ハチミツパンとホットミルク」
「はいはーい!フレイは何食べる?」
いやいや。全員気にならないのか!?
シオンが、ノアスの襟首を引っ掴んで引きずってここまで来た事!
そして、そのノアスが通路のど真ん中で、青い顔にしながらうなり声をあげている事に!
「……それより、そいつは放置でいいのか?」
今も「シオン許してぇ」と
「もう!ちゃんと座らないとダメだよ!ノアス」
シオンは、ノアスの襟首を掴むと持ち上げ、隣に座らせる。
ドンッ!
無理やり座らされたノアスは、体に力が入っていないのかテーブルに顔面を強打していた。
「うん!みんな座ったね!……フレイは何食べる?ここはね!パンが美味しいんだよ!」
それでいいのか……。
「あ、あぁ。じゃあ、シオンのお勧めを頼む」
「わかったよ!」
厨房の方にシオンは「注文おねがーい!」と呼びかけた。
「……ぅう。シオン。やめてくれぇ」
こいつ、夢に見るくらいトラウマになってんのかよ……。
「はいはーい。何食べるんだべ?」
厨房の方から、黒いモフモフの獣人が注文を聞きにやってきた。
こうして、パーティー加入初日の朝が始まった。
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