第28話『いざ、パワーレベリング』

 憩いの場所から出た僕は、周りにモンスターがいないことを確認してからステータスを確認。

 これも、凄い便利だけど発展している現代では当たり前なんだよね。


――――――――――――――――――――


 隼瀬はやせ太陽たいよう Lv8

 Hayase Taiyo

 HP180/180――――――――――

 MP180/180――――――――――


 体力  108

 防御力 108

 攻撃力 108

 俊敏力 108

 精神力 108

 知力  108


 振り値 8


――――――――――――――――――――


 さすがに、ここら辺のモンスターを狩りまくっていたからレベルも上がってるか。


 そして……どうやって確認するんだっけ、たしかこう、目線を横へ移動させるといいんだっけ。

 えーっと、莉奈りなのレベルは12か。

 順調に互いのレベルは上がっているわけだけど、今後のことを考えたらまだまだレベルアップをしておいた方がいい。


 大きなお節介かもしれないけど、今回のような悪事に巻き込まれたときに莉奈りなの心に影響してくるからね。


「――パワーレベリングの時間だ」


 まずは索敵。


 この第11階層は【ダイウルフ】しか出現しない。

 まったく、ダンジョンと言うのはつくづく人間を拒絶する構造になっている。

 第10階層でボス戦を勝利して余韻に浸ってこの階層へ降りてきてすぐ、油断をしているといつの間にかに囲まれて慢心そのままに命を落とす。


 油断大敵とはまさにこのこと。


「いたいた」


 憩いの場から1分ぐらい歩いていると、3体の【ダイウルフ】を発見。


「――はっ」


 討伐数3。

 わざわざ気づかれるまで待つ必要もなく、馬鹿正直に真正面から戦う必要もない。

 次を探そう。


 こんなゆっくり自分のことだけを考えられる時間は久しぶりだ。

 少しだけスキルについて考えておこう。


「また3体――はっ」


 討伐数3。


 ステータスがそのままだから、スキルも当然そのまま……というわけにはいかず、残念ながら獲得していたスキル全てがリセットされてしまっている。

 だけど、収納スキルのおかげか装備に付与されているスキルはそのままのようだ。

 まだまだ使用する必要はないけど。


 ということは、収納してある装備とかの数だけ安心感はあるんだけど……おいそれと簡単に使用してしまうと、今後が大変なことになってしまうかも。

 僕を監視したい人たちは、まだ推測だけでしかないけど野放し状態を継続してくれている。

 できることなら、こっちの世界にも慣れたいからこのままで居てもらいたい。


「お、5体」


 短剣の投擲で2体、走る勢いを止めずに3体っと。


 目標討伐数は決めていないけど、僕がレベル10、莉奈がレベル15ぐらいになったらいい感じだと思う。

 効率だけをひたすらに求めたら、【ダイウルフ】の咆哮を活かして討伐し続けた方がいいし、それを続けたら莉奈のレベルを20ぐらいまで上げることができる。


 それをやってもいいけど……いくらステータスの暴力で戦えるとはいえ、気の疲れや目とか脳とかの疲労を抑制できるわけじゃない。

 これからボスとの戦闘が待ち受けているのに、引っ張る側の僕が疲労困憊じゃ話にならないからね。


「次は3体」


 まあ正直な話、知識も経験も武器もある僕1人でボスは討伐できる。

 それは、第12階層でもこの第11階層でも一緒のこと。

 パワーレベリングなんてことをやっているんだから、楽勝なのは決まり切っている。

 でも階層を進むも戻るも簡単なのは、僕1人だけだった場合だ。


 僕だって完璧じゃない。

 同行している莉奈に危害が加わってしまう可能性もある。

 パーティを組んでいるのだから、責任は発生するし、一緒に行動している人が不幸な目に遭うのは本当に避けたい。


 それにレベルだけじゃなく経験を積んでほしいのは、ボス戦で――。


「また5体」


 こういった戦い方をするなら、短剣2本で投擲しまくった方が早く楽に討伐できるけど、おいそれと装備を変えてしまうと戦い方に支障をきたすから避けたい。


「待てよ、だったら弓なんかでもいいんじゃないか」


 と、思ってはみたけど。

 近接戦闘で感覚を調整しているのに、今度は遠距離攻撃の間合いを調整しなくちゃいけないから却下。


「うわ1体か」


 ここら辺のモンスターは、最序層のモンスターたちよりは経験値獲得量が多い。

 だから、このまま狩り続けたら確実にレベルアップできる、できるけど……。


 うん、前言撤回。

 このペースで討伐し続ける方が疲れるし時間がかかる。

 次の標的を発見したら、わざと咆哮を上げさせよう。


「お、居た居た」


 進行方向先に、ちょうどよさそうなのが4体。

 戦闘中に咆哮を上げるのは確実じゃないから、戦闘を引き延ばす。


『ガウガウッ』

『ンガアッ』


 2体は振り向く前に討伐して、後は回避と防御を繰り返して咆哮を待つ。


『ンガアッ』

『ガウッ!』


 こういうの、よくやってたなぁ。

 今みたいに効率を考えた狩猟方法として用いていたのもあるけど、素材集めをするときに多用していた。

 最初こそ弄んでいるようで不愉快な思いをしていたし、そう思っているメンバーも居たけど、それは時間の問題。


 結局、時間的な猶予はあるようでないのだから仕方がない。


『ワオォオオオオオオオオオオンッ!!!!』

「お、きたきた。じゃあ、お役御免ってことで」


 2体を直剣で薙ぎ斬って討伐し、増援が来るまで待機。


「とりあえず、20体ぐらいだとありがたい」


 ステータスの暴力で解決できると言っても、いろいろと限界はある。

 数値通り、ここでは超人的な能力を発揮できるわけだけど、眼球とか生物的な弱点は体力にあまり影響しなくても大変なことにはなってしまう。

 いろいろと潰れたとしてもスキルによって回復したり形状が復元したりはするけど、その痛みによって与えられる精神的な苦痛――トラウマは拭えない。


 だから、余裕綽々な態度で油断しているとそれはもう痛い目を見てしまう。


『ワオォン!』

「――5――10――15。うん、ちょうどいい」


 最初の5体は、短剣の投擲と両方の勢いを活かしてすれ違いざまに斬ることができる。


「ふっ――はっ」


 通り過ぎると、【ダイウルフ】たちは一斉に方向転換を――しても、反転してブレーキだけで終わる。

 けど、僕は地面を滑りながら体を反転させて――。


「はっ!」


 地面を蹴って攻撃できる、残り8体。


『グルルルルル』

『ングルゥ』


 睨み合って硬直状態を続けてしまうと、この数に増援を呼ばれてしまう。

 1回とか2回なら大丈夫だけど、それが続くとさすがに逃走する。


 だから一気に。


「――はぁっ!」


 駆け出して、勢いそのままに斬って回って刺して回って――最後の1体は。


「よっと」


 体を翻して短剣を投擲して眉間に突き刺した。


「ちょっと壁際によって――」


――――――――――――――――――――


 隼瀬はやせ太陽たいよう Lv9

 Hayase Taiyo

 HP190/190――――――――――

 MP190/190――――――――――


 体力  109

 防御力 109

 攻撃力 109

 俊敏力 109

 精神力 109

 知力  109


 振り値 9


――――――――――――――――――――


 レベルは上がってる。

 そして、莉奈もレベル13に上がっていた。


「やっぱり不便だ」


 まだまだ討伐しなければいけないことはわかっても、経験値を数値化して見えないから目標討伐数が把握できない。

 効率を重視するために一番必要な情報を教えてくれないのは、レベルやステータスを作った神様か誰かの趣味嗜好なんだろうけど……不便でしかない。


「でもやるしかない」


 少なくとも【ミニウルフ】を討伐していたときよりは経験値効率がよくなっているのは確実だから、このまま続けよう。


「よし、次だ」

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異世界帰還者、現実世界のダンジョンで新米配信者として活動を始める。~異世界では勇者とかではなかった役職もない冒険者、現地で手に入れた装備・知識・経験を活かして最速で成り上がる~ 椿紅 颯 @Tsubai_Hayato

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