第4話 新しい力を確認しよう

 脳内に響いた女の声は、確実にレベルが2になったと言っていたよな。


 それから、なんとかって能力を覚えたらしいんだが、どうやったら能力を確認できるんだろうか?


 そんなことを考えていると、眼前に文字が浮かび上がった。



石化呪いカーストーン


レベル2。(EXP0/1000)


・習得呪い。

全身石化オールストーン

接触石化タッチストーン

??????(レベル3で解放)


 おおおお!

 これはわかりやすい!

 これも呪いの力なのか?

 まさか、レベルがあるとは思わなかったな。


「レベルの横のEXPは経験値かな?」


 0の横が1000だけど、経験値が貯まったらレベルアップするのだろうか?

 まぁ、この辺はおいおい考察するとしよう。

 まずは習得している呪いの確認だ。


 全身石化ってのは今までのやつだよな。

 体に力を加えると全身が石になる呪いだ。

 文字を触ってみると説明文が出現した。



全身石化オールストーン


全身を石にしてどんな攻撃も弾く。

無意識化での石化はできない。



「おおおお!」


 これはわかりやすい。

 今まで使っていた石化はこの呪いだったのか。


 そうなると、その下にある接触石化ってのはなんだろう?

 接触だから触れればいいのか?

 説明っと。




接触石化タッチストーン


触れた対象物を一瞬にして石化させる呪い。

解除の意思でいつでも元に戻せる。

また、解除の意思がなければ永遠に石にできる。



 

「おおおおおおおお!」


 触った物を永遠に石化できるとか強すぎだろ!

 よし、試してみよう。


 俺は転がっているゴブリンの死体に手を置いた。


 【 接触石化タッチストーン】……。


 と、軽く念じてみる。


 すると、ゴブリンの体は一瞬にして石になってしまった。


 早い!

 瞬きするくらいに一瞬だな。


「そうなると、どういう範囲か気になるな」


 ゴブリンの体を二匹重ねてっと。


 【 接触石化タッチストーン】……。


「お、一匹だけだ」


 自動で単体を識別するっぽいな。


「解除」


 うん。石化が解けた。

 

 今度は上に乗っている一匹だけに手を置いて。


「【 接触石化タッチストーン】。二匹」


 すると、今度は一瞬にして二匹が石になった。


「おおおおお! 面白いな!」


 一匹の死体を通じて下の死体に石化の呪いが伝導したんだ。


 そうなると、もっと応用させてみたくなるぞ。


 石化の呪いが物体で伝導するのなら、地面を通じて遠距離石化ができるのではないだろうか?


 俺は五メートルくらい先に倒れているゴブリンの死体を見つめた。


「よし。あいつにしよう」


 地面に手を置く。


「【 接触石化タッチストーン】!」


 しかし、五メートル先のゴブリンに異変はない。


「むむ!」


 いや、なんかできそうな感じがする。

 イメージが大事なんだ。


 石化……石化ぁ……。


 と、呪いが地面を伝わってゴブリンの死体に伝わるように念じる。


 すると、ゴブリンの死体は灰色に変化した。


ペキキッ!!


「やった! 成功だ!!」


 完全に石になったぞ!!

 

 やはり、俺の推測は間違っていなかった!

 遠距離でも大地を通じて石化が可能なんだ!!


 しかし、


「プハーーーーッ!! 疲れるぅううう!!」


 意思の継続が大事だから、結構神経を使うんだ。

 たった、五メートル程度の距離でも相当な集中力が必要だった。

 やっぱり直触りがポイントなんだな。

 それに、動いている対象にはとても使えそうにない。

 とはいえ、便利な石化には変わりないよ。

 もうこれは呪いというよりチートスキルに近いな。


「さきほどから何をされているのでしょうか、トルティ……、トル様」


 と、侍女のミカエがきょとんとしている。

 

「ちょっと、能力の確認をね」

「石化の力ですね!」

「ああ」

「その力があればトル様には傷一つつけることはできませんね……。私が足でまといになってしまいそうです……」


 ミカエはしょんぼりと落ち込む。

 これはフォローを入れないと。


「ただ、不意打ちには弱いんだ。石化はあくまでも有識化での発動でね。さっき、ゴブリンが背後から僕を襲ってきたけどさ。僕は認識してなかったから石化は間に合わなかったと思う。ミカエが助けてくれなかったら危なかったよ」

「じゃ、じゃあ……。私はトル様のために活躍できましたか?」

「ああ。大活躍! 命の恩人さ」

「そんな……。私だって、トル様に助けていただきました。あれだけのゴブリンを私一人ではとても対応できません。トル様は命の恩人です」

「ハハハ! じゃあ、二人ともバッチリ協力ができたってことだな。相性がいいってことだ!」


 ミカエは「はう!」と言ってから顔を逸らした。

 そして、小声で「笑顔……反則……」と言っていたようないないような。

 心なしか、耳が赤い……。


「ミカエ……。どうした?」

「な、な、なんでもありません」


 ……ちょっとコミュ障なのかな?

 まぁ、なんにせよ、俺たちは助かった。

 新しい力も使えるようになったし、これは面白くなってきたぞ。


 ミカエはゴブリンの耳をナイフで切り落とす。

 なにをやっているんだろう?


「それは?」

「ギルドで買い取ってもらえると思うんです。ゴブリンの討伐は需要がありますから」


 なるほど。

 俺は一人立ちをしたわけだからな。

 金策を考えるのは必要か。流石はミカエだ。


 彼女はゴブリンの耳を麻袋に詰め込んだ。


「時間を置くと腐敗臭がすごいんです。なので、明日の朝イチにでも王都のギルドに行って換金しましょうか」

「うーーん。ギルドに行って帰ってくるだけで二日はかかるだろう。王都には買い物を兼ねた方がいいからね。行くのはもう少し生活基盤を整えてからだね」


 まだ、住居も定ってないしな。


「では、残念ですが捨てましょう。もったいないですが……」

「…………」


 腐らない方法か……。

 冷蔵庫があれば便利だが、あいにくこの異世界にはそんな電化製品はないわけで。

 氷の魔法でも使えればいいんだがな。俺は石の呪い。ミカエは剣術と家事全般だ。冷える魔法は二人とも使えない。

 物を腐らせないための保存方法は、今後のことを考えると必要になってくるよな。


 物を冷やして腐食を抑える方法……。

 川の水を利用するとか、冷たい氷なんかがあればいいんだがな。

 あいにく、どれもすぐにはできない保存方法だ。

 保存方法……。保存……。


「あ、そうか! ミカエ。そのゴブリンの耳をかしてくれ」

「なにをされるんですか?」

「【 接触石化タッチストーン】」

「あ! い、石に……。どうして?」


 石化させれば時間は止まる。

 つまり、


「これで腐らないだろ?」

「ああ! なるほど!!」

「石にすれば臭いもしないしな」

「石化の保存ですね! すごいです!」


 石化呪いの応用は便利だな。


 あ、そうそう。

 水瓶の底に穴が空いてたよな? 

 俺は水瓶を傾けた。

 そして、底に空いた穴に泥を詰め込む。


「【 接触石化タッチストーン】。これで泥は石化して穴を塞いでくれた。これなら水を漏れずに溜めておくことができるよ」

「わは! トル様すごいです!!」


 うん。

 この呪いは便利すぎるな。


────

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2024年12月19日 12:11

石化呪いの逆転劇〜体が石になる呪いをかけられたので王室を追放されました。でも、この力、便利かもしれません〜 神伊 咲児 @hukudahappy

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