瞬間記憶能力がある琴は、その能力故に心ない言葉をかけられた過去を持ちます。
それだけではありません。両親は「能力を役立てられる仕事に就くこと」だけしか伝えず、彼女の傷と向き合ってくれません。
私は、彼女がもっとも必要としているのは、「あなただけではない」という素朴な承認メッセージだと感じました。
「あなただけではない」とは、あなた以外の人も苦しんでいるのだから我慢しなさい、という意味ではありません。
「あなただけではない」とは、共感であり、心の回路を繋ぐことです。
しかし、誰かと関わるには、時間とエネルギーを注ぐ必要があります。
一体誰が、人と違う能力を持つ琴と「関わって」くれるのでしょうか?
それは、たまたま電車で会ったアルビノである悠斗でした。
「悩むことばかりだよ。どうしても、周りの人とは違うから」
マイノリティ同士通じ合うものがあったのでしょう。
ただ、悠斗は感情的なリスクを背負いながらも「僕はこれで良い」と思える心を持っています。
本作は、共感を通して、自分を慈しむことができると伝えてくれます。
瞬間記憶能力がある高校生、琴はとある過去のトラウマから「普通になる」ことを強く望んでいました。そんな彼女が偶然出会ったのは、髪も肌も全身が雪のように真っ白な男性、悠斗です。
アルビノである彼は、かつて琴と同じ悩みを抱えていたのですが……。
瞬間記憶能力という「普通じゃない」能力がある琴さんですが、彼女の「普通になりたい」という悩みはきっと読者の皆さんも共感できるはず。
そして彼女が悠斗さんと出会い、彼と話をする内に、まるで私たちも背中を押されたような、自分の存在を認めてもらえたようなあたたかい気持ちになれることと思います。
素敵な作品です。
是非ご一読ください!